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噛みキズナ  作者: 奈瀬朋樹
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37話 お見合いBBA

「石神君いらっしゃい! やーっと来てくれて嬉しいよ。高村さんも久しぶ……って、何でいるの⁉ しかも制服がミニサイズでエロい!」


「五月蝿いです浅坂先生、今保健室に生徒はいますか?」

「いないですよ。生徒の相談予定もありません」

「なら奥のベッドをお借りします。話がしたいので」

「じゃあ私も参加します。石神君絡みですよね。変な噂が広まっていたから心配してたんだよ。小清水先生は『もう少し見守ってみましょう』の一点張りで動いてくれなかったし」


そうだったのか。

どうやら僕が思っている以上に先生達にも心配をさせていたらしい。


「石神、私達もそれなりに状況を把握してきたつもりだ。最近、授業中に積極的に発言や行動をして周りと馴染む努力をしていた事もな」


そしてばっちりと見守られていた。

知らぬは本人ばかりなりって状況だったらしい。


「心配をかけてすみませんでした。先生達に頼るのは最後の手段で、なるべく自分でどうにかしようと思っていたので」

「その考え自体は良い心掛けだ。だが問題がないのなら〝大丈夫〟という状況報告をしてほしかった。言わなければ私達は分からないし、手遅れになってから報告されても困るだけだ」

「……………はい、ごめんなさい」


 困った時には相談をするって約束をしたけど、それは万策尽きてから話をするって意味じゃなかったんだ。やっぱり僕は、まだまだ子供だな。周りに気を遣ってきた筈なのにこの有様だ。帰ったら母さんにも話をしておこう。


「責めちゃ駄目ですよ小清水先生、こんな状況に陥ったら視野が狭くなるのは仕方ないです。コウ君はその中でよく頑張りました。頑張ったのにお説教は良くないです」

「そうだな高村、だが私はお前について聞きたい事が山ほど浮かんでくるのだが……、まずは石神の話から聞こう。順序的にもこちらが先だろう」


小清水先生に言われて2つのベッドの間に4人が囲む様に座ってから、今までの経緯や状況について説明をした。



「なるほど、友人と相談もしているし悪くない立ち回りだ。よく頑張ったな」

「ありがとうございます」


良かった。今までの努力は見当違いなものじゃなかった。

小清水先生は駄目なら駄目って言ってくれる性格だから安心できる。


「だが問題が解消した訳ではないし、残念ながらクラス内の立ち位置も微妙な状況だと言わざるを得ない。今後は必要と感じれば私から声を掛ける」

「分かりました。今後は早めに相談します」

「小清水先生が忙しそうなら私に相談でもいいよ。あと保健室では恋愛相談も受け付けているからね」

「ありがとうございます」


これからは、もっと周りに頼ってみよう。

きっと必要なことだ。


「…………………………ところで高村」

「何でしょうか?」

「お前はいつ、石神に抱き付いたんだ?」

「あれっ? 最初は石神君の横に座ってたよね? いつ移動したの⁉」


ああ、やっと気付いてくれた。

説明の途中からずっーと抱き付いていたのになぁ。

しかも浅坂先生に至っては指摘されるまで違和感すら感じ取れない有様だ。


「先生達は何を驚いているのですか? こんな素晴らしい話を聞かされたら、コウ君を抱きしめるのは当たり前じゃないですか」


とんでもない感想を先生達に言っちゃっているよ。

当たり前って何だっけ?


「石神、高村には双子か、同い年の従妹がいたりするのか?」

「校内全土から慕われていた生徒会長様に、こんな本性があったとは……」


そしてこの反応である。

もう先生達には、ただのブラコン姉にしか見えないんだろうなぁ。


「タツ姉、ここは家じゃなくて学校だよ。外で築いてきた体裁はいいの?」

「それはそうだけど、ここでコウ君を抱きしめないとお姉ちゃん失格だから仕方ないよ。これは体裁よりも大切だし、誰にも迷惑はかけてないよ」


ひっどい超理論だ。

だけど僕にはタツ姉を止められないから、もう全部諦めて受け入れるしかない訳で。


「これです小清水先生! これこそが女性の最大の武器です!」

「いきなり何ですか」


急に浅坂先生が僕達を指差してきた。


「つまり小清水先生には包容力が足りないって言ってるんです! だから石神君からも頼られずにこんな事後報告を受ける破目になっちゃうんですよ!」

「生徒を信じて見守るのも、時には必要ですよ」


「いいえ行動です! 自分から動かない限り、出会いなんてありません!」

「またその話ですか? 浅坂先生は私の何なのです?」

「何とでも言って下さい! やたらと結婚相手を紹介してくるウザいお見合いBBAで結構! 小清水先生の幸せの為なら、私は何だってやってぇぇぇぇえ痛い痛い痛い!」


一瞬で浅坂先生がベッドに突っ伏された! 

しかも小清水先生は座ったまま左腕1本しか動かしてなかったぞ!


「あの、小清水先生、今の話って……」

「気にするな。浅坂先生は生徒との恋愛相談が趣味で、私にも事あるごとにお見合い話を薦めてくるだけだ」


さっきも恋愛相談って言っていたけど、ジョークじゃなかったんだ。


「だって小清水先生はもう結婚適齢期で真面目に仕事してる場合じゃないですよ!」

「何故怒られているのか理解不能です。それにまだ26なので大丈夫です」

「甘いっ! 激甘パイナップル酢豚です! そこからが超早いんですって! そもそも私が26の時、我が娘はモリモリ育って幼稚園に居ましたから。むしろ小清水先生が恋愛相談に来て下さいよ。いい人紹介しますから!」

「では手が空いたら相談に行きます。忙しいので無理ですけど」

「またそうやってズルズルと後回しにする! そんなんじゃ永遠にイベントは発生しません! フラグもクララも立ちませんよ!」


こういう時、男はツッコミ禁止とタツ姉に教育されている。小清水先生は美人というよりも姉御肌で頼り甲斐がある人柄だ。これって凄い魅力だと思うけど、何でモテないんだろう。


「さて、今度は高村に説明してもらおう。校長や守衛に聞いたが、今週は何度か学校訪問をしているらしいな。それに石神とは随分親しげな様だし、理由を説明してほしい」

「分かりました」


小清水先生の問いかけに、覚悟を決めた表情でタツ姉が頷く。


「ちょっと待って下さい! 私の主張はスルーですか⁉ 放置プレイですか⁉ 全く動けなくて力を入れると関節が痛い感じなんですけど!」

「話の腰を折らないで下さい。これ以上騒ぐなら力を入れちゃいますよ?」


「包容力が行方不明! 早く捜索願だしてあげて! 手遅れになっちゃいますよ!」


浅坂先生が逞し過ぎる。圧倒的な力に屈服されながらも必死に抗い続けていて、バドル漫画ならここで謎の覚醒を遂げて逆転する場面だ。ありえないけど。だけどここまで健気に頑張っている以上、助けた方がいいのかな?


「浅坂先生、僕でよければ協力しますけど」

「本当に⁉ やっと私の志に賛同してくれる味方が! 最初は高村さんも味方だったのに、いつの間にか裏切られて、それでも小清水先生の幸せを信じてここまで…」

「話が進まないのでもう黙って下さい。石神、余計なお世話はいらないぞ。それとも、私の生き方に意見をする覚悟はあるのか?」


「ごめんなさい。失言でした」


すぐに頭を深く下げてお詫びしました。

怖いよ!


口調はやんわりとしていて威圧感もなかったのに、脳が即決でNG出してきたよ。

浅坂先生ごめんなさい、無理でした。


「ああっ、また希望が1つ紡がれてしまった……。春が遠い……」

「今は4月で春ですよ。寝ぼけないで下さい」

「寝ぼけているのは小清水先生の女性ホルモンです! このままじゃ腐っちゃいぎゃああぁぁぁぁぁああっ! ごめんなさいごめんなさい! 話が終わるまで黙ってます!」


小清水先生の左腕がちょっと動いだだけなのに、悲鳴が上がっちゃったよ。

あとこの絵面、教育上よろしくない。


「ふぅ、やっと浅坂先生が静かになった。私の主張を理解した様で何よりです」

「………………………………………っ」


こんな状況に陥ってもなお、浅坂先生の目は死んでいない。

目が〝諦めませんっ!〟って訴えている。

何度倒されようが立ち上がって来るらしい。

お見合いBBAとして。


「待たせてしまってすまない、話してくれ」


そうしてタツ姉は、僕達の関係と事実〝だけ〟を説明し始めた。

小清水先生が26歳、浅坂先生は30代前半な設定です。

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