21話 三原先輩
背の低さに合った小顔、素っ気ないショートヘアが物静かな雰囲気が漂っていて、体も細くて華奢だから、保護欲を掻き立てさせるオーラが滲み出ている。小学校の低学年で、こういう可愛い子いたなぁ。
「よしっ、これで怪しさ成分が除去された。ナイス助言だ新入生!」
「恐縮です」
普段から武装していたせいで違和感に気付けなかったらしい。慣れって怖いな。
「……教えてくれてありがとう」
「いえいえ、顔が見える方が話し易いかなって思っただけなので」
「…………………………」
心なしか、三原先輩の表情が柔らかくなった気がする。そんなぎこちないやり取りをしていたら、僕と三原先輩の頭に手の平が乗っかってくる。
「新入生と仲良くなれて良かったじゃん。背も同じで親しみ易そうだし、こいつと一緒なら三原ちゃんの口調もマシになるかもな」
「……そう、なのですか?」
三原先輩が首を傾げる。これは……、喋りやすい後輩ができれば硬さが消えて塩梅が良くなるって意味かな? そう考えていたら先輩が僕と三原先輩の前に来て、交互に見比べてくる。
「てゆーか、三原ちゃんの方がちょっとだけ身長高い?」
「ほんとにっ!」(にぱぁぁ)
すんごい満面の笑顔が向けられちゃったよ。
ずっと硬い丁寧対応だったからギャップが激し過ぎる。
「ああっ! ごめん、ごめんなさい!」
「いえ、慣れてますから。先輩も僕と同じで身長で苦労してますよね」
周りは背が高い人ばっかりだから、低い人を発見すると嬉しくなって勝手に親近感が湧いてしまう。年齢が近いなら尚更だ。背が高い人達には分からない感覚だろうなぁ。
「てゆーかお前らどっちもチビだよ。もっと頑張れよ」
そして無慈悲な正論を浴びせられるのがオチだ。
悲しいなぁ。
「んじゃー俺はそろそろ持ち場に戻る。新入生も入部したらガッツリ可愛がってやるからな。名前は?」
「紹介が遅れました。石神晃太です」
「石神か、俺様の事は〝ウッディ先輩〟と呼ぶがいい。じゃあな!」
そう言い残してシャボン玉コーナーに戻っていったけど、本名より先にあだ名を紹介されてしまった。内なんとかさんかな? そんな訳で2人に戻ったけど、何故か三原先輩が僕を見ながら唸っている。
「……石神? ……………」
「先輩? 何か聞きた
「ああっ! 犬にかっ」
叫んでいる途中で台詞が急停止して、三原先輩が硬直してしまった。