12話 どう足掻いても変態
「本当にごめんなさい。生まれて来てごめんなさい」
唾液が拭き終わって落ち着けたと思ったら、土下座をされてしまった。
「顔を上げてよ花祭さん。全然気にしてないし、びっくりしただけだから」
人生初の土下座は心苦しいだけで、正座をしながらあやしている自分がいました。てゆーか、土下座している相手を立って見下すとかほんと無理! とにかく宥め続けて、地面に密着していた花祭さんのおでこが上がってくれたけど、涙目な顔を向けられてしまった。何でこっちが悪役みたいになってるの?
「その、さっきまでの事を誰にも言わないでくれると、助かるんだけど」
「絶対に誰にも言わないから。そもそもこの状況を上手く説明できる自信がない」
「簡単だよ! 教室で待ち伏せした後、君の傷跡を撫でて凝視して舐め回しちゃったんだよ! どう足掻いても変態だよ!」
お、おう。
随分とクレイジーな事をされちゃっていたんだなー。驚愕の事実だ。
もしこれが知れ渡ったら〝みんなで楽しい思い出を作る〟どころか、学園生活そのものが終了しかねず、周りからも〝ラッキー痴女〟を凌駕するあだ名を付けられる可能性まである。てゆーか、僕までセットにされて変なあだ名で呼ばれそうだ。
「人の不幸をネタにする趣味はないよ。それよりもう帰らない? 結構遅くなっちゃったし」
職員室に呼び出しの件があるのを伝えてあるとはいえ、これ以上遅くなったら母さんが心配するかもしれない。
「そうだね、帰ろっか。あと………、ありがとね」
それから2人で倒した机を戻した後、やっと教室から出る事ができた。
長かった。
そもそも、どうしてこんなに長くなったんだっけ? 今後もこんな濃厚な日々が待ち構えていんじゃないかと思ってしまい、背筋に冷たいものを感じてしまう。今日が特別で、明日から平穏な日々であってほしい。
「そういえば、石神君は突然野良犬に襲われたんだよね?」
「そうだよ。公園で遊んでいたら噛まれちゃったんだ」
下駄箱で靴を履きかえている時に聞かれたのでそう答えたら、更にもう1つ聞いてきた。
「どうしてその犬は、石神君に噛み付いてきたんだろうね?」
「……………さぁ、分からないな」




