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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
1章アルカディア王国編

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それは投げ入れられたパンの様だった

今回は猟奇的、若しくはグロテスクな表現が多々あります。

血が出ますし、人が死にます。

注意してお読みください。



ユリアは村娘だ。

ただ、見た目が少し良いだけの。

彼女は、ラサイアスに出会うまで魔物と戦った事など無かった。


魔物討伐の出発直前、新しい武具を貰った。

彼女には武器の具合など解らない。それでもラサイアスが此方の方が良い物だと言えばそうなんだろうと受け取った。


そもそも、膂力向上の加護(スキル)があれば、どんな物でも持てたから気にはならなかった。


そして、戦闘が始まって、彼女は何時も通り力を発動させようとする。

やる事は加護(スキル)に意識を向けて魔力を込めるだけ、何の技術も覚悟も要らない。


魔物に立ち向かう、恐怖も無かった。

ここで成果を上げて、ラサイアスに注目されたら、更なる加護(スキル)が配分されるかもしれないと、考えていたのはそれだけだ。


「なにこれ!? 重いっ!」


揺れる馬の背、片手で手綱を掴み、大剣をもう片方の腕で水平に振るう。

そんな事、普通の女の子に出来るはずがない。


しかも十字に斬るには、横なぎから急制動をかけて、縦に繋げなくてはならない。

彼女は頑張った方だ、勢いが付いていたとは言え、横には振り抜けたのだから―――


「キャウンッ!!」


すぐ近くで悲鳴が上がる。

コントロールを欠いた彼女の剣が止まる事無く、乗っていた騎馬の首に打ち当たったのだ。


「え、ぁ?」

グラリと視界が揺れた。


使い手は弱くとも、魔術が掛けられた大剣だ。

辛うじて鎧のお陰で騎馬の首は飛ばなかったが、馬は泡を吹いて気を失った。


「キャッ……あ、ぐぅ!!」


どうと、ユリアは騎馬に跨がったまま地面に倒れる。

500㎏以上ある馬体の下敷きになった右足から、パキリと軽い音がした。





エスリンは町のレストランの看板娘だった。

ラサイアスとはコックの父が、新メニューの開発に悩んでいた時に出会った。


彼女は滞空しながら二本の片手剣を構える。


「白の舞い」と言うのは、スピード重視の乱舞系の技を発動する加護(スキル)だ。


魔力を込めて目標を定めるだけで、勝手に身体が動き、その範囲内に居る敵を細切れにしてくれる。

バージョンを口にしていたが、彼女が決められるのは駆け抜ける方向程度で、その向き違いをバージョンと呼んで遊んでいた。


白い光に包まれて、舞うように二刀の剣を振るう彼女は、まるで戦乙女の様だと囃し立てられて。


ただ、今回は何時まで待っても加護(スキル)が発動する事は、当然無いだろう。


エスリンも何の気構えもなく、魔物が大量に犇めく地に舞い、そして墜ちて行った。




「いや、いやぁ! 来ないで!」


「なん?! 痛いっいだいぃぃーー!!」


赤い猿たちは、身動きのとれないユリアに容赦なく襲いかかり、飛び込んできた餌でしかないエスリンを受け止めて捕らえた。



ユリアは、馬の下敷きになった足が抜けず、近くに落ちた大剣で何とか猿を追い払おうとした。


「膂力向上、膂力向上! 白光十字斬り……何で加護(スキル)が発動しないの?」


赤猿の何体かが、がむしゃらに振ったユリアの大剣に当たって、怯んだが、それだけだった。

どんなに魔力を込めても、祈っても加護(スキル)は発動しない。


「ラサイアス様ラサイアス様、嘘、なんで!? ひっぎっー!」


そして、赤い猿はそれこそ数えきれない程いる。

馬の身体をよじ登った一匹に背中から飛び付かれれば、後は四方から押さえつけられて、終わりだ。


「嫌ぁあ! 死にだぐないぃ死にだぐない!」


赤い毛の生えた、獣の手がそこら中からユリアに伸びて、引き裂いて、引き裂いて、引き裂いて、引き裂いた。


「ぎゃっあぁあ"ぁ!! ア"オグゥ、オゴッ……ゴボゴボッ……ゴフッ…………」


涎をダラダラと垂らす牙が、叫ぶ彼女の喉を引きちぎり、狂った様な悲鳴と共に彼女の姿は、忽ち猿たちの群れの中に消えて逝った。






エスリンはもっと悲惨だった。


ある程度動けたユリアと違って、猿たちの頭上に飛び降りてしまったエスリンは逃げられる可能性がない。

だから、赤い猿の誰もが止めを刺そうとは思わず。食欲の方を優先してしまった。


「いだい、いだい、いだい、痛いぃー!」


何と言っても彼らは、産まれてから満足に食事をしたことがない。

口に入るモノは、仲間の死骸が主だったし、それも雀の涙。


そこに、柔らかくて、瑞々しくて、甘い香りのするご馳走が降って湧いたのだ。


「だずげで……ごしゅ……ざ……だず……けて」


ただ、やはり量が少ない。仲間は沢山居る。兄弟たち姉妹たちは、沢山居た。

だから、我先にと赤い猿たちは貪った。


「ぱぱぁー……ぱぱぁー……ああぁああ!!」


噛みついて、噛みついて、噛みついて、引きちぎって、隣同士で内蔵を引っ張り合った。

肉が餓えを癒し、血潮が乾きを癒す。


「あああああああああぁぁあああ"あ"あ"あ"!!」

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