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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
1章アルカディア王国編

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冒険者と別れて

「我らを守りし黒白の弓剣よ」


「我らは狩人」


「貴方の意志に従う者なり……」


月夜の狩人が、総出で隠密系の闇魔術をブーストするために祈りを捧げる。


加護持ちが誰か、解らなくするために大人数でやっているのか、魔力を分担するためになのか。その両方か。


神の目があれば誰が加護持ちか、一発で解ったんだけどな。

女神さまは、これだけでも先に元に戻してくれないだろうか?


「不便でしかたがない」


「何が?」


「何でもないよセーラ」


村人たちは既に準備万端だったのか、闇の魔術で目眩ましをかけると、直ぐに出発して行った。

無事に王都へ避難できると良いんだけれど……


「明日に備えて、今は休むことにしましょう」


「良かったな主殿、空き家は好きに使って良いそうだぞ」


彼らを見送って、僕らは僕らの出来ることをする。

まあ、先ずは夕御飯だな。






「起きなさい、ラサイアス!! ほらーおきろー!!」

うっうう……

ここは、暖かくて柔らかくて(少しだけ干し草の匂いがするけど)幸せな場所なのに、何でセーラの金切り声が聞こえるんだ。


「ラサイアスってば! いい加減にしなさいよ」


あーもーうるさい、うるさい。


いい加減にするのはセーラだろう。


ホント嫌いだ。

何で怒鳴らないと人を起こせないんだ。


「ラサイアスっちょっと本当に起きてってば、置いていかれちゃうわよ」


そんな事あるわけないだろ、僕はゆうしゃだぞ、勇者の僕を置いて行くなんて天地がひっくり返ってもあり得ない。


確かに、何時までも魔物は待ってくれないから、起きないといけないと解っているけれど、タイミングってあるだろう。

今は目が開かないんだ、ちょっと待って欲しい。


睡眠の状態異常を僕がレジスト出来るまで、騒いでもウザイだけだよ。


「ラァーサイァースゥウ!!」

だと言うのに、セーラは耳元で喉が張り裂けんばかりの大声を出した。

お馬鹿なのかな?


「あーもう! うるさいなセーラは起きてるってば!」

これには堪らず、僕も返事を怒鳴り返した。

勇者と貴族令嬢が、朝から何をやってるんだって感じだよ。


「そんな事言ったってもう時間!」


「解ってるって言ってるだろ、もう起きたんだから、ちょっと出てってくれよ」


むくれるセーラだが、着替えを手伝ってくれるのかと問えば、すごすごと部屋から出て行った。

鎧が結構手強いから、手伝ってくれても良かったんだけど?



「あー頭が痛い」

仕方なく身体を起こしたけれど、変な感じで無理に起こされたから、覚醒が上手くいっていない。


今日こそは激しい戦闘が起こる可能性があるから、体調を万全にするべき時だって言うのに、とんだ妨害もあったものだ。


ため息を一つ、僕は枕元に置いて有った水差しを手に取り、コップ一杯の水を煽る。

当然温くなっていると思っていたソレは、キンっと冷えて喉を潤し胃の底に落ちていった。


「んっ……冷たっ」


セーラがやってくれたのだろうか?

たまにはセーラも、女性らしい気遣いが出来る。

いや、セーラの事だ僕が起きなければコレを引っ掛ける積もりだったのかも……


うへ~あり得るから怖い。


何にしても、目が覚めて良かった。



着替えて外に出ると、まだ外は薄暗い。

それでも準備に走り回る兵士や、何時もより早く起こされて、不機嫌そうな嘶きを上げる騎馬たちで賑やかだ。


「主殿、お目覚めか?」


「ああ、おはよーアマルダ」


アマルダが、僕が乗っていたのと合わせて、2頭の走竜(オルニムス)を引き連れてやって来る。

準備が済んだら今日もまた、休み無く行軍だ。


気が滅入りそうになりながら、アマルダから手綱を受け取った。


「眠そうだな、主殿」


「あーんー、リリーナが居ないからね」


「あれ、昨日は……?」


「ん、ユリアとエスリンと」


「はぁ……盛んな事だが大丈夫なのか?」


「大丈夫、大丈夫。いつも通り、パパっと片付けちゃおう」


一番大変なのは移動だって、前から言われてるからね、仕方ない。


こんな事なら、あの緑竜全滅させるんじゃなかったなぁ……



少しはとっておいて、騎獣にすれば便利だったかもな。

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