死に行く星々の歌
始まりのそして終わりの地。
この空間に、国が創られて、いったいどれだけの時が過ぎ去っているのだろうか。
それは、遥昔からそこに在り、永劫の未来の先に来るのだろう場所だ。
重力を無視した円盤状の大地に、人間には理解できない叡知にて造られた幾何学模様や円錐形の塔が並ぶ。
塵のように周りを飛び交うのは、出動して行く天使の群団だ。
中心にある巨大な建物には世界を見守る神々が集まり。
未知の金属で出来た三角形の遠見の台座が、空中に何処か遠い海を映し出している。
それは初めは青々として生命を宿している様だったが、暫くすると海面が不気味に泡立ち煮えたぎる。
やがて水面には、無数の生物の死骸が浮かんで埋め尽くした。
陸上に視点向ければ、植物が屹立したまま燃えて、空を映せば肥大化した恒星が埋め尽くす。
星の命の終わり。
死に行く星々を見守る、神々の頂点には三つの座が設けられていて……
一つを埋めるのは、深い青に星の煌めきを散りばめた髪、南国の海のような明るい空色の瞳に、白銀の甲冑を纏い剣を携えた女神。
もう一つを埋めるのは、太陽のように紅炎を吹き上げる赤い髪を持ち紅紫色の瞳に慈母のような微笑みを湛えた女神。
そして最後の一つは空席だった。
「観測状況はどうだ?」
「特に変化はありません」
「生物の霊の回収完了」
「完了を確認しました」
女神たちの下で作業を進めているのは、彼女たちに仕える小神や天使、精霊たち。
彼らの手元では、光る画面が数値や図形を目まぐるしく表示させている。
「神霊は巻き込まれても平気な者だけ残して離脱します」
自身に尽くす部下の報告を聞いて、青い女神、天空の女神が残念そうに口を開いた。
「この星では知的生命体と呼べる器は誕生しなかったわね」
赤い女神、大地母神はそれに答えた。
「生命が生まれるだけでも貴重な事だからな、どんな生命だろうと私達は言祝ぐだけだ」
「そうね、さあ皆も落ち込んでないで仕事を終わらせましょう」
「悲しむことはないこの星の生きた記憶は霊の奥に刻まれ、器の進化は流星となって宇宙に広がっていくのだ」
女神は、特に気落ちしている一部の部下たちを労った。
彼等は永い間この星で活動してきた神霊たちだ、この星に住み守護して来たのだ、その悲しみに喉を詰まらせる者も出る。
されど、恒星の寿命が尽きるのは確定された運命、生き物が生まれた時に死ぬ事を定められているように、全てのモノは一所に留まっては居られない。それは停滞を意味するのだから。
一際大きなされど捕らえられる音をさせず、振動が駆け抜けると、それまで100億年以上寄り添ってきた惑星を吹き飛ばす。
大気が消え、全てがバラバラに崩れて、混沌とした物質とマナの雲となり宇宙空間に拡散して行った。
その死は、恐ろしくも美しい。
この状態がまた数億年の暫く続いていくのだ。
「さぁ、この爆発で新たに生まれた星を探しましょう」
「はい、天空の女神さま」
見守るべき惑星を失った精霊や守護天使たちはまた、生命の生まれる可能性のある星を探す事から、始めなくてはならない。
そして、子供を見守るように、後輩を育てるようにまた守護に就くのだ。
「それにしても、精霊神はどうしたんだ?」
今日観測する可能性が高いと知らせは行っていたはずなのだが、と二柱の女神たちは首を捻った。
恒星の死は珍しいものではないが、生命が居る惑星の近くとなれば不測の事態が起こらないよう出来るだけ立ち合うのが常だった。
大精霊神も、部下でそして子供たちでもある精霊や妖精があの星に居たのだ。
彼らを信頼して任せているとも考えられるし、自分たちも居るのだから大丈夫との判断は正しいのだが、過保護である彼女にしては珍しい事だった。
青=天空の女神
赤=大地母神
緑=大精霊神




