お祭り前夜
ロイが40歳を迎えた頃、彼が仕える精霊神殿の聖地で行われる神事を任される事となった。
10年に一度の祭りでもある精霊召喚の儀式は、国中の注目の的であり、もっと見目の良い神官をとの意見は多かった。
実際、200キロ近い巨漢で、潰れたオークキングの様な容姿なのだからそう言う意見が出てくるのも仕方がないとロイ自身も思った。
ただ、彼はこの役目だけは誰かに譲る気はない。
師匠でもある枢機卿の一人が是非彼にと推してくれたのもある。
同僚や部下、馬鹿にしていた兄弟たちまで不器用に応援してくれたのもあった。
しかし、彼は彼自身の望みのために、この役目をやり通すつもりだった。
なぜならそれが神職の道に進んだきっかけだったから。
そしてそれに足りる実力を彼はつけてきた。
実際に危険な妨害も沢山あったが、彼は身につけた知識とこれまでに築き上げた人脈でそれを乗り切った。
補佐をしてくれていた、同僚のエステラと揃って祭壇の最終確認をしながらロイは秘密にしてきた望みをポロリと溢していた。
それはやっと辿り着いたと言う気の緩みからだったのだろう。
「助言をくれた神霊を喚び出したい?」
数年かけて神木の枝で作らた依代は、花々で飾られ神霊を宿らせる出番を待っている。
と言っても、ほとんど何かが現れる事などない。
形式化された祭りの、閉め儀式なのだ。
初代の教皇は、自在に神霊を喚び出し、助言や助力を求める事が出来たと伝わっているが、それは伝説の話。
「い、いや、本当にあれが神霊だったかどうかは、わ、分からないんだけれど夢だったかもしれないし」
「なるほど……それも含めてと言う訳ですね」
「わ、私事を持ち込んで幻滅したかい?」
「いいえ、そいう事があってもいいんじゃないかしら? それに縁のある神霊様が居るのなら出て来てくださるかもしれない」
そうすれば、見に来てくれている信徒の人たちも喜ぶと、エステラは笑顔で言った。
何かちらりとでも、神力の輝きが起きるだけで縁起が良いと。
「き、期待はしないでくれよ」
「ふふ、お子さんも見に来るのでしょう頑張らなくては」
「そ、そうだね」
かがんだ状態から立ち上がる。
それだけで乱れそうになる息を、はぁっと吐いてロイは夜空を見上げた。
街の彼方此方には、祭りのために飾られた提灯が、星々の光に返事を帰すように輝いている。
大陸の北東、スワンカラー帝国から海を渡った先にあるこのドラグランドは精霊信仰の中心地だ。
かつて精霊と言葉を交わし愛された人々が拓いた国だと言われ。
当然その信仰に関わる神事や祭りは他のどこよりも盛大に執り行われる。このためだけに、他国から何年もかけて旅してやってくる熱心な精霊教徒もいる程だ。
ロイは神官として、その儀式の代表を務める。
それを思えば、今から緊張で手がヌルつくほど汗ばんだ。
ここまで来れたのは、あの夢の助言のお蔭である。
皆が願いを託す儀式、そこに自分の望みを乗せる事を少しだけ、許して欲しいと彼は胸の中だけで、大精霊神に祈った。
「もしその神霊様が召喚に答えて下さったら、シュトロイヘルさんは何をお願いするのですか?」
「え? お願い? なんてしないよ」
「え? じゃあ何のために喚び出すんですか?」
「勿論、お礼を言うためだけど……?」
ロイが、不思議そうに在るのか無いのか解らない首を傾げるのを見て、エステラは悟った。
なるほど彼は、彼こそが神官に相応しい人物なのだと。
「そうですか、言えるといいですねお礼」
「う、うん! そうだね!」
春の「おーい妾は此処におるぞぉ~ローイ」
ロイ「あ、あれは夢だったんだろうか……」
春の「くっそー鼻つまんでやろうか?」
ロイ「ふがっふがっ」
モブ女子A「やだーw」
モブ女子B「豚が鳴いてるわよw」
モブ女子C「キモッーーw」




