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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
1章アルカディア王国編
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軋み

「……ん……ん……んー」


温もりを感じて目を覚ます。

僕の視界を埋めるピンクのもふもふ。


「あん、ご主人様」

僕が身動ぎすると、ピンクのモフモフが顔を上げて、至近距離で赤い目と目が合った。


「ん? リリーナか」


なんかもふっとしてると思ったら手に触ったのはリリーナの尻尾か。

寝てる間に抱き付くように上に乗っかられていたみたいだ。

ま、リリーナは軽いし、軟らかいしご褒美以外のなにものでもないです。ありがとうございました。


「おはようございますです」

「おはよ」


昨日僕が見張りの交代一番最後だったからちょっとまだ眠いな。


しかし、このままリリーナを抱き締めて二度寝とは行かないようだ。


「なんか騒がしいな」

「うん、なんか揉めてるみたいなのです」


それでリリーナが起こしに来たらしいけど、一緒に寝てたらダメじゃないか。

僕は身支度を整えると外に出た。



「何を言っているんですか!」


「いや、しかし」

馬車の外ではセルジュが怒っていた、珍しい事に大声を出して怒鳴っている。

相手は、あの大人しそうなポーターさん!?

二人の横ではアマルダが、難しそうな顔をして何もしないで立っているから、何かされたって訳じゃないだろうけど。


「絶対に嫌です!」


「どうしたんだ?」


「ご主人様が来たのですよ」

僕は駆け寄って先ず手前にいたアマルダに声を掛けた。


「主殿、あたしはポーターが言っている事は間違ってないと思うぞ」

ありゃ? アマルダがポーターさん側だ。

で、何がどうなのさ、説明を求む。


「アマルダ! これだから無宗教者は」

「落ち着いてセルジュ、いったい何があったんだ?」

「ライ様聞いてください!」


途中興奮してて解り辛い部分もあったのだけれど、順番に纏めるとこうだ。




始めに、僕と交代したアマルダが見張りをして居ると、ポーターさんが起きてきたそうだ。

それで、昨日の冒険者崩れの死体がそのまま野晒しなのを見て、アマルダに埋葬して弔おうと言ってきた。


アマルダは好きにすれば良いと答えたそうだ。

その上で、手伝うのも面倒だと見ているとポーターさんは一人でささっと16人分の墓穴を掘り。


「え? どうやって?」

「空間魔術でやりました」


魔法便利。


それで死体もささっと墓穴に入れて祈りを捧げてと、そこまで問題は無いように思ったのだが、その直前にセルジュが起きてきたのだそうだ。


「ありえません! 犯罪者それも戒律に背いた者に祈りを捧げて神の国に送り出すなど!!」


「いや、しかしきちんと弔いをしておかなければ彼らは怨みを持って亡くなりました、アンデッドや怨霊になる可能性が高いですよ」


「あーなるほど」

つまり宗教と冒険者のマナーの対立なのだ。


セルジュは聖女として犯罪者が神の国の門を潜ることを許せない。

ポーターさんは冒険者や旅人のマナーとして森の入り口に死体と穢れた霊を遺すのは駄目だと主張している。


で、アマルダは―――

「あたしは神殿の事はよく解らないよ、ただアンデッドは厄介だ」


僕自身はアンデッドを見たことがないがあのアマルダが厄介だと言うなら相当なのだろう。


「僕にはどうもピンと来ないんだけど、ちょっと祈るだけでそんなに変わるもの?」


「ライ様まで……祈りは大切なものです。私の様な高位聖職者の祈りを受ければ罪をそそぎ神の国の入門をも赦されるのですよ」


穴に入れられた死体を見る、僕に絡んで僕の仲間たちに乱暴をしようとした男達。殺してもなおその顔を見ると憎たらしく思ってしまう。

彼らの罪が無かったことになって神の国に行く?

それは宗教にあまり興味のない僕でも納得出来ない。


「彼らは犯罪者で背教者です。殺すことなかれ、盗むことなかれ、異常な欲望を持つことなかれ、戒律に背いた者に正式な弔いなどされないのです」


「それこそ、何を言っているんですか! 祈りを捧げたくらいで罪が無かった事になる訳ないじゃないですか、それに戒律とは修行者のためのモノで一般には努力目標です。激しく逸脱しなければ死してなお咎められたりしない」


意見を聞くと、ポーターさんが言っている内容の方が僕の認識と似ているなと感じる。

市井に生きる人々の実質的な暮らしには厳しい戒律はそぐわないんだろう。


「うん、解ったじゃーこうしよう、死体はアンデッド化しないように跡形もなく焼いて埋める。で祈りについては個人の判断で」


「それでは!」

声を荒げるセルジュ、気持ちは解るよ。


「高位聖職者の祈りでなければ大丈夫なんでしょ? それに道端にあるお墓とかに祈るなとか強制出来ないしね。ポーターさんもそれでいい?」


「はい……」


本当なら彼らに救いの機会なんて僕だって与えたくない。


しかし、ここは少し行けば街道に繋がっている場所だし、この森は冒険者や近隣の住民なんかが猟や素材の採取に利用している。


そんな関係ない善良な人達がアンデッド化したこいつらに襲われて怪我したり、殺されたりなんて後で聞いたら目覚めが悪い。


全く死んでまで他人に迷惑を掛けるなんて……





お読みいただきありがとうございました。

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