サクッと倒してドンドン進もう
「なんだ……なん、何なんだよぉ!!」
僕はお金の力は否定しない。
そう言う面もあるし、僕がお坊っちゃんだってのも認めよう。
でも、だからって。
「あ、かっ!お前、お前、弱いんじゃないのかよぉ!」
強くないなんて、言ってないよ。
僕に向かってきた四人の手足を、さくさくと切り飛ばす。彼らの動きなんて、蝸牛を見ているみたいで欠伸がでてしまう。
刃を合わせる必要なんかない。
ただ避けて、ただ差し出された身体を、切り飛ばすだけだ。
「ハハハ、弱い弱いよお前ら!」
後ろでは、アマルダの笑い声と共に何かが潰れる音がする。
うん、痛そう。
リリーナは弓矢を牽制しながら、メイド隊と連携して仕留めてるみたいだね。
「お金で買えない力と言うやつを見せてくれるんじゃ無かったんですか?」
「ヒッひぃぃ~」
リーダーっぽかった大柄な男は、情けない悲鳴を上げて後退る。
仲間がバタバタと倒されていれば、仕方がないか。
必死で押さえている太股から先は無くなっているし、まあ僕が綺麗に切断してやったんだけどね。
切り口からは、ドクドクと血が溢れてる。
ドラゴンの鱗さえ、バターみたいに切れるフェザースターの前では、多少魔力や装備で強化した冒険者なんて紙みたいなものだ。
「お、俺が悪かった、たたすけ…ぐげっ…」
「もう遅い」
僕の仲間に害を為そうとするなんて、万死に値する。
想像の中だとしても、不埒な行為に晒されたのが許せない。
首に深く剣を差し込んで横に薙ぐ。
血が噴水のように噴き出して男は絶命した。
彼らは盗賊だ、そうなってしまった。
盗賊は縛り首そうと決まっている。
ならば返り討ちにしてしまうことも許可されていた。
馬車の横ではリリーナが、引きずり出した最後の射手の首を同じ様にナイフで落としていた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
怪我は有りませんかと回復担当のセルジュがパーティーメンバーに声を掛けている。
「ハ、弱すぎて怪我の仕様もないね」
「リリーナもー」
「問題ないみたいだよ、セルジュ」
僕たちの返答を聞いて、セルジュが安心したように微笑んだ。うん彼女は癒しだ。
馬車から覗いているポーターさんも、顔色が悪い以外は怪我一つなさそうだ。
彼は、荒事に本当に馴れていないみたいだな。冒険者になってから、男と言えば粗野で野蛮なタイプにしか会わなかったから、少し新鮮だな。
考えてみれば、僕って中流層に知り合いがいない。今後は、町人とか商人とかの伝手も、有ると便利かもしれないなぁ……。
「ご主人様ーこいつらろくな物持ってないのですー」
おっと、考え事をしている内にリリーナとメイド隊が男達の死体を並べて物色しだしていたみたい。
盗賊の持ち物は倒した人が貰って良い決まりになっているので何も問題は無いのだが、手際よすぎるよ。
「食いつめの冒険者だからね、装備もボロくて要らないし、ギルドカードだけ回収しておけばいいよ」
後でレイチェルさんに提出して、報告する用だな。
盗賊としての余罪があれば、多少の褒賞金が貰えるかもしれない。
「了解ですご主人様!」
手を上げてぴょんと1つ跳ぶ、リリーナはいつも元気だ。