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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
5章神霊編

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お昼までの時間に来た人

「みんな凄い、大成功ですよ!」


午前の演舞は終了。

俺は感動して戻ってきた愛好会(クラブ)の生徒達を抱きしめ、頭を撫でた。少し恥ずかしがって、むずがるが、みんなにこにこしている。


「いいなぁ」


「うちは担任がな……」


「純粋なあれじゃなかったからな」

魔物使い(テイマー)部の子達が嘆いている。軽い感じにしているけれど、本当は何年も師として教えを受けていた人物があんな事になり、未だに内情は穏やかじゃないんだよな。

周囲からの当たりが酷くならないように、辺境伯家で手を回しているらしいが――どうやってやっているのか、噂話とかのコントロールしてるらしい――自分のことを最初から見ていて、相談出来る師という存在が居なくなったのは、大変だろう。


魔物使い(テイマー)としての指導は出来ませんが、ここは代わりに私が!」


「きゃーーシマルコ先生ー!!」


「いっ!? 違いますちがいますーっ」

魔物使い(テイマー)部の子供たちにもと、手を広げると、マローナさんがS字軌道を描いて人を避けて走ってくる。そして綺麗に宙に舞って飛込んでこないで欲しい。

むぎゅぅ……。うぐぐ……。


「きゃー大胆」


「あははー」

潰れる。事は無いけれど、子供たちに笑われてしまっているぞ。


「もう、離れて下さい」


「えーやーだー」


「マローナ流石にはしたないから止めなさい」


「むぅ……」

マローナさんは辺境伯に言われると、渋々と俺から離れる。親父さんが居てくれて良かった。止めてくれて正直助かる。


「はぁ……」


「……」

でも何だろうこの視線……。上から旋毛に突き刺さってるんだけど。


「ここまで気に入っているなら、側室枠を一つ潰しても……」

周りに聞こえないように、ぼそっと何言っているんですか!? この父親!

ちゃんと頑張って反対して下さいよ。一枠くらい諦めるかじゃないんですよ。



それはおいておいて。


「みんな交代で隣人祭回ってきて下さいねー」


「はーい」

「おう」

「ほーい」


「午後の演舞の開始時間、少し前には帰ってきて下さいね」


「解ってるって」


「任せとけ」


「後半もバッチリ決めてやるよ」


「行ってきまーす」

事前に決めていたローテーションで子供たちを放流する。俺も回らないといけないけれど、それはアトラスさんと交代した後になる。


「アトラス先生まだかしら?」


「まだですよ」


「マローナさんも先に回って来ていいですよ」

肉の切り分けを手伝いながら、残っていた彼女にも声を掛ける。アリスさんは俺が一緒の方がいいけれど、彼女はアレクさんと回ってきたらいいと思う。


「えぇ~初見の感動をシ、マルコ先生と楽しみたいのに!?」


「……う~ん、私は仕事で回らなくてはならないので、そこまで楽しむ余裕とか無いと思うんですよね」


「むぅ」


「……ですから、下見しておいて貰えれば、多少は時間が出来るかもしれません」


「!? 解ったわ任せて!! 完璧な回り方を見付けておくわね!」

マローナさんはにこにこと笑って、屋台を出て行った。

俺って狡いな。

でも、もっとこう、同年代とちゃんと思い出を作って欲しいんだよな。一度しか無い学生生活の、青春なのだ。俺のような異物にばかり拘っていてはいけない。


「もう1皿くれ」


「凄い使い魔ですね」


「少しなら触っても大丈夫ですよ」


楽しげな声がそこら中からする、平和だ。

しかし、巨鹿(ジャイアントディア)の肉は余るかと思ったんだけれど、これは残らないかも知れないな。残ったらみんなで食べればいいとか言ってたのだけれど、子供たちががっかりしそうだ。

打ち上げはどこか店でやるか……。


そんな事を考えながらお客さんを捌いていると、ざわざわと一塊の人波が近付いてくるのを感じる。僅かに近付く神力も感じるので、仙女様の一行が外の出店を回ってきたのだろう。


警備と、見物人達、それを近付かせないスタッフ。その中心に件の女性とそのお付き、学園長とその秘書達といった構成の集団だ。

それがだんだんと近付いてくる。

「……先生」


「はい、大丈夫ですよ」

当番で残っていたセルチェさんが、緊張した面持ちで俺を呼ぶ。

冒険者愛好会の担任として、出迎えないといけないな。何事も無いと良いんだけど、まぁ大丈夫だろう。


「まぁ美味しそうですわね」


「ありがとうございます、どうぞ良ければ一皿食べていって下さい仙女様」


「……あの、以前お会いしたこと、覚えていらっしゃいますでしょうか」


「ええ勿論ですよ。青の先輩の紹介ででしたよね……お久しぶりです」

肯定すると、何処か硬かった仙女マリーの表情がぱっと和らいだ。先輩が休眠する前に一度紹介されただけだから、60年前に一度会ったきり。覚えていない事も想定していたんだろう。


まぁ、実際俺は記憶力に特段自信がある方じゃ無い、覚えていない事も有り得た。ただ覚えていたのは、紹介された時、妙に先輩のテンションが高くて、その……うん。

まぁ上昇する人少ないから、特別な意味は無いのかもしれないけれど。


「此方こそお久しぶりでございます。なかなかお顔を拝見する機会がありませんので、ここでお目にかかれて嬉しいですわ」


「聖女様と顔見知りなのか、補助教師マルコ」

学園長が慌てた様に聞いてくる。


「いえ、顔見知りという程では、以前共通の知人を挟んで一度紹介して頂いただけで」

そう言う事は先に言って貰わないとと、秘書の方に小声で苦言を言われてしまった。すみません。

でも本業の関係者に、ここで会うことになるとは全く予想していなかったから。


「トゥ……マルコ様、少しご相談したい事があるのですけれど仙として」


「ご依頼ですか?」


「はい、その様な、先ずはお話だけでも」

そう言って、封筒を渡された。中は連絡先か、滞在している宿屋の場所か……。


「解りました、近いうちにお伺いします」


「有り難うございます、お待ちしておりますわ」

……仕事かな。

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