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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
5章神霊編

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午前の演舞は完璧

焼き肉の屋台は大盛況、生徒たちが周囲に作った展示物も沢山の人が注目してくれている。そして順調に観客が集まり、演舞開始時間となった。

一回目は魔物使い(テイマー)部を中心としたプログラムだ。


「カブ!」

一番手は深山鷹(マブカホーク)のカブ君。

アニスさんが指示を出し、カブ君はその通りに飛び回る。観客の頭上ギリギリを低空飛行し、歓声が上がった。

何度かそれを繰り返し、最後に、指示した的を天高くから強襲し、倒した的を持ってアニスさんの腕に戻ってくる。


「出番だオッド」


「頑張ってルカ」


「頼むフィーネ」


続いて、クレンケル君とセルチェさん、クーパー君がそれぞれパートナーと共に、入れ替わりで飛び出す。


魔物使い(テイマー)技術(スキル)発動!!」


「いくわよー!」

彼らの準備が整うと、マローナさんは的を掲げ、それを魔物達が攻撃して破壊する。

高く放られた標的である鞠が、三頭に小気味よく割られると、リズミカルだ。


「タイミング良く的を出して投げてしているマローナさんも、実は凄いんですよね。勿論魔物使い(テイマー)部の面々が、完璧にやってのけてるのはそうなんですけど」


「当たり前だろう、うちのマローナは世界一なのだ!」

あ、マローナさんのお父さん。独り言に反応されてしまった。

何となく探るように話し掛けられたり、近くで鑑賞したりしているけれど、正体がばれている感じは無いんだよな。


まぁ普通はそうだけど。マローナさんが特殊すぎるだけ……。ただそうすると、なんで態々俺なんかに話し掛けているんだろう?

治療の関係で頻繁に邸宅にお邪魔していて、顔見知りではあるけれど、知り合いが居ないと駄目な性分でも無いだろう。辺境伯その人だし。

「?」


しかし、この人はマローナさんを本当に可愛がっていて、見ていてほっこりするな。

凄く厳しい人が、一人娘にだけは弱いとは、何とも人間味があると思う。

でも……それを帝国も見抜いていて、あの時襲われたのだろう。世知辛い。


十五分の休憩を挟んで二回目。

今度は冒険者愛好会(クラブ)を中心とした演舞だ。


「本気で行くわよ」


「……はい」

初めはアレクさんとマローナさんが軽く手合わせを見せる。

二人は長年一緒に修行をしているし、受けるアレクさんが上手いので、多少マローナさんが無茶をしても大丈夫。


迫力のある二人の打ち合いに、声援が上がる。二人とも出会った時より確実に強くなっているな。

剣術のみの評価だけならアレクさんはBにもう少しってところ、マローナさんはDくらいは有りそうだ。まぁ実際には探索とかサバイバル能力とかが要るから、今すぐそのランクの依頼が熟せるわけではないけれど。


「マローナ素晴らしいぞ!」


「先輩素敵ー」


「キャー」


「マローナ様!」

模擬戦が終わり、彼女たちが一礼して横に捌ける。

続いてアベル君、スブート君、キーパ君、バート君、ファルク君が前に出る。


「はぁ!!」

彼らは教えた型どおりに剣を振るい。

的に一斉に魔術を撃って、普段の訓練の成果を見せた。うん、うん構えも振りも良くなっているな、皆の成長が俺は嬉しいよ。


そして最後に、マルケス君、ケイネス君が二人揃って場に出て来た。マルケス君は魔術師として杖を構え、ケイネス君は剣を構えて向き合う。


「はぁ!」


「世界に宿りし炎の力よ――」

間合いを詰めるケイネス君、右袈裟懸け左袈裟懸けと剣を振るい。マルケス君はその剣を左右に避けながら呪文を唱え始めた。

動きは決まっているけれど、傍から見ると本気に見える様に二人は演技している。ただ、まだまだ剣先が遠くてお互いにタイミングを計っているのが解りやすい。


でも凄く上達したと思うぞ。それに安全第一だからな!

少しでも怪我をしたら中止だと言い置いて、二人とも了承しているから、ちゃんと無理をしていない。


「我が意思に従い敵を撃て、火炎球」

マルケス君の杖に魔力が迸って魔術陣が描かれる。

ボウッと燃え上がる拳二つ分くらいの炎の球が、真っ直ぐケイネス君に向かって飛んで行く。


「くっ!」

よしっ上手く避けた。

後ろに飛んだ火炎球は、アレクさんが予め出してくれていた水壁当たってジュウッと音を立て、水蒸気を派手に上げて消える。


「――火炎球! ――火炎球!」

今度はケイネス君が避ける番だ、彼は走り回り、炎の球が飛び回る。

確かに迫力満点だ。

観客も息を呑んで見ているな。


ここから一番難しい振りだ。そして大詰めでもある。


「世界に宿りしの炎と土の力よ我が意思に従い」

球系統の中でも、複合属性の難しい魔術をマルケス君は唱える。


「ふー……ふー……っ!」

ケイネス君は燃える岩石の赤々とした光に照らされながら、緊張した面持ちで息を整える。

大丈夫か、頑張れ……きっと上手く行く。


「敵を撃て、溶岩球!!」


「イヤァッ!!」


いける。いけっ!


ドンと音がして、派手な火花が散る。

マルケス君が放った溶岩球を、ケイネス君は剣で弾いた。芯を捕らえたそれは、バラバラになりながら背面の水壁に散弾のように散らばった。

今までで一番の水蒸気が上がり、その前で二人は剣と杖を交差させつばぜり合いをし、一瞬動きが止まる。



それから二人は構えを解き、観客に頭を下げた。

一瞬の静寂、周囲からは割れんばかりの歓声と拍手が起こった。

息を荒げ、汗だくになりながら彼らは笑い合う。笑い合い手を取ってもう一度礼をすると、横へと捌けて行った。


上手くいった、凄い、格好良いぞ二人とも!!

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