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異世界で隠しキャラやってます  作者: 鳥鼠 ゆき
5章神霊編

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隣人祭開催

残りの準備期間を忙しく終えて、今日この日を迎えた。

私のクラスの展示物は、有名な賢者英傑達が使用した、魔術について。現存する物から、今は残っていない物、伝記の中にのみ記載がある魔術を纏めたものよ。


愛好会と部活の方も、ばっちり訓練を終えている。

後輩達の演舞も、何とかギリギリ間に合ったみたいね。みんな凄く頑張っていたわ。



「それでは、続きましてご来賓の皆様を代表し、仙女マリー様よりお言葉を戴きたいと思います。宜しくお願いします」

そうして、隣人祭開会式の終盤、その女性は壇上に上がってきたわ。

小川のせせらぎの様な青銀の髪、金月の様な瞳。神秘的な美しさを湛えた妙齢の貴婦人。しずしずと壇上に上がる姿は、花のように清楚で優雅だった。


生徒たちから密やかな、感嘆のため息が聞こえてくるわね。


「ご紹介に与りましたマリーです――」

真っ直ぐ前を見て彼女は話し始める、声も涼やかってどう言う事よ。

これが本物の聖人聖女、精霊神殿で言えば仙女様。

彼女は、戦いや事件の痛ましい犠牲者に哀悼の意を捧げ、これからの私たちの成長と無事を祈ってくれる。


話の内容としては、仙女様はどちらの国の味方でもなく、戦争と世が荒れることを憂いて居る様ね。神殿の人間としては、一般的な態度だわ。


「皆さんにとっても大変な時ですが、だからこそ掛け替えのない学園生活を楽しんで――」

そうして、生徒達に一人一人に視線を合わせるように話を続けるが、僅かに一度だけその動きが止まった。気にして見ていないと気付けない程度だと思うけれど、私には解るの。その方向は右斜め後ろ、マルコ先生が居る辺りなのだから。

その上で、一瞬だけ仙女様の微笑みが深くなったように、私は感じた。


「私も皆様と一緒に隣人祭を楽しませて頂きます、有り難う存じます」

礼をして、彼女は壇上から去って行った。

シン君は大丈夫と言っていたけれど、色んな意味で狙われるかも知れないわね……。


「それでは隣人祭開催します!」

開会式が終わると、それぞれの担当の配置に生徒達が着く。そして、一般参加も入れるように、学園の門が開けられ、本格的に開始となる。

クラスの方は展示物と説明発表だけなので、私は基本的に愛好会と部活の方に参加する。勿論途中で其方の説明に立つ時間もあるけれどね。



「いらっしゃいませ」


「コッコーの焼き肉一皿下さい」

早速お客様から注文が入り、続々と列が出来はじめたわ。


「おお、おお、これがマローナの捕った魔物の肉か! よし、全部買い込め!」


「止めてお父様、沢山の人に食べて貰いたいのに迷惑よ。それに私一人で狩りをしたのでは無いわ!」

これが辺境伯の姿でいいの?

結構奥まった運動場に場所をとったのに、いの一番でやって来て、大げさに喜びながら食べてるわ。みんなに、微笑ましいものを見る視線を向けられてるんだけれど、恥ずかしい。


「辺境伯の親馬鹿ぶりは、有名ですからね」


「やっぱり親子ですね、なんだかマローナさんと似てます」

アトラス先生とシン君にまで言われてしまったわ。

と言うかマルコ先生、私の何処がお父様似なの? どちらかと言えば、私はお母様に似ていると言われてるのに!?

それに私、あんなに太ってないわ。まぁ最近少しお父様も痩せてしまったけれど、それでもあのお腹よ。


「マローナ演舞は何時からやるんだ、必ず一番前で見なければ」


「看板に書いてありますわよ」


「そうかそうか、お肉美味しいぞ」

全くもう。大騒ぎするだけして、注意したのにそれでも結構な量買い込み。場所取りだけ従者にさせて、クラスの方の展示を見に行ってしまったわ。

流石に私のクラスだけ目当てじゃないわよ、何時でも優秀な人材を探しているし、付き合いのある貴族家の子供たちの方にも顔を出さないと行けないからね。子供というか、見に来ている大人と話さないと。


親馬鹿ばかり発揮している訳じゃ無いわ。多分。

自分への態度で忘れそうになるけれど、結構な腹黒なんだから。


後シン君に絡まないで欲しい。本当に本当に……。



「凄いなこの角」


巨鹿(ジャイアントディア)か?」


「流石ランクAの冒険者がいるだけはある」


「おい、これは俺たちが自分で狩ったんだぜ!」


「そうだそうだ」


「先生は安全のために付いて来てくれていたけれど、獲物を仕留めたのはオレたちですよ」


「へぇ~」


「そうなのか」


「うちの子も最近見学に通っているんだ」


「凄いな」

他の父兄も、お皿を片手に展示された魔物の部位を見て、驚いたり。後輩達の説明を聞いて感心したりしているわ。

ただ焼き肉を販売して終わりでは、冒険者愛好会と魔物使い部の発表としては不十分ですものね。どんな訓練を何時もしているのか、その辺りの説明もして、最終的に演舞を見て貰って理解して貰わないと。



「ふふ……開始から盛況ですね」


「マローナ様、ご機嫌よう」

暫くして声を掛けてきたのは、アリスさんとリリスさんの姉妹。

まだ満足に歩けないアリスさんは、使い魔契約(テイム)した死毒蜘蛛(フェイタスパイダー)に乗っているわ。死毒蜘蛛(フェイタスパイダー)は特有の魔術か技能(スキル)で、身体の大きさを少し小さくして居るみたい。ただ、その鮮やかな体色で、周囲の人たちは少し距離を置いているけれど。


蜘蛛の魔物の方は、私を見てちょっと警戒しているわね。未だにお尻を焼いたこと、忘れてくれてないみたい。


「二人とも、良く来てくれたわね。アリスさん体調は大丈夫?」


「ええ、大丈夫。今日はとても調子が良いのよ」


「私たち何もしていないのに、この場に参加させて頂いて、有り難うございます」

リリスさんが恐縮したように言う。そんな風に思う必要ないのに。


「二人は大変だったのだからそんなこと気にしないで、今日は気分転換に楽しめたら良いと思うのよ」

勿論体調が悪くならない程度だけれど、折角の隣人祭、楽しい思い出になるはずだもの。


「それに二人を口実に、マルコ先生とみんなで回れることになったから、私は助かってるの」


「まぁ~ふふ……お役に立ててたら嬉しいわ」


「マローナ様、相変わらずなのですね」

実はそうなのよ、シン君がデートの誘いは如何しても受けてくれなかったから、休憩時間を合わせてみんなで回る事で口説き落としたのよね。


二人きりじゃないけれど、機会を貰えたのよ、ありがとうだわ。

「そうよ、全力で楽しみましょう!」

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