そこそこの盾とちょっと強い矛
アトラス先生が聞いた話では、シン君の格は下から3番目なんですって。本当かしら?
言ったアトラス先生でさえ懐疑的に思っているらしいし。
「本当ですって」
って本人も言っているけれど、マルコ先生って、自己評価低そうなのよね。そんな謙虚なところも好きだけれど。言われたことを鵜呑みにしていたら、正しい評価がなんなのか解らなくなりそう。
「そこまで信用されてると危険だなぁ……ならやって見せましょうか?」
シン君は少し考えてから、黒い曲剣を作り出してそう言った。
「マローナさんこっちの端っこに寄って下さい。そう、動かないで下さいね」
「うん」
何をして見せてくれるのか、予想は出来るけれど、私は胸を高鳴らせながら指示に従う。
近くで見ているアトラス先生も、目を輝かせているわ。あ、でも魔術師の先生より、アレクの方が見て勉強になるかしら?
あ、考えているうちに、シン君が動いてしまった。
左に持った剣を下段に構えた状態から、軽やかに上に向かって振り抜く。小気味よいと言っていい音がして、スパッと結界が切り裂かれる。
「っ、なんて……綺麗な剣筋……」
こんなに近くに居るのに、この威力なのに私の方に余波とかはない、風が後を追う様に通り過ぎただけ。
結界の方は、切り口からバラバラと崩れて消えてしまう。
「凄いわ」
「そんな、こんな簡単にっ!?」
「そこまで感心されることでは無いですよ、自分で作って自分で壊しただけで……実を言うと私、防御はあまり得意じゃないんです」
……シン君の中ではって事ね。けれど続けて彼が言う。
「速度と攻撃力なら少しだけ、自信があるんですけどね」
「……ふむん」
シン君の力で発動している術だから、当然彼の得手不得手が反映される。
でもそれは別として、重ねて少しだけと言う彼が、自信があるというのだからきっと攻撃力は凄く凄いんでしょうね本当は。うん、なるほど。
この結界は私たちが考えていた様な、兎に角無敵の術と言うわけではなくて、シン君と並ぶ力で攻撃されると壊れてしまう。
「ってやっぱり粗全ての攻撃は防げるのじゃない! 何処の誰が、シン君の力を上回るって言うのよ」
「そうですとも、相手が人なら不壊と言っていいと思います」
「いやいや、普通に強い人は居ますよ。私より格上の神霊に加護を貰っている人だって、居るんですから、それにほら聖女とか聖人とか」
シン君今一瞬、アトラス先生が不壊と言った時、凄く嫌そうな顔をしたわね。
「う~ん……納得いかないけれど、今私の家に天使も聖人も居るものね、気付いていないだけで、そう言う強い人っていっぱいるの……ね」
聖人と言ってジェイが出て来ちゃうのも、雑音なのだけれど。
「はぁ……とても低い確率だと思いますよ」
「最悪の想定をしていないと、駄目だった時に取り返しがつきませんから」
「その通りだな、的を持って来ましたよ」
同意しながらアレクが帰ってきたわね。
「ねぇ、ちょっとアレクも攻撃してみてくれない? ほらこっちの端っこに寄っているから、この辺を」
もう一度結界を発動し、お願いしてみる。
「そうは言っても、流石に俺では壊せませんよ」
ぶつくさ言いながら、何度か剣で斬り付けたけれど、結界は揺るがなかったわ。
「でもこれあれね凄く勉強になるわ、アレクがどんな動きをしているのか、じっくり観察できるもの」
「そうですか、俺はあまり気分が良くない。だんだんこっちに寄って来ないで下さい」
「そう、じゃあ魔術も撃ってみて」
「うぇ……」
嫌な顔しないの。
それでも、色んな魔術をさらっと撃ってくれたわ。やっぱり結界は無傷。
「アトラス先生もお願いします」
「良いんですか?」
「お嬢様、的を使って下さい」
「それは後でね大丈夫よ。ね、マルコ先生」
「大丈夫だとは思いますけど……」
「折角だから色々試しておかないと、駄目な攻撃と大丈夫な攻撃を見極める為よ」
「なる程一理ありますね、こんな機会はあまり無いですから!」
アトラス先生も同意して、一通り魔術を放ってくれた。うん、無傷だわ。槍系の連打でも完璧に防いでいる。
それでいて、魔力がどう動いているのか、最前線で見られてやっぱり勉強になるわ。
「――大地の顎」
「――煉獄の鳥」
興が乗って何だか聞いた事も見たこともない魔術も、アトラス先生は放っているけれど、中の私には何の影響もなかったわ。この炎の鳥を出す魔術、私も使いたいな。
「ふぅ……全然駄目ですね、流石ですマルコさん」
「そうよ、シン君は凄いのよ」
「凄く怖いので、そろそろ止めろ下さいお嬢様!」




