ブローチの強化
「これ?」
「それは、お嬢様にとって大事なもので」
「大丈夫よアレク」
アレクさんの様子を見ると、やはり特別な物なのか。辺境伯の至宝とかも言っていたものな。
ただ、マローナさんの魔力と俺の神力に長い間晒されていて変質しているから、とても相性が良く効率が良いだろうとメカネス様は提案したのだ。
しかし逆に理由はそれだけなので、他に材料を探す事も出来る。
「無理にとは言いません。少し時間を掛ければ、他に見合う物も見付かると思いますので」
今現在のベストと言うだけだ。
「でもそうすると、探して一から作る事になるのよね」
「まぁそうなりますね」
作製はまたメカネス様にお願いするか、鍛冶や彫金が出来る神霊の誰かにお願いするか。ブロンタスさんって今どこら辺に住んでいるんだろう。彼らにお願い出来れば、簡単に作ってくれそうなんだけれどな。
材料とかも、土の小妖精だから融通して貰えるかもしれない。
「……お嬢様」
「アレク、これは私の物なのだから私が決めるわ」
マローナさんはリボンの真ん中に付けられているブローチを取り外すと、テーブルの上に置く。
それを間近に見て、ジェイさんが言った。
「ん? なんだ、トゥルーエルこう言う形で力は既に渡していたのか」
「いえ、これはたまたまなんですよ」
「どういう意味?」
「あーえっとその……その、石に込められている力は、私のものでして……」
世間は狭い。元々誰に渡した物か解らないけれど、巡り巡ってマローナさんが今は付けているとは。
いや、俺もそれなりに長くこの辺に住んでいる。力の有る物品は、自然とその地の支配者の手に集まるものだし、別に特別な意味なんてない必然。
「ーっ! それってそれって運命よね」
凄い笑顔を向けられてしまった。しまったな、また勘違いが再燃してしまう。
「いや、ちが、違いますよ?」
「そっか、そうっなのねー私ずっとシン君に守って貰っていたのね!」
「いや、いや、本当にたまたまで、それにマローナさんはブローチを使った事無いですよね、それが貴女を守った事なんて無いはず」
力を込めたのは結構昔なのか、保有力の高そうな貴石に定着させているはずなのに神力はかなり薄れている。これだと発動してギリギリ一回、結界の術が発動するかなっと言う感じ。そしてその状態が、ずっと続いている様にも見えた。
多分彼女が持ってる間、何の助けにもなっていないはずだ。
むしろ危険な目に遭わせた事はある。しかも、マブカガーデスに襲われた時も、彼女を守る事は無かったんだよな。
「でも、それを持っていると安心できたわ。それがあるからって口実で、自由にさせて貰った事も沢山あるのよ。ほら、お父様って過保護でしょう」
マローナさんは口の横に手を添えて、最後の方をわざと内緒話でもする様に言った。
彼女は辺境伯家の大切な後継者。そんな肩書き以前に、マローナさんの家族や家の人たちが、どれだけ彼女の事を大事にしているかは解る。
その上で、領都の中とは言え自由に行動できるのは、至宝の魔導具があるから安心だとみんなが思っていたから、か。
例えそれが屏風の虎でも、危害を加えようという相手もそれを信じていて、今まで機能していたと。
「……やはり他を探しますか」
「いいえ、これに加工して欲しいわ」
ほんの一瞬考えてから、マローナさん簡単に決断をする。此方が心配になる程にあっさりとしている。
「むしろそうする事が、一番良い様に思うのよ」
これは運命とか……本当に違うのだけれど。
「でもこの加工をすると、持っているだけで祈りが届かず、神術が使えなくなる。ある意味呪いのアイテムになるんですよ?」
「でもブローチの強化でもあるわよね。魔術の補助具としても使えて、シン君の力を長持ちさせることが出来る様になる。此方からお願いしたいくらいだわ」
ポジティブ、眩しいくらい良い面だけ見ているな。もしもの時は手放せばいいのだから大丈夫って、不安だなぁ。
「危険な時に通常使用も出来ていないのに」
「練習するわ、今までは簡単に使用出来なかったから出来なかったけれど、シン君が居るもの使える様に練習する、任せて!」
「うー……ん」
いいの、かな。
俺はブローチと部品を……部品をアトラスさんから返して貰うと、情けない苦鳴を上げられた。まだ見たいって、流石にアトラスさんのために用意した物では無いので遠慮して貰いたいな。
「本当に良いんですね、元には戻せない可能性が高いですが」
二つを手に取り、立ち上がると最後の確認をする。
すると彼女はむしろキラキラした瞳で此方を見詰めて、強く頷いた。
「ええ、やっちゃって!」
「……解りました、それでは」
一歩離れて人化を解く。
神力を注ぎながら、ブローチの裏側に部品を押し当てる。すると、初めからそうであった様に組み合い、融合して行った。




