貸し一つ
「っと言う事で、聞いてきましたよ」
「はい、はーい!」
「待っていました!」
「……」
お二人は元気いっぱいですね。
アレクさんは何時も通り静かにマローナさんの後ろに立って、護衛を遂行しているな。それと今日はもう一人。
「とっとと教えろ」
「何でジェイまで居るのよ」
学園が終わって、マローナさんの家の来賓用の棟で集まってるからだな。
暫く留守にしていたけれど、みんな変わりは無い様で良かった。
「何かの参考になるかもしれないからな、構わないだろうトゥルーエル」
確かに、今はまだ祈りに応える事は無いだろうけど、ジェイさんも将来的には必要になる知識だろう。
普通は起こらない事みたいだけれど、だからこその情報共有だ。希なことは長い期間ではよくある事だからな。
「勿論です」
「シン君、つっじゃ、じゃあ対価貰わないと駄目よ」
「む、面倒な小娘だな」
「いや、要らないですよ、私も対価払って教えて貰ってないですし、ジェイさんも聞きに行けば普通に教えて貰えますよ」
眷属だからな。
「だそうだぞ」
「シン君甘すぎるわよ」
そんな事無いと思うんだけどな。
「……まぁ何も無しにとは言えないか、確かに今の俺では辿り着けようもない。と言うより、この先も行ける様になると思えんからな」
「それは無いと思いますが」
神霊になれば天空の女神様の眷属として、翼を授かる。宇宙空間を行くための神術も、願えば掛けて貰える、初期装備みたいなものだ。
別に戦闘職でなくても、心配する事は無い。
「ほらやっぱり」
「マローナさん、ジェイさんも大丈夫ですって」
何故かツンケンしているな、何かあったのかな、ジェイさんと。思わず苦笑してしまう。
「いや、俺はこの先には至れない、人のまま終わるだろう」
「え……」
そんな事は無いと思うんだけど、上昇はな……。俺自身どうやって成ったか解らない、努力とかそう言う事でもない気がする。
でも、聖人は人より長い寿命があるから、そのうち自然に神霊になると思うんだけど。
「取りあえず一つ貸しにして置け、どうせまた厄介な怪我人やら何やらが出るだろう」
「わ、解りました」
ま、まぁお願いする事がまたあるだろうってのは、その通りなので有り難く貸しにさせて貰おう。
「……」
「で、結局どう言う事だったんだ?」
「そうね、今はそれが一番大事よね」
「あー……何と言いますか、仕様だそうです」
「はぁ?」
うん、その反応になりますよね。俺も同じ感じだったな。
それで、メカネス様にして頂いた説明を、俺はそのままジェイさんにした。下手に変えて齟齬が出たら不味いからな。
「流動、転換、回転、力の理……結局基礎的なことに立ち返るのか」
ただ、恋とか愛とかの話はしない。
「願いではない祈りにより、それが発生したと」
「???」
「そう言う事らしいです」
「どういうことなの?」
「それでですね、マローナさん!」
「は、はい!」
ここからが本題だ、どう対処するのかきちんと話し合わないとな。
「やはりこれは非常に危険だと思うのです」
「ええ、大丈夫よあれから私我慢して、意識して祈っていないわ」
我慢って、それはやっぱり駄目だな、我慢は何時か限界が来るものだ。
「対策案も幾つか聞いてきましたので、協力して頂けると有り難いのですが」
銀の月メカネス様は、適当に保留にしている願いの件を片付けて、覆せない様にしてから絶交する事を提案していた。
でも、それはやっぱり酷いだろう。彼女の好意を知っているのに。
「ええ、勿論協力しますわ! むしろ私たちの安全のためなのだから、此方からお願いするべき事ですわね。うんうん」
しかし、その好意に応えないのだから果たしてどちらがより酷いのか、俺には解らないが。
「……先ず、保留にしている件なんですけど、早めに決めて頂きたいのです」
「? それと今回の件と関係があったのですか?」
「有るだろう。小娘からの返答待ちをしている状態だからな、声が届きやすくなってるんだろう?」
ジェイさんが、補足してくれる。
「ええ、その通りです」
「なるほど、ちょっと惜しいけど解ったわ、出来るだけ早めに考えるわね」
「すみません。本当は、何か困った時にでも使ってもらったら、良かったんですけどね」
「シン君〜好き……」
…………。
だから最初から全部説明する。
「ごほんっで、それからメカネス様がおっしゃるには、絶交するのが一番だと」
「それは駄目よ。却下です、なら願いを絶交を拒否することに使いま――」
「ストップストップ、うん。マローナさんはそう言われると思いまして、代替案をお願いしました。私も今この場を離れる訳には行きませんから」
ただそれも、了承して貰えるだろうか……。




