白亜譚
水の呼声、鳥の声、
蔓佳く巻かる透森の、清暉翳せる翠蓋の、
泪染まう、心揺る朝露。
香しき緑の、振りる夢掬い、飲み干す水。
首の翳、途う水。
果て吼ゆる轟、覇者の趨勢。
また命、滔々と流るるか。
滾々手招く泉、風誘う、
揺り渡る鏡の常世、まろび出る。
翡翠の果の子想う眼差し、
抱かれば清める羊水の泉。
実摘む鳥、
歌う頌歌、語る夢物語。
指つつき合う、嘴の愛しさ。
風伝う。
草木の守る白い花、うつらうつらと語る花。
虫来て語う、森の命。
湿土の温もり、昇り、空潤し、
瞳舐む雲、垂る蒼、魅染む夢色、終り無く。
巌這う苔のやわらかく、頬摺り問う、
此処何処、明け無き世希みて、
唇交わす妖精の慈愛、
深々と廣く、悲しく、冷たく、
水浴ぶ體、風の撫ぶこと悶う。
森の間流る水声。
褪めぬ歌、耳遠く溺る、
清む霊駆らる、
母胎に抱かる欣び、
我何処、風浚う問、
彼方より待てる、ひと振りの夢や。
読んでいただきありがとうございました。