第2話
永輝サイド
「ほら,行くぞ。」
俺はいつものように手を差し出した。朝子はまた微笑みながら俺の手を握ってきた。
「お前,今日笑いすぎじゃねぇ?何かあったのか?」
いつものことなのに少し焦ってしまう俺。それをごまかすようになぜなのかとまた聞く。
「だから,永輝が可愛いなぁっと思って。何回も言わせないでよ。」
これでも結構顔に出るタイプなんだからっと付け加えた。それは意外だった。こいつは,学校
ではクール美人で有名,おまけに頭脳明晰。とてもではないが並大抵の男子が近づけるような
女子ではなかった。なのに,当の本人がこんな事いうなんて,中身はやっぱり普通の女子なの
だと思った。そんないわゆるギャップを持ち合わせている彼女に惹かれている俺。
「お前のほうが可愛いから。」
朝子は,いきなりの俺からの発言にほんのり頬がピンクになった。しかしそれも一瞬で,次の
瞬間には元通りになり,皮肉を言い放った。しかも微笑みながら。
「永輝には負けるよ。」
俺はこんなことを繰り返してはきりが無いと思い,話題を変えようとする。不意に公園の時計
台が目に入った。時刻は遅刻寸前...。
「おい!!やべー,遅刻すんぞ!!」
俺は朝子の手を握り締め,急いで公園から駆け出した。全速力で。頑張って朝子も着いてこよ
うとする。俺たちは,これから思いもよらない事件が待ち構えている今日と言う日に向かって
走っていた。