第1話
朝子サイド
午前6時45分,誰もいないアパートの一室から出る私。誰もいないのは家族がいないから。
このことは,また別の話...。
私は毎日本を読みにある公園へ行く。大きくもなければ小さくもなく,何処にでもある公園。
表面的な理由は,ただその場所と時間が好きなだけ。でもこれも嘘ではなく事実。そして本当
の理由はまだ誰にも行ったことが無い,ていうか絶対言わない。
やっと公園に着いたのが7時8分。私は近くにある小さなベンチに腰掛け,一息吐く。何しろ
ここまで歩いてくるのは若いと言えど疲れる。
___パラパラ
私は最近はまっている本を開いた。特別有名でもない本。でも趣味にあうから好きな本。それ
から鞄から眼鏡を取り出し,かけて読んだ。それから何分たったのだろう,私はすっかり本に
夢中になっていた。そんな状態でいきなり背後から肩を誰かに触られた。でも私は驚かない。
そのことは毎日起こっているし,誰だかもわかる。言えばお決まりのこと。私は本を閉じ,
一応振り返った。後ろには勿論彼がいた。
「はよ。」
彼はそっけない挨拶をした。私はというとくすっと笑って返した。
「おはよう,永輝。」
「な,何だよ,気持ち悪ぃな。笑うなよ。」
永輝は少し顔を赤らめて言った。それを見てさらに笑う。あまりにも素直な反応に本当に同い
年なのかと時々思う。でもそんな永輝に愛しさがあるのも事実。
「フフ,別に何でもないけど。」
「嘘つけ,まだ笑ってるじゃねぇかよ...。何がおかしい?」
「いやただ可愛いなぁって思っただけ。」
「か,可愛いってからかってんじゃねぇぞ。」
私が公園へ行く本当の理由。それは...少しでも永輝といたいから。毎日公園に通ってるっ
て言ったら迎えに来てくれるようになった永輝。それはとっても嬉しかった。また永輝と共有
できる時間ができると思った。子供っぽいと言ってからかっているけど,本当に子供っぽ
いのは私。それでも愛を確かめ合っているなら,それでもいいと思っている。この生活がずっ
と続くと思っていたから...。