会長の無茶振り
「ソラを歩いてみたいとは思わないか?」
体育館が静寂に包まれる中、檀上に上った男子生徒が言い放った。その声に反応する者、沈黙を貫く者、反応は三者三様である。
その後も檀上の男子生徒の話は続く。
「――私は、ここに宣言する。ソラを歩く為、生徒会に新しい役職を設ける事を」
男子生徒が胸を堂々と張って宣言した内容に、今度は体育館中の人間がざわめき出した。しかしそれもすぐに収まり始める。
「以上、新生徒会長、高橋望の就任演説でした」
マイクを持った女生徒の小気味よい声で望と呼ばれた男子生徒の演説は終わったのだった。
足音が近づいてくる。その音は『生徒会室』と書かれた扉の前で止まると、乱暴に扉を開けた。
「会長!」
入ってきたばかりの髪を短く刈り上げた少年は、先ほどまで檀上に上がっていた望に向かって叫んだ。
「なんだい? 大原哲也庶務」
「『なんだい?』じゃないですよっ! さっきの就任演説の事です。あんなの聞いてませんよ!?」
哲也と呼ばれた少年は、食って掛かるように望を睨み付ける。そのその眼光は鋭いものの、哲也が童顔なためか今一つ様になっていなかった。ここが高校と考えれば最低でも十五なのだろうが、中学生と言われれば信じてしまえる。
「そりゃ、さっき言ったからね」
しかし怒られている望はどうだ、えらいだろと言わんばかりに胸を張っている。
「哲也くん、望くんが勝手に変えちゃうのはいつもの事だから。責任は私がちゃんととるから許してあげて? ね?」
そこに棚の整理をしていたのだろう、奥の部屋から出てきた少女がこたえた。
長く伸ばした栗毛を左右に分け、先の方をゴムで止めている。
「秋さんは会長に甘すぎます、さっきの演説だって途中で止めれば良かったんです」
「だって……そんな事したら望くん拗ねるでしょう?」
哲也と秋が言い合っているうちに、望は船をこぎ始める。
「「……」」
望が寝ている事に気づいた二人は黙って頭に手を当てるのであった。
初めまして。初投稿のくるとと言います。
800字と短く、内容なんて特にありませんが、色々とご教授下さると嬉しいです。