2章-契約-
「地球を...防衛?」
雄はあきれ顔で後ろ髪をぼりぼり掻く。
「はい、私は地球防衛軍ですので。」
防衛軍ということは、なんか宇宙人と銃を撃ったりするのだろうか。
「でも、地球は平和だよ?」
「そうですね、最近は太陽系の親交が深まっていますので。」
宇宙と親交を深めている?そんなことがありえるのだろうか。
「私たちがいなかったら、UFOと呼ばれている火星製高性能宇宙船がいまごろ地球を侵略に来てるでしょう。」
『信じられん」「本当です!」夏希という少女は羽をばっさばっさと羽ばたかせる。
「うわあ!羽が散らばるじゃないか!」
雄は膨れっ面で腰を屈めながら羽を拾い集める。
「ご、ごめんなさい。癖で」
こんな少女に聞く事なんざいっぱいあったが、雄が特に気になったのはこれだった。
「ねえ、その羽っていつ使うの?」
「この羽ですか?」後ろ指を指しながら彼女はいう。「それ。」雄は単調に返した。
「主に移動の際に。」こちらも単調にかえす。
「防衛の時には使って無いの?」
「防衛時には、日本陸軍が所持している陸空対応のロケットを使用しているので羽は使っていません」いつの間にそんなもの造ってたんだ、日本。
と、そんなことを言ってる場合ではない。
「というか何でさっきからここにいるの?あんた誰?」
「さっきも言ったじゃないですか、私は地球防衛軍の冴山夏希です」
「なんでいるの。」
「今回あなたのところに突然現れたのは他でもなーい!」彼女は急にドヤ顔になっていう。
「今回、あなた小鳥遊雄には、ある実験の対象になって頂きました。」
「何で俺の名前を!」
「あなたには性転換をしました」彼女に無視されきっぱり言われた。
「なんでそういうことするんだよ!俺はこれからどうすれば良いんだよ!何をすれば良いんだよ!」
雄はパニックと怒りで興奮して彼女に八つ当たる。
その時、妹の憂の声が聞こえた。
「お兄ちゃん!もう学校始まるよ!」
「ごめん、俺今日風邪引いたから寝とくって言っといて〜」
「へえ、お兄ちゃんが風邪なんてめっずらしいなぁ、雨降りそう」きつい妹である。
「とにかくです!」大きな声で言われて、雄はもう一度彼女のほうを見る。
「これから1ヶ月間、性転換の実験を行います。」
「い、1ヶ月ぅ〜!?」雄は腰が抜けた。
「はい、1ヶ月。」彼女はあっさりいう。
「なおせ!」
「無理です、これは私がやったのではないので。」
「くっ...!」雄は握りこぶしを震わせる。
「で、どうすればいいんだ。」
「1ヶ月、性転換した状態で、日常生活を過ごしてください。」
「できるかんなもん!」雄は地団駄を踏んだ。
「やってもらいます。」
「できないっつってんだろ!」怒りに任せて叫ぶ。
「やってもらった人には1万ドルを慰謝料として支払っています。」
「やる」金に目の無い雄は即答だった。
「ありがとうございます。」
「では、こちらの承諾書にサイン願います。」
「了解。」雄はサラサラっとサインした。
「でも、1ヶ月どうするんだ。学校はおろか、親にも顔見せれねえじゃねえか。」
「大丈夫です。その辺はこちらでなんとかできますので。」
「本当かよ...」
「じゃ試しに親に顔を見せてみます?」
「そうだな...」
雄は、羽の生えた少女、夏希とともに階段を下りた。