月を見て泣く
お月様、お月様。なんだか私、変なのです。
なんだかこの辺りがムカムカして、話をするのも億劫で、ため息ばかりが出て。
お月様、なんだか、嫌な気分なのです。言葉を口にするとトゲトゲしくて、友達や家族にも嫌な気分をさせてしまうのです。お月様、私は、嫌なやつなのです。
いいえ、お月様。なにがあった訳でもありません。私は、たまに不安で不安で仕方なくなるのです。私はこの先、どうなるのでしょうか。みんなに嫌われてしまうのでしょうか。私は、私が嫌なのです。自分に自身なんてありません。そりゃあ、いつもは、耳をピンと伸ばして跳んでいます。けれど、それは見せかけなのです。私は弱い兔です。見栄を張って頑張ろうとしたけれど、やっぱり私には無理なのでしょうか。たまに今日のように、耳を張ることすら億劫になってしまいます。
兔さん、兔さん。そういう時は私にもあります。ええ、本当ですとも。でもいつも、欠けた後にはまた満ちてくるのです。ええ、それは自然のルールなのです。
兔さん、あなたは今とても辛いのですね。あなたがいつも頑張っていることは知っていますよ。私はいつも、星々と感心していたのです。あなたは、迷いながら、自分なりに考え、必死に頑張っている。自信を持っていいのですよ、本当にあなたは頑張っています。
あなたが生きていくなかで、元気に笑えない気持ちになってしまったとき、そんなときには、泣いたらいいのですよ。どうして悲しいときには涙が出るのか知っていますか? 神様は、辛いときや苦しいとき、なにかしらエネルギーが体内に溜まっているとき、それを放出するために涙を作られたのです。大丈夫、あなたが泣いていることを咎める人なんていません。私が許しません。
お月様、どうか、私の側へ来てください。どうか、私と一緒にいてください。私は空を飛んであなたの側に行くことができません。けれど、お月様は動くことができるでしょう?
どうか、どうか、私と一緒にいてください。私は心細いのです。お願いです、お月様が一緒にいてくれたら、それ以上の幸せはありません。
どうしてですか、お月様。私をそこまで気にかけて下さっているのなら、どうか、願いを叶えてもらえませんか。なんでもいたします、私もお月様が幸せになれるように、絶対に挫けずに頑張ります。
そんなこと言わないでください、お月様。私のことが、本当は嫌いなのでしょう。
兔さん。私はあなたが大好きです。でも私は大きいから、あなたの側に行くことはできないのです。だから代わりに一生懸命、光を注ぎましょう。たとえもし迷ってしまっても、あなたの進む道に光が差し込むように。