プロローグ
初めまして。神田幸春と申します。
主人公の成長を描きたいと思います、未熟ながら。
戦いますが、残酷描写はないはずです……たぶん。
では、頑張ります!
潮の音。カモメの鳴き声。青く澄んだ海。波はとても穏やかだ。
大型フェリーの甲板の上。手すりに肘を立てて、俺、桐原なぎさは頬杖をつく。何も見えない水平線を眺めながら、俺はこれから起こることに思いを馳せる。
ちゃんとやっていけるだろうか。一人でも生きていけるだろうか。
俺はこれから青藍学園高等学校に入学する。手続きもすべて終えていて、あとは学校の門をくぐるだけなのだ。
わざわざ危険な一人暮らし。はっきり言って、俺のような特異な存在が入学しては駄目なところなのだ。それは百も承知。
俺は、今までの自分を変えるために青藍高校を選んだのだ。
船首の方を見て、その向こうを睨み付ける。この海の向こうで俺を待ち受けているのは、惨めで残酷な未来だけだろう。それをわかっていながら、立ち止まるわけにはいかなかった。逃げ出すこともできたけど、それでは何も変わらない。俺自身を何一つとして変えることが出来ない。
俺は、変わらなきゃいけないんだ。
そう意気込んでいた俺の鼻に入ってきたのは、潮の匂いではなく、ほのかな甘い香りであった。
おや? と思って、振り返ると、そこにはスカートの短い紺色のセーラー服に身を包んだ幼馴染の水橋雪乃が立っていた。綺麗な顔立ち、健康的な白い肌。肩まである黒髪を風になびかせている。俺よりも五センチほど身長が低いため、少しだけ見上げるような形になっている。上目遣いはかわいいのだが、勝気な目がいただけない。
「向こう見て、何考えてたの?」
女の子特有の高い声で雪乃が言う。俺はそっぽを向いてどうでもよさそうに答える。
「何でもねえよ」
自分を変える、そんなことを大真面目に考えていたなんて恥ずかしくて言えるわけがない。それに、雪乃は俺が変わろうとしていることに反対している節がある。今のままでいいんじゃないか、と。
「何でもない事ないでしょ? わざわざこんな寒いところに出てまで」
「何でもないったらなんでもない」
俺は雪乃の隣を通り過ぎる。この船には、中学校の時の知り合いも乗っているかもしれない。雪乃と一緒にいて、もしも変な誤解を生んでしまったら迷惑をかけてしまう。俺はそういう人間だから。
だから雪乃を拒絶した。けれど自分に構ってくれるということが、俺にはものすごく嬉しいことだった。
しばらくすると、俺の目に小さな島が映った。遠目からは小さく見えるけど、実は意外と大きな島だったりする。それは、俺たちが入学する青藍学園高等学校のある学園島。俺にとって、そこが絶望の島になるのか希望の島になるのか。
「俺は、自分を変えてやる」
静かに、しかし力強く、俺は呟いた。