強盗の言い分。
「…」
「……。」
車内には20代の男と黒いセーラーを纏った女子中学生。
何と言うか多分…絵的にかなり危ない。見られたら終わりだと思う。くそうなんで言いなりになったんだ僕…!
つい先日までコンビニでアルバイトする普通の大学生だった僕はいつの間にかコンビニ強盗の共犯になっていて、その強盗さんである少女を車に乗せて逃走中。
僕が断れなかった理由を知るには二日程遡る事になる。
「貴方私と逃げなさい。」
いきなり過ぎる少女の言葉にもちろん僕は…
「いやいや、無いでしょ!普通に考えて。」
「何が無いのよ。」
「私に言われてお金をレジから取り出した。立派な共犯じゃない。」
「いや、言ってることは間違って無いんだけど、僕は脅されてやったわけだから。」
「細かいわね、モテないわよ。」
「今関係なくないそれ。」
よし、勝ったぞ。何たってこっちには監視カメラがあるんだ!真実は全てそこにある!
「と、思ってるとこ悪いんだけど。」
「勝手に心読まないでよ。なんか折れる。」
「何、骨が?」
「違うっ!心!」
「チッ、激しくどうでもいいわよ。」
「隠そうともしねぇ。」
「貴方が大分信頼していらっしゃる監視カメラさんですが、テープ取ったから多分写って無いわよ。」
…テープを、取っ、た……?
「嘘だろおい!」
「残念だったわね。生憎お客さんも貴方以外の店員も居ないし。」
「そういえばなんで俺以外いな…」
「やだぁ、わすれちゃったんですかぁ?椎名君。」
「うわーうわー嘘だろ…中学生だから考えもしなかったよ八代さん…」
「ああ、それ偽名だから。」
「なんで通ったの面接…」
少女の言い分はこうだった。
監視カメラのデータが無い今、少女が警察に通報して泣きつけば僕は掴まって少女の方は話を聞かれるだけで終了。
「それだけじゃ無理だろ。」
「まぁ、実際ね…。でも、セーラーの胸部分が破けてたら?」
「…それは」
「私が被害者に見えるわよね?」
この歳になってまさかこんな女の子にしてやられるなんて思ってもみなかった。僕はコンビニの制服を脱いで車のキーを手にして、少女を乗せた車を走らせたと言う訳だ。
「ちょっと、少しは気にして面白い話しなさいよ。」
「んな無茶な。」
「役立たず。」
「おろすぞ。」
「叫ぶわ。こっちは貴方の名前も知ってるのよ。」
「じゃあ名前教えろよ。」
「…伊藤静香。」
「……本名?」
「ご想像に任せるわ」「素直じゃないねぇ」
「うるさい。」
とりあえず名前を知りました。