イチ オワリノハジマリニャン
「アタイ、ヤットサ……」
ドサッ!
なんなんな?
「カナちゃん、雨傘の音がうるそうてよう聞けへんかったが、今なんか音せえへんかったか?」
「ウチにはなんも聞けへんかったよ」
「あっちら辺やで」
「あっちか? 暗がりのほうか?」
「そんなん分からんけどな」
「うん、ええよ、ウチ見てきたるわ」
「カナちゃん?」
「まだ?」
「ごめんな、黒い猫やった」
「動きよるの?」
「わからん」
「生きとるかも?」
「死んどるよ」
「生きてたら?」
「行きとるんかな?」
「ほら、助けにゃあかんて……先生が言うてたやろ?」
「ほうやにゃ……でも怖いわ」
「俺さ、見えへんから大丈夫や」
「じゃさ、タケちゃんが助けたってえや」
「うん、俺に任せえや」
ふたりは己が傘にしがみつき、カナはタケの手を引いて、黒猫の下へ連れてきた。
「これや、たけの長靴の前におるで」
「そうか」
タケはゆっくりと震える手で黒猫を探り、首にかけたタオルを軍手代わりにして、抱き寄せた。
「カナちゃん、温かいよ。触ってみぃ?」
「生きとるん? 噛んだりせーへん?」
カナが黒猫の顔をそっと覗き込んだ。
「タケちゃんを見てんで」
「ホンマか?」
ニャア。
「良かった」
「タケちゃん、どうするん?」
「連れて帰る」
「そんなん無理やで」
「そん猫、もうお陀仏や」
「なんでなん? 温かやで?」
「いんや、目開けとるけどな、くたっとしとるで」
「死んだんか?」
「そうだな」
「なら……お葬式やろ?」
「んん……そやな、お葬式や」
「猫ちゃん、ウチの裏薮で、線香焚いてお別れしよか」
「ンニャ?」
「アレハアタイ?」
「マタニンゲンニツカマッタンカニャ?」




