蘆名の越後介入を
直江兼続「蘆名盛隆が新発田と結び、越後への進出を図っているのは紛れもない事実。しかし盛隆が……。」
あそこまで動かせるのが不思議とは思わないか?
藤田信吉「と言われますと?」
直江兼続「盛隆が蘆名の家督を継いでから5年が経つ。とは言え政務は養父盛氏が引き続き執っていたと見て間違いありません。その間……。」
蘆名が新発田に介入した形跡は見られません。
直江兼続「新発田が動いたのは盛氏が亡くなった翌年から。盛隆は二階堂の出であり、元は人質。快く思っていない家臣が多い中、外征に打って出るにはそれ相応の後ろ盾が必要となります。1つは織田信長。ただ織田勢は越中に居るため、新発田の権益で兵を動かせる状況にはありません。他の誰かが蘆名を越後へと導いている。それはいったい誰なのか?」
藤田信吉「……伊達でありますか?」
直江兼続「そう考えて間違いない。」
伊達家現当主輝宗の祖父稙宗は婚姻外交を駆使し勢力を拡大。その影響力は陸奥出羽を越え、越後にまで。息子の実元を上杉の養子とすべく送り込もうとした所……。
直江兼続「待ったを掛けた人物が居ます。それが……。」
同じく稙宗の息子で後継者の伊達晴宗。
直江兼続「伊達領内の精鋭100騎を越後に出す事に難色を示した事。更には娘の嫁ぎ先への伊達家からの領土割譲に家臣が猛反発。その神輿となったのが伊達晴宗。親子の抗争は稙宗が子供を送り込んだ各勢力も巻き込み奥州は大混乱。戦局が稙宗有利で推移する中、晴宗を助けたのが……。」
蘆名盛氏。
直江兼続「以来伊達と蘆名は良好な関係にあります。ただその一方輝宗には……。」
伊達が越後を掌握する寸前にまで来ていた。
直江兼続「事実も知っています。いつかそれを実現したいと考えても不思議な事ではありません。そこに……。」
織田の東進に新発田の謀反。そして……。
直江兼続「蘆名直系の男子が居なくなった事が重なりました。会津に地盤が無く、実家は弱体勢力。妻は実の妹で後継者となる男子も居る。このまま長ずれば……。」
会津も伊達家の物となる。
藤田信吉「そうなりますとますます厄介でありますね。」
直江兼続「伊達の物資は揚北を通る。今はまだ裏で糸を引いているだけでありますが、もし輝宗が本格的に越後に介入して場合。」
本庄ら揚北衆が上杉側に留まってくれるかどうか……。
藤田信吉「伊達を切り崩す手立ては?」
直江兼続「今は見当たらない。ただ……。」
輝宗と次の当主が対立したら。
藤田信吉「探ってみる価値はありますね?」
直江兼続「うむ。ただそうなると……。」
信濃を見る暇は無いな……。




