裏取り
戻って。
前田利家「柴田様。」
柴田勝家「どうした?」
前田利家「まだこれは事実ではありません。この情報は能登の門徒が持って来たもの。仮に届け先が魚津城であったとして、今の魚津城では何もする事は出来ません。」
柴田勝家「抵抗を諦めない材料になっている恐れはあるぞ?」
前田利家「確かに。他の門徒が越後に入っているやもしれません。ただ。」
柴田勝家「ただ?」
前田利家「この情報……。」
真実か否か定かではありません。
前田利家「我らを攪乱するため。包囲が緩む事を期待して仕掛けて来た可能性も十分に考える事が出来ます。」
柴田勝家「なら一気に方を付けるか?」
前田利家「いえ。それも危険であります。もし門徒が運ぼうとした情報が全て真実であった場合、魚津に感けた時間が命取りになる恐れもありますので。佐々にはこれまで通りを。松倉に居る盛政にも同様の指示を。信長様についての情報を伝えずが良策。今は……。」
我らの情報筋が持って来るものを確認しましょう。
前田利家「もし門徒の情報が正しければ……。」
「申し上げます。」
柴田勝家「どうした!?」
「織田信長様!信忠様!明智光秀の謀反に遭い、安否不明!!」
前田利家「安否不明はいつの時点だ!?」
「3日早朝であります。」
前田利家「宿所は?」
「灰燼に帰しています。」
柴田勝家「脱出出来た可能性もあるが……。」
火に巻かれてしまった恐れもある。
前田利家「明智は今、殿の安否確認に躍起と言う事か?」
「私が受けた段階ではわかりません。」
柴田勝家「明智が何故?」
前田利家「備えに怠りが無い明智の事。畿内の掌握を既に終えている恐れもあります。」
魚津城。
藤丸勝俊「『うまく捕らえられた。』
との報告がありました。」
中条景泰「捨て石にしてしまったな……。」
藤丸勝俊「いえ。当の本人からであります。」
中条景泰「えっ!?」
藤丸勝俊「『嘘から出た実』
と言うのは本当にあるのですね?驚かされました。」
寺島長資「今日は思った程、攻めてこなかったな。」
中条景泰「兄上!」
藤丸勝俊「えぇ。原因は恐らく……。」
寺島長資「ん!?信長が!!」
藤丸勝俊「はい。今、柴田の陣は大混乱の真っ只中であります。」
寺島長資「そうかそうか。あの信長でも部下にやられてしまう事があるんだな……。」
藤丸勝俊「最初は単なる悪戯でしかありませんでしたが。」
寺島長資「……ただ。」
中条景泰「如何為されましたか?」
寺島長資「これで我らが助かる事が確定したわけでは無い。」




