変わらなかった事が
出浦盛清「武田時代も森様が入られた後も収入に影響を及ぼすものが無かった。加えて私の身分は足軽同然。これ以上の下の身分は解雇であります。森様に雇用された時点で問題ありませんでした。ただ残念なのは……。」
物盗りをする機会が奪われた事。
出浦盛清「不満を申せば、新たな食い扶持を確保しなければならなかった位であります。しかしこれに付きましても……。」
中条景泰「森様は評価されていた?」
出浦盛清「美濃に戻られる際、私のような者の意見を採用していただけた事に感謝しかありません。」
中条景泰「森様が戻られた時は?」
出浦盛清「それはわかりません。わかりませんが、あの一件により……。」
多くの田畑が空白地帯となる事が確定しています。
中条景泰「行く手を遮った方々が粛清される?」
出浦盛清「わかりません。しかし多くの血が流される事に間違いありません。あっ!その対象に芋川と島津は含まれていません。」
中条景泰「それで高坂様を越後へ?」
出浦盛清「北信濃を荒らされるのは本意ではありませんので。」
中条景泰「自分の土地になる可能性もある?」
出浦盛清「それでしたら別の意味で行く手を遮りました。あの段階では、どの勢力がここに入るか定かではありませんでしたので。」
中条景泰「上杉で良かった?」
出浦盛清「北信濃の国衆が変わらず生活出来ていますので。」
中条景泰「そうなると出浦様がここで出世されるのは?」
出浦盛清「無用な軋轢を招くだけであります。」
中条景泰「かつての山浦(国清)様や先月上野から逃れて来た藤田(信吉)様のように替地を用意した方が宜しいでしょうか?」
出浦盛清「30貫もいただければ十分であります。」
中条景泰「それではこれまでの働きに報いる事が出来ません。」
出浦盛清「それでありましたら……。」
戻って。
直江兼続「出浦殿が新発田討伐への参加を願い出た?」
中条景泰「はい。」
直江兼続「正直、新発田攻めは膠着状態。出浦殿に見ていただけるのは有難い話ではあるが、信濃の事を考えると……。」
中条景泰「出浦曰く
『高坂が居ます。』
と。彼は駿河からここに戻られる途中、勝頼を見掛け合流を願い出るも……。」
武田勝頼と同行していた家臣が拒絶。
中条景泰「『何故(高坂が任されていた)三枚橋に居ない!勝手に持ち場を離れた者等信用出来ぬ!!』
と。」
直江兼続「駿河に留まっても仕方がない。最後の忠義と思い馳せ参じたのであろう?」
中条景泰「はい。」
直江兼続「しかし高坂は……。」
中条景泰「こう言っては如何でしょう。」
武田再興のため、協力していただけませんか?




