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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第二章 本編開始~正義とは~

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第47話 怠惰のアケディア

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

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ブクマをしてもらえれば更新された時分かりますし、評価して頂ければ作品が浮上できます。

 王都の貴族街には貴族だけでなく、長い刻を生きる超越者――長老衆たちも邸宅を構えている。


 怠惰ののアケディアと呼ばれし者――年の頃にして18の1人の女性がもう昼過ぎだと言うのにもかかわらず惰眠を貪っていた。


「アケディア様、アケディア様……もうとっくにお昼は過ぎてしまいましたよ」


「んあ? なんだーメロかぁー。ご飯なんていいよぉー。怠いし……」

「そうは仰いますがね……侍従長がうるさいんですよ? 叱られるのは私なんですから何とかしてください!」


「じゃあ、そんな侍従長はクビだぁー!」

「はいはい」


 ベッドの上で駄々をこねるアケディアを見て溜め息をつく侍女のメロであったが、普段の彼女を知っているからこそ本気で言っている訳ではないことくらい分かる。


 とにかく無理やり叩き起こすと着替えと洗面を済ませ、化粧を施す。

 彼女が着る衣服は貴族然としたものではなく、むしろ動きやすさを重視した軍装ようなスタイルが主である。


 怠惰のアケディアと言う二つ名からは想像もつかないほどに動き回る性格から、そのような衣服を好むのだ。

 そして魔法研究室では白衣を纏っている。

 メロは食事部屋までアケディアを引きずっていくと、またまた無理やり料理を食べさせる。


「ちくしょー美味しいなぁー。美味しいんだよなぁー。でもかったるいんだよなぁー」


 料理長は初めは様々な努力と工夫をして何とかして彼女に食事を摂らせようと頑張っていたが、アケディアがどうしても手の込んだものを食べようとしないため、自らの腕をもっと振るえるところへと職を辞そうとしていた。


 それを止めたのが、専属侍女のメロであった。

 アケディアのことを恐れる様子も見せずに、ずけずけと物を言い、あけすけな態度を取ってできるだけ普通の生活を送らせるようにした。


 今の彼女があるのはメロの存在があったからこそである。


 それにアケディアとしても別に料理長が作った料理を否定している訳では決してなく、むしろ彼の料理に誇りさえ感じているほどであった。

 今も美味しさのあまり滂沱の如き涙を流しながらもぐもぐと口を動かしていた。


 アケディアは日頃から魔法の研究をしている。

 元々は職業クラスが精霊術士であり、才能ともマッチしていたお陰で、順調に精霊魔法を極めていったのだが、魔法に関して言えば上手く扱うことができずにいた。

 使えるのはせいぜい第2位階程度の腕前でしかなった。

 とは言っても第3位階からは圧倒的に使いこなすのが困難になり、使いこなす者も大幅に減るし、第5位階ともなれば世界屈指の魔導士だとされるほどなのだが……。


 そこで彼女は別の方法によるアプローチを開始した。

 奇しくもそれはレクスがしたのと同じ方法であった。

 ただ、頑張っても才能のないアケディアは第3位階までの魔法しか扱えない。

 期せずしてレクスと同じく魔力関連の第1人者になってしまった訳であるが、研究は世界のために行っているのではなく、あくまで自分の知的欲求を満たすための行為であるため世の中に広まることはなかった。


 そのため彼女は『低位階魔法を極めし者』と言うあまり嬉しくない二つ名を得た。これに関しては別に思うところもなかった彼女は現在でも日々魔法研究に没頭しており、魔法以外のことなど全く気にしていない。

 つまりただの出不精の引きこもり陰キャの魔法バカだと言うことである。


「アケディア様、例の少年ですがやはりただ者ではないようですね!」


「ちょっと! すぐに扉を閉めてよぉー! うッ光がぁーーー!! 目がぁーー!」

「そんな大袈裟な……」


 アケディアの研究部屋は常に薄暗い。

 引きこもりと言うこともあるが、暗闇に親しみを覚えるのは、心をくすぐられるせいもある。


「ふふーん。大袈裟などではないのさ! 今日も私の暗黒なる魔力が気を高ぶらせるぅー!!」


 などと明らかにこじらせている言動が多いのだ。

 メロはそんな主人をジト目で眺めつつも少年のことをどう話そうかと考えを巡らせていた。


「で? あの少年……レクス殿のことを聞こうか……」

「あ、落ち着いたみたいですね。今日もまた何処かに旅立たれてしまうのかと心配していました」

「メロぉーーー! ちょっと心にきたよぉー今の言葉ぁーーー!!」

「それでレクス少年なんですが、探求者ギルドで特別変異個体を倒したばかりか、蜂起した盗賊団との戦いで魔法に関する高い実力の片鱗が見られたみたいですよ!」


 アケディアはニチャアと不気味に笑うと大量の本や書類が山積みされている研究用デスクに座ったまま胸を張った。自分の目は正しかったとでも言いたげな態度なので、メロは取り敢えずヨイショしておく。


「流石はアケディア様ですね。いつもいつも研究室に引きこもってばかりなのに、外の様子まで分かるなんて! これで増々症状が悪化しそうで何よりです!」

「いやぁ……そんなぁ……へへへ。照れるよメロぉーーー!」


 盛大にディスられていることにすら気付かずにアケディアは照れ照れしている。

 いつもそうやって笑っていればもっと評判が良くなるのになぁとメロは常々思っていた。誤解なきように言っておくが、アケディアは見紛うことなき美人であり、つややかな漆黒の髪と相まって見惚れるほどのルックスなのだ。


 一言で言えば残念美人である。


「レクス殿は魔力の波動と色が特殊なんだよぉー! やっぱり私の考えは間違ってなかったのよさ!」

「それでアケディア様、せっかく詳細が判明した訳ですけど何をなさるおつもりなんですか?」


「へへへ……。魔法のことで色々聞きたいなぁー! 後は世界の理についてもなのよさ!」

「魔法はともかく、世界の理……ですか? それって何を知りたいんでしょう……?」


「世界は世界だよぉー! この世界は何処かいびつなのさぁー! 古代神も漆黒神もなーんかしっくりこないんだぁ! 別の存在をびんびん感じるんだぜぇーい!」

「アケディア様? いいですか? それ絶対人前で言っちゃいけませんからねッ! 色んな人を敵に回しちゃいますよ?」


「わぁーかってるってぇ!」


 満面の笑みを浮かべてアケディアは技能スキルを発動する。


「【完全魔法大全ガトゥノウズマギア】」


 彼女の目の前に美しい一冊の書物が出現する。

 そしてしおり機能を使って目的のページを開いた。

 全て自動。彼女の思念によって制御されているのだ。



 ――完全魔法大全ガトゥノウズマギア


 これは世界に存在する全ての魔法が記載されている分厚い書物である。

 詠唱、威力、効果、現象、魔法陣、製作者など様々な知識が詰め込まれている。

 バーントアンバー色をしたアンティーク調の美しいデザインだ。



「おおー何度見ても素晴らしい技能スキルですねぇ……それに美しい! アケディア様にはもったいないくらいですよ!」

「言ったなぁ! メロの馬鹿ぁー!」


 全ては予定調和。

 メロが煽るのも。

 アケディアが手足をバタつかせて暴れるのもいつものこと。


「あっすみません。ついついうっかり」


 メロがテヘペロとばかりに舌を出して謝るが全く気持ちが籠っていない。


「ほらほら、ここにぃ、レクス殿の名前があるんだぁー! ってことはオリジナルの魔法を創っちゃったってことだよぉー? 凄くない! 凄いよのさ!」

「はいはい。では速くレクス少年に会いに行かねばなりませんね!」


「手配は任せるのだぁー!」

「ヤですよー。たまにはご自分でなさってください!」


 態と言っているのだが、アケディアは気付かない。

 メロとしてはそこがからかい甲斐があっていいなぁと思っているし、可愛げがあって良いと感じている。とても仕え甲斐のある主人なのだ。


「あたしはあるじだぞぉーーー!!」

「どうしましょうか。でもま、仕方ないなぁー」


 そして折れる振りをして、最後にアケディアがメロに泣きつくと言うところまでが決定事項。彼女はその大きな瞳をうるうるさせながら、できた侍女に縋りつく。


「信じてたぞぉーーー! メロぉーーー!」


 レクスと怠惰のアケディアの接触は後に様々なイベントを引き起こすことになると言うのに。


 肝心の本人は呑気なものであった。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。


大切なお願いです。

少しでも面白い!興味がある!続きが読みたい!と思われた方は是非、

評価★★★★★、リアクション、ブックマークなどをして頂ければと思います。

感想やレビューもお待ちしております。

モチベーションのアップにも繋がりますのでよろしくお願い致します。

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