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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第二章 本編開始~正義とは~

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第24話 義國旅団・王都戦 ①

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時と20時の2回更新です。

 スラム街を牛耳り王都で強い影響力を持っていた〈義國旅団ユリスティオ〉勢力が何故か壊滅した。


 スラム街にあった本拠地は壊滅しており、人影すら見当たらなかったと言う。


 この情報は直ちに王都の貴族街の邸宅にいたローグ公爵の耳に入ることとなった。彼はすぐに王都内の〈義國旅団ユリスティオ〉の残存戦力を叩くべく討伐任務の総指揮官に就いていたガイネルに賊徒殲滅を要請。

 天龍騎士団ドラゴニク・スフィアの騎士も貸し与え王都から完全に叩き出そうと行動を起こした。


 もちろんこれはカルナック王家の勢力が衰退した後のことを考慮した、影響力の拡大のためである。要請と言う名の命令を受けたガイネルたちはすぐに行動を起こし討伐隊の編成に入った。


「ガイネル、聞いたか? ようやく王都から〈義國旅団ユリスティオ〉を一掃する時がきたようだな」


「うん。僕もそれを聞いてホッとしたよ。何故か彼らに手を出すのは禁止されていたからね……」


 王国各地に勢力を広げている〈義國旅団ユリスティオ〉であったが、最大の戦力を持つ王都の組織には手を出せずにいた。

 これは貴族たちが彼らから大きな恩恵を受けていたことで、組織もその庇護下にあったこと、規模が大きかったこと、捕らえた際の悪事の証拠から貴族たちの所業が芋づる式に明るみに出て多くの家に損害が出かねないことなどが理由として挙げられる。


 ガイネルと腹心のシグムントが喜び合っている中、中等部の大会議室には次々とメンバーが召集されていた。オドラン伯爵家のバウアー、没落貴族のガストン・アウァールス、レクスである。

 何と中にはローグ公爵家の3男、古代竜の血に連なる者、アストル・ド・ローグの名もあった。今回の戦いの重要性に感づいた者たちは大いに士気を上げる。


「チッ……気が進まなねぇのよ俺は……」


 バウアーとしては名を上げたいのは山々なのだが、ガイネルの指揮下に入るのはやはり何処か抵抗がある。

 だが相手は有名な反貴族組織〈義國旅団ユリスティオ〉でありこれ以上の舞台はないと思える。こんな感じで1人複雑な心境のバウアーだが、ガイネルからすれば全く眼中になかった。


 ただ剣の腕を買って呼び出したに過ぎない。

 要はバウアーの一方的な劣等感と言える。


「ふん、平民の分際で貴族と同列に戦ったとか抜かすテロリストが……思い上がったその鼻っ柱を叩き折ってやる!」


 ガストンの鼻息は荒い。

 彼は〈義國旅団ユリスティオ〉の所業について深く知らないが平民が貴族と並び立とうとしていること自体が気に喰わない。

 せいぜいアウァールス家再興の踏み台になってもらおうと考えている。


「王都の賊は殲滅か……思い切ったな。エレオノールは出てくるんだろうか」


 スラム街にいる〈義國旅団ユリスティオ〉を壊滅にまで追い込んだ本人としては別にそれでも良いと考えていたが、気になるのはエレオノールとその兄で団長たるギュスターヴの存在である。レクスが今後どうなっていくのか、ストーリー通りにガイネルのクランに倒されるのか、そう考えているとガイネルの声が響き渡った。


「突然の召集にもかかわらずよく集まってくれた! まずは感謝します! 昨晩〈義國旅団ユリスティオ〉の本拠が壊滅して大損害を被ったとの情報が入った。ですがまだ生きている拠点はあります。我々はこの好機を逃さず彼らを潰すつもりです。位置はすべて把握しているので全てを襲撃して王都から一掃してしまいましょう!」


 編成が行われた後、作戦会議に移る。

 王都内に残る拠点は4つ。

 拠点にいる者は念のために全員捕縛、旅団員であると分かれば殺しても構わないことに決まった。


 その内の最大拠点と思しき場所をガイネル本隊が襲撃することなった。

 部隊にはバウアーとガストン、レクスも一緒だ。

 当然シグムントとシグニューもいる。


 ちなみにゲームでは従騎士から始まるガイネルとシグムントだが、この世界での職業クラスはガイネルは封魔騎士ルーンナイト、シグムントは重戦士ウォリアーであるらしい。

 何故、このような変更になっているのかは不明であるが、今考えても無駄であると判断しレクスは考えるのを止めた。


 今はまだ暗闇が王都を支配しているが、間もなく空が白み始める頃合いだ。

 夜が明けて午前中になれば本拠が壊滅したことは知れ渡るだろう。

 残党が油断している間に勝負を決しなくてはならない。


 ガイネル隊が向かったのは高級区画にある高級娼館であった。

 そこに王都支部のNO2がいると言うことだ。

 魔写で顔は確認済みで名前はヒース。


 高級地区であるだけでなく早朝と言うこともあり、周囲に人通りはほとんどない。


「よし。突入する。僕たちは正面から、バウアーたちは裏手からだ。館内にいる者は全て無力化する。敵は悪の組織なんだ。容赦は不要! 行こう!」


 天龍騎士団ドラゴニク・スフィアの騎士たちが鉄門をこじ開けようとする。

 しかしかなりの堅固さで中々開けることができない。

 このまま手をこまねいているのもどうかと思ったレクスは魔法でぶち破ることを進言した。


「ここはてっとり早く魔法で破壊すべきでは?」

「音で気付かれてしまう」


「どれだけ時間を掛けるつもりですか? どうせ夜が明ければ気付かれます。破壊と同時に進入し迅速に捕らえる方が建設的では?」

「そうか……そうだね。そうしよう。頼めるか?」


 レクスは快く承知すると魔法陣を展開する。


「3rdマジック【轟火撃ファラ】!」


 凄まじい轟音が耳をつんざくと共に建物全体が揺れる。

 これで起きない者などいないくらいの衝撃だ。


「突入するッ!」


 ガイネルを先頭に開いた大穴から内部へ進入すると、案の定、部屋から慌てて飛び出した客が見える。

 魔導具のぼんやりした灯りが廊下を照らしているが視界は良くない。

 光魔導士が【光球ライト】を周囲にバラ撒いて視界を確保していく。

 取り敢えず客と思しき人物たちの捕縛は騎士たちに任せ、ガイネルは一部屋ずつドアを蹴破って確認していく。


「何だ!? 今の音はッ?」

「おい。何があったッ!? 凄い音がしたぞ!?」

「な、何者だッ!? 盗賊か!? 護衛を呼べ!」


 娼館にいた者たちが部屋から次々と吃驚びっくりした顔を出す。

 フロントからも男たちが現れ事態を把握しようと動き始め、徐々に喧騒が大きくなっていく。


「大人しくしろッ! 我らは天龍騎士団ドラゴニク・スフィアだ! 〈義國旅団ユリスティオ〉を捕らえに来た! すぐに突き出せ!」


 そこへガイネルが馬鹿正直に名乗りつつ、〈義國旅団ユリスティオ〉の名を出してしまった。

 これで逃亡に走る者が出てくるだろう。

 出入り口は表門と裏門だけとは限らないので取り逃がしかねない。


 レクスはガイネルの考えなしさに少し苛立ちを覚えつつも、見かける者全てに当身を喰らわせて気絶させていく。

 恐らく動きが鈍い者は金持ちや商人などだろう。

 中には貴族や高級取りの探求者ハンターもいるかも知れない。


天龍騎士団ドラゴニク・スフィアだと? 一体どうなっているッ!!」


 抜き身の剣をぶら下げた男が休んでいた部屋から出てきて叫んでいるが、向かってくるガイネルを見て臨戦態勢に入った。他にもチラホラと武器を持って飛び出す者はいるものの、大半が逃げ出そうとしている。

 向かってくるだけで〈義國旅団ユリスティオ〉のメンバーとは判断できないだろう。

 賊の侵入だと勘違いして撃退しようとする探求者がいてもおかしくはない。

 天龍騎士団ドラゴニク・スフィアの名前を出されても信用するかまでは分からないのだ。


 レクスの予想通り、廊下では斬り合いが始まってしまい、あちこちから武器がぶつかり合う澄んだ音が聞こえてくる。

 そのせいで騒ぎは広がり混乱は加速していく。


「(やれやれだ……結局、本編からは逃げられない……まぁ本拠を襲撃しといて今更か……)」


 斬り掛かってきた男と数合、剣を交えるが相手にもならず大きく1歩踏み出して懐に入ると当身を喰らわせて昏倒させた。

 それを見ていた客らしき男たちは両手を上げて無抵抗の意志を示す。


「レクス、後、何処どこにどれほどいる?」

「この奥に5人。2階にも15人ほど、3階には4人いるな。後は地下室があるみたいでそこに20人ほど詰めている」


「分かった。最上階はVIP待遇の豪華な部屋があるらしい。僕はそこへ向かう。地下にも騎士を送ろう」

「いや、地下の方は俺がいきますよ。室内に魔法を放りこんでやれば片は付きます」


 魔力波による検知は360度、三次元の全方位を索敵できる上、対象の魔力の強弱すらも把握できる。魔力を持たない者や、その出力を抑えている者にもちゃんと反応するので使い勝手が良い。


 ガイネルはシグムントと共に階段の方へ走り去っていった。

 それを見てレクスは地下室へと向かうことに決める。

 ここが拠点だと言うのなら、地下室に籠って様子を見ている可能性が高い。

 地下で多くの反応が固まっている辺りに入口があるはずだと考えたレクスが走る。


「(恐らく位置的に考えるとフロントの奥だな。地下室に通じる入口があるのは。偽装とかしてあるかな?)」


 フロント前まで戻ったレクスの姿を見て用心棒らしき男たちが、雄叫びを上げながら襲い掛かってきた。

 人相的に考えるとそこらのゴロツキだが、もちろん偏見である。


「この天龍騎士団ドラゴニク・スフィアの名を騙る賊がッ! 好き放題できると思うなッ!」


「俺は違うよ。だがさっき聞こえたろ? 〈義國旅団ユリスティオ〉を捕らえに来たってのは本当だ」


 立ち塞がる男たちが明確に〈義國旅団ユリスティオ〉の団員だと分かるなら魔法で一気に皆殺しにすれば良いのだが、素性が知れない以上その手は使えない。

 レクスだってなるべくなら殺したくはないのだ。

 本当だぞ!


「〈義國旅団ユリスティオ〉の連中なんかいねぇよ! お前ら誰かに偽情報でも掴まされたんじゃねぇのか!?」


 口々に否定してくるがレクスを攻撃する手は止まらない。

 剣でそれをいなしながら、流れるような動きで男たちを翻弄する。

 隙があれば当身を喰らわせたり、左拳で黙らせたりして無力化を図る。

 こうした戦い方ができるのも全ては剣王レイリアとの稽古のお陰である。

 実力差がないとこうはいかないだろう。


 フロント前を瞬く間に制圧したレクスは更に奥にある部屋へと押し入った。

 かなりの大部屋になっており、豪奢な造りになっているがそこには人っ子1人いない。

 普段のたまり場といったところか。

 再度、魔力波を放ちながら地下への扉がないかを丹念に調べる。

 脳内に反応が返ってきて人が固まっている場所が判明する。

 恐らく入口付近で様子を外の窺っているのかも知れない。


 幸いなことに偽装すらされていないが魔法による結界が張られているようだ。

 力押しで破ろうかと魔力弾を当ててみるが、中々の強度で無理だったので威力の高い魔法を選んでぶっ放す。


「6thマジック【重弾丸マグナム】」


 その高威力は如何なく発揮され扉は破壊されてその瓦礫が地下へと落ちていく。

 効かなかったら魔力解析から始めて魔力分解をしなければならなかったので、面倒事が回避できたのはラッキーだ。


 レクスは魔力障壁を展開し地下への階段を降り始めた。 


 〈義國旅団ユリスティオ〉の王都幹部ヒースがいるのか、期待を抱きながら。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時と20時の2回更新です。

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