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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第二章 本編開始~正義とは~

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第4話 王都への途上で

いつもお読み頂きありがとうございます。


本日は12時の1回更新です。

 テッドの怪我が治りつつあったのと、ロードス子爵家のバックアップが得られることになりレクスは王都へ戻ることとなった。


 来年になれば小等部は卒業となり、レクスは中等部に進学する。

 これは家族で話し合って決めたことだ。

 レクスは学園のレベルの低さに失望していたため進学する必要性が感じられなかったのだが、両親が強く勧めてきたこととセリアが学園に入学することもあり説得されてしまった形だ。お金のことは心配するなと言われたが、せっかく12歳になったことだし探求者ハンターになったりアルバイトをしたりするのも良いと考えている。


 王都に戻ったら忙しい日々が待ち受けているのは間違いない。

 竜神裁判の捜査に協力させられるだろうし、休んでいた剣王レイリアとの剣の稽古もある。小等部の授業は楽勝なので置いておくとしても中等部の受験の準備もしなければならない。平民への知識や技術の流出は最低限に抑えられているようなので、中等部の授業内容もお察しレベルである可能性は高いだろう。


「盗賊団だぁぁぁ!! 右手から来るぞッ!!」


 レクスの思考を中断させたのは前方の警戒に当たっていた探求者の大音声だいおんじょうであった。駅馬車の集団をまとめていた御者長は直ちに3台の馬車を停車させる。

 同時に反応したのは護衛の探求者たちと傭兵団のメンバー、そしてレクスである。乗車していた人々からあちこちで悲鳴が上がり始めた。


 街道の右手に広がる小さな森の中から武装した集団が飛び出して来たのだ。

 如何いかにも盗賊然とした姿だが、どこか訓練されたような動きを感じてレクスは不吉な予感を覚えた。


「あれは……? 誰かを追っている?」


 周囲の護衛たちが盗賊団を迎え討つ中、レクスは逃げる少女の姿を見つけたことで確信に変わる。


 襲撃者は駅馬車狙いの盗賊ではなく、あの白い少女の追手であると。


 幸い白い少女はレクスの方へ向かって走ってくる。

 体力がないのか、はたまた長い距離を裸足で逃げてきたからなのか、ふらついているのが遠目にも理解できる。


 襲撃者――もう盗賊とは呼ばない――が護衛たちと戦っている内に保護すべくレクスは彼女に向けて走り出した。身体強化であっと言う間に少女の下に駆け寄ると背後に庇って迫りくる3人の襲撃者に魔法を放つ。


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】」


 少し小さくした弾丸の乱射によって3人は体を吹き飛ばされて次々と大地に倒れ伏す。

 事情を聞きたいところだが、護衛たちは明らかに押されている。

 いや、押されまくっていると言っていい。


 レクスは少女を1台の馬車に乗せると大丈夫だから大人しく待っていてと優しく声を掛けて、助けに向かう。

 あちこちで戦技や剣技、魔法の言葉が飛び交っており激戦になっていたのだが防御の一角が崩れる。それを支えるためにレクスは一気に距離を詰めると剣を抜き放って頭から叩き斬った。


「何ッ!? ガキのくせになんつう膂力だッ……魔導士を何人かこっちに回せッ!」


 レクスの剣の腕を恐れたのか、男は魔導士に助けを求めたが――甘い。

 中・遠距離は彼の間合いだ。


 だが――


「3rdマジック!【轟火撃ファラ】!」

「3rdマジック!【雷電ボルタ】!!」

「3rdマジック!【空破斬刃エアロカッター】!!!」


 おいおいおいおい!

 まるで太陽のプロミネンスのような大火球が迫る!

 そしてレクスを中心にプラズマの放電現象のようないかづちがほとばしる!

 更に断頭台の鋭利な刃よりも斬れそうな三日月の形をした衝撃波ソニックブームが発射される!


 その反則だろと言いたくなるような暗黒魔法の三連撃が容赦なくレクスを襲った。


「うおおおおおおおおおおッ【魔力障壁】!」


 まさに紙一重のタイミングで魔力障壁を展開したお陰で3つの魔法は阻まれてレクスまで届かない。

 魔力を多めに設定したのが良かったのかも知れない。

 そしてすかさず魔法を解き放つ。


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】!!」


 心臓の音が聞こえてきそうなほど高鳴っている。

 これは……恋?

 んな訳ねーだろ!

 と1人ノリツッコミをするレクス。


「(あ、あぶねぇぇ! 死ぬとこだったわ!)」


「なんだとッ!? 必殺のタイミングだぞ!」


 手加減なしの魔力の散弾になぎ倒される3人を見て目を剥く男。

 心から魔力操作の訓練をしてきて良かったと思えた瞬間だ。


「知るかよ、このXXXX(ピー)野郎ッ! 6thマジック【重弾丸マグナム】!!」


 その強力な一撃は寸分たがわずに男の顔面に直撃。

 胸元辺りまでが消失したかのように弾け飛んだ。


 ようやく一息ついて周囲の状況を確認するが、かなりの数の護衛が倒れ伏している。


 やはり強兵――


 味方の数はもう数えるほどしかいない。

 レクスの考えた通り、襲撃者たちは乗客たちを襲う気配を見せていない。

 狙っているのは少女を押し込めた馬車。

 彼は適当に援護の魔法をバラ撒きつつ、少女の元へと戻る。


「(正規の軍みたいな連中が狙っている少女なんて問題事の気配しかしない……でも助けないのも俺の正義に反する。と言うか下手すりゃこっちがられる!)」


 襲撃者は少女をさらうか殺すかした後は必ず目撃者を全て始末するだろう。

 となれば逆に全員殺すしかない。

 レクスは少女を【魔力障壁】で包み込むと戦線に加わる。


 斬りかかってきた女の剣を弾くと余勢をかって一気に攻めに転じた。

 ひたすら連撃の嵐を見舞う。


 剣を何合か交えた後、レクスは女剣士の右腕をぶった斬り、その光景を信じられないと言った様子で目を見開く彼女の首を斬り飛ばした。

 すぐに次の相手を探そうとすると大声で襲撃者の男が話し掛けてきた。

 明らかにレクスに向けた言葉だ。


「おう。ガキ。若いのに大したモンだ。お前は強ぇ。それは認めよう。俺たちの目的はそこの白い修道女シスターだけなんだ。そいつを渡してくれりゃあお前らには何もしない」


 この場に立っている者はほとんどいなくなっていた。

 護衛は既に全員倒されたようで、残るは襲撃者側の6人のみ。


「お前ら何処どこかの正規兵だろ? どうにもキナ臭い気がする……」


 分かり易いもので一部の襲撃者の雰囲気が明らかに変わった。

 男もそれに気付いたようでふうッと溜め息をつくと仲間に向けて殺気立つ。


「やれやれ……修行が足りてねぇな。お前ら後でシゴキな?」


 動揺が広がる。

 それを無視して男は再びレクスに向き直った。


 だが――何故か男の背後から女の声がした。


「後? 貴様に後があると思っているのか?」


「あ?」


 男が慌てて後ろを振り向くが……遅い。


【神聖なる破邪の雷撃、今こそ悪を滅さん! 轟け! 雷轟神聖撃らいごうしんせいげき!!】


 男を中心に数名の襲撃者を巻き込んだ『聖剣技』が見事に決まる。

 神聖なる天から落ちる雷撃の直撃を受けた者たちは一撃で膝から崩れ落ちると、その身を大地に横たえた。


「がぁぁぁぁ!! テ、テメー……1人で追って来てたのか……」


 耐えたのは首領とおぼしき男のみ。

 これで襲撃者は後4人。

 聖剣技を放った女騎士は相当な手練れのようで、襲撃者たちの顔色が変わる。

 男も息が荒くダメージは深いようだ。


「チッ……ここまでだ。退くぞッ!」


 男がそう叫ぶと一斉に生き残った者たちは馬車の手綱を斬って馬を解放すると王都方面に逃亡を図った。

 一気に距離が開いていき、聖剣技の射程距離から離脱していく。

 今から馬で追っても逃げきられるだろう。

 逃げる襲撃者を遠目に女騎士はボソリと呟いた。


「逃がしたか……」


 彼女はそう言うがまだまだ魔法の射程圏内だ。


「6thマジック【狙撃弾スナイプ】!」


 遠くで1人が落馬するのが見えた。

 レクスが放った魔力の弾丸がどこかに命中したのだろう。

 それを見た彼女は目を見開いて驚いている。


「凄いな……あんな魔法があるのか……はッ! 殿下! 殿下はどこだッ!」


 感心したのも束の間、彼女はすぐに慌て出すと誰かを探し始めた。

 もちろん誰かと言われれば、あの逃げてきた少女なのだろう。

 レクスはすぐに少女がいる馬車へと案内し、展開していた魔力障壁を解除した。


「おお! よくぞご無事で……グランデリア様……」

「苦労を掛けました。オリヴィエ……それと貴方。名はなんと言うのかしら?」


 少女――グランデリアがまじまじと目を見てそう言うのでレクスは取り敢えず名乗っておく。

 やんごとなき方なんだろうなと簡単に予想が付く。

 ここまでくれば誰にでも分かる。


「ふむ。レクス・ガルヴィッシュ殿か。ひ……グランデリア様を助けて頂いて感謝の念に堪えない」

「いえ、悪人顔が幼気いたいけな少女を追っていたら助けますよ。問題ありません」


 関わると何かに巻き込まれそうなので、突っ込んだ質問などはしない。

 絶対にだ。

 確かに裏からストーリーに関わろうと覚悟を決めたが、これはどう見ても表に絡んでくる事件に違いない。


 レクスの勘がそう告げていた。


「彼女は修道女シスターでな。敬虔な古代竜信者だ。あー我々は密め……じゃなくて修道院を守護する者でな。知っているであろう? 近くのファトゥム修道院だ。そ、そうだ! 私も名乗っていなかったな! 私の名はオリヴィエ・ラグランジュ。聖騎士を務めている」


 レクスは笑みを顔に張りつけたまま、何を言ってくれてんねんと内心ボヤいていた。どうやら優秀な彼女はポンコツ聖騎士でもあるようだ。


「それを聞いて納得しました。先程の聖剣技は大した威力でした。貴女が来なければられていましたよ」


「む? そうかな? 貴殿の魔法?も凄かったぞ!」


「ええ、流石は聖騎士様だと思いました」


「いやいや、しかし魔法とは凄まじいものだな。いや貴殿が凄いだけか」


「私などまだまだ若輩者ですから(もういいからとっとと修道院に戻ってくれよ……)」


「謙遜することなどないぞ! 誇ることは悪いことではない!」


「……」

「……」


 しばらく褒め殺し大合戦が繰り広げられたがグランデリアの一言で強制終了した。レクスはようやく解放されたとホッとしたが、後の対処を考えると頭が痛くなってきた。

 生存者を助け出し回復させ、犠牲者は弔わねばならない。

 志半ばで倒れた者もいるだろう。

 無念を抱きながら死んだ者もいるだろう。

 仲間を失って嘆く者もいるだろう。

 そう思うと心まで痛くなる。


「では事後処理がありますので。生存者を助けないといけませんし」

「そうだな。修道院に戻って回復魔法を使える者を連れて来よう。すぐに私の仲間も来るだろうし呼びに行かせる」


 こうして恐らくグランデリアのせいで起こった襲撃の犠牲者は修道院で弔われることとなった。彼女はこの場で犠牲者の安寧のために神に祈りを捧げている。

 生存者はほとんどいなかったが回復魔法のお陰で助かった者は皆、感謝しているようであった。レクスも回復魔法で傷を癒して回った。


 この場所がファトゥム修道院の近くで良かったのか。

 巻き込まれたと考えると良くなかったのか。

 どう受け止めれば良いのかまだ良く分からない。


「(まさか、いきなり事件に巻き込まれるとは……でもできる限り助けることができたし、やれることはやった……と思いたい。敵も強かったな。俺ももっと強ければ護れた人も増えただろうに……残念だ。でもまぁ疑問点だらけの襲撃だったけど深く突っ込まなかったから大丈夫だろ……)」


 レクスは気付かない。

 もうとっくに巻き込まれていると言うことに。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。


明日も12時の1回更新です。

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と思ったらちゃんと戦後処理してた。すまぬ。
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