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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第一章 ゲーム世界のモブに転生して

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第49話 堕ちた聖者ジャンヌ ③

後2話で本編突入です。お楽しみに。

いつもお読み頂きありがとうございます。


本日は12時の1回更新です。

「もういい……約束などいい。2人共殺す! 10thマジック【絶対神域パルフェ・フィル】」


 上半身だけになりながらも目を血走らせて吠えるジャンヌ。

 とは言え、既に体は再生を始めていたし、またしても絶対神域が展開された。

 彼女から感じる力がなんであるか?

 レクスにはそれが分かっている。

 それによって彼女の神聖力がどうなってしまうのかも。


「貴様らはよくやった。それは褒めておこう。だが……貴様らは時間を掛け過ぎた」


 確かに苦戦した。

 その強大なる神聖力はレクスたちを倒すには十分な力だった。

 しかしレクスは冷たい声で言い放つ。


「掛け過ぎたのはお前だよ。こっちこそ時間稼ぎなら間に合ってる。お前はもう死ぬだけなんだよ」


「はははははは! 時間を稼ごうとしているのは貴様の方だろう。知っているか? 知るはずがないよなぁ……あたしが聖遺物を持っていることを。その名を神の想い出(ロギア・メメント)と言う。そう。あの神の想い出(ロギア・メメント)だッ! 既に力を解放した。体は再生し、あたしの神聖力は最早、天をも衝くだろう」


 得意げに笑う目の前の哀れな女に哀憐あいれんを感じざるを得ない。

 レクスの目に映る感情に気付いたジャンヌは上機嫌だったのが一気に冷めたようで死の宣告を告げるべく口を開いた。


「不愉快だ。すぐに魂の牢獄へ閉じ込めてやる。死ね! 異端――」

「お前はこの世界の理を理解していない」


 この世の理?

 その言葉を聞いたジャンヌの心に何故か不安が芽吹く。


「な、何だって……? ハッ!! ……時間稼ぎのつもりか?」

「お前は重大な勘違いをしている。神の想い出(ロギア・メメント)は神聖力を高める物じゃない。そもそも根源の力が異なるからな……」


「もったいぶった物言いをするなッ! 貴様に何が分かると言うんだッ!」

「言っただろ? 神の想い出(ロギア・メメント)の力の源は古代神。その力は()()()だ。使用すればむしろお前の神聖力は弱体化するだろう」


「何を言っているのか理解できないな。神聖力なのだろう? 何が違うと言うのだ」

「まぁこの世界の奴に言っても分からないことさ。じゃあサヨナラだ」


 この世界だと?

 こいつは何を言っているんだ。

 ジャンヌは理解が及ばない。

 しかし彼女はそれをすぐに身を持って理解することになる。


「な、何……だと……?」


 急速に体内の神聖力が消失していくのを感じる。


 神聖力が()()()()()()()()

 と同時に溢れ出した新たなる力さえも。

 まるで共食いのように。


 ジャンヌはただただ畏れ、恐怖した。

 神よ! 敬愛する黄金竜アウラナーガよ!

 何故、あたしの中から神聖力が消えていくのか?

 古代神?

 聖遺物は古代神の物?

 それの何がいけないのか。

 同じ神聖力ではないか。

 それともあいつが持ってきた物は神の想い出(ロギア・メメント)ではなかったのか?

 騙された? いやそんなはずはない。

 そんなことをしてもあいつに利などない。

 ジャンヌの思考は暗い部屋の中に閉じ込められて抜け出ることができずにいた。

 ただただ茫然と立ち尽くすのみ。


「終いだ。セリア。行こう」

「ええ……」


 先に絶対神域を破った時と同様に魔力をリンクさせて再び剣を突き立てる。

 1本の剣を2人で力強く握りしめる。

 攻略法は既に確立した。

 ならば後は同じ現象が繰り返されるのみ。


『行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 またもや呆気なく絶対神域が崩壊していくのをジャンヌは茫然と見ていた。

 立ち直るのを待ってやる必要など――ない。


「【気合一閃】」


 その瞬間、2人の姿が掻き消える。

 魔力を同期させた最大出力の『騎士剣技』は一瞬でジャンヌの首を刈り取った。


 あまりにも呆気ない最期だった。




 ―――




 死力を尽くした関所での戦いはレクスたちの勝利で幕を降ろした。

 この場で仰向けになって寝てしまったらどんなに気持ちの良いことだろう。

 そんなことも考えたが、今は何よりスターナ村に戻ることが第一だ。


 ドミニクに先導され、セリアが後に続く。

 レクスはもちろんセリアの後ろに乗っている。

 騎士たちはケルミナス伯爵家の騎士たちを捕らえて連行していた。

 この件に直接、ケルミナス伯爵が絡んでいるとしたら。

 そう考えると念のためでも逃すことはできない。

 もしかしたら両家の確執を解消することもできるかも知れないのだ。


 数日後――


 1つの村を経由して無事一行はスターナ村にたどり着いた。

 レクスの腕の中には白く輝く水晶のような物が抱き抱えられている。

 先触れを出したせいで多くの人が出迎えに南口へと集まっており押し合い圧し合いして騒がしい。

 村人だけではない。

 ロードス子爵家の騎士団。

 更にはロードス子爵家当主のディオンと夫人の姿まであった。


「父さん、母さん……リリスにカインも……ただ今帰りました」


 レクスは馬から降りると家族との再会を喜び合う。

 若干、足下がふらつきながらも皆へ近づく。

 テッドはまだ歩けないので態々(わざわざ)運んでもらったらしい。

 皆、安堵した表情を浮かべてレクスを迎え入れてくれた。


 温かい……。

 レクスは今、家族との絆、そしてせいを強烈に実感していた。


 セリアも父親であるディオン子爵の胸に飛び込んでいた。

 正直、ヘトヘトだが疲れより喜びが勝っていた。


「お父様! お体の具合はよろしいのですか?」

「ああ、セリアのことが心配で具合の悪さなど何処かへ吹っ飛んでしまったわ」


 顎鬚あごひげを生やして豪快に笑う子爵に夫人は心配そうな視線を送っている。

 ずっと寝込んでいたせいで、かつての優れた体格も今では痩せ細ってしまっているが元気そうに見える。


「お母様、ただ今戻りました。ご心配をお掛け致しました」

「無事で何よりです。あまり心配させないでちょうだい……」


 子爵夫人にとっても1人娘であるセリアは目に入れても痛くないほどの存在である。その目からは涙が零れ落ちていた。


「大体の事情は聞いたが、詳細が分からぬ。セリア、疲れているだろうが説明してくれぬか?」


 セリアは疲れた様子をほとんど見せずディオンにこれまでの経緯を話して聞かせる。

 魔力を使い果たしたレクスも息も絶え絶えになりながらもそれに付き合った。

 場所はガルヴィッシュ家の屋敷である。

 大講堂はまだ怪我人が多く集められているため使えない。

 集まったのはディオン子爵、子爵夫人、ドミニク、テッド、セリア、レクス。

 あとは住人たるリリアナとリリスだ。


「ふむ。ケルミナス伯爵のレクス殿への執着心は強い。私も今回の件でその実力のほどは理解したつもりだが……。伯爵はレクス殿の実力を知っていたと言うのか……? しかし何処でだ。それとも潜在能力があると見抜いていた?」


 ディオン子爵が腑に落ちないと言った表情をしているが、レクスも同意見だ。

 たかが11歳の暗黒導士で小さな村の平凡な男子。

 敢えて挙げるとすれば、騎士爵位の家に生まれたことと王都の王立学園に通っていることくらいのものだろう。

 もう1つあるとしたらレクスが転生者であることくらいだが、そんなことが分かるとは思えない。


「ご当主様、私はただ戦闘を見ることしかできませんでしたが、レクス殿の才能と実力は紛うことなく本物です。しかも魔法だけでなく剣に関しても」

「し、しかし魔法でそんなことができるのですか? 縛られていた魔法を破壊しただけでなく高位魔法の障壁すらも破壊したと言うのが何とも……」


 テッドは魔法に関する知識は少ないので事実を事実として認められずにいた。

 混乱する彼にセリアは高度な技術であることは間違いないと伝えたが、彼女自身も魔導士ではないので家庭教師から得た一般的な内容から判断したに過ぎない。

 この場、全員からの視線がレクスに集中する。

 どの目を見ても説明しろと書いてある。


「えーえっと……まぁ魔力の性質を理解していれば可能なことです。鍛えれば誰でもできると思います……多分」


 レクスの脳裏に王立学園魔導科科長であるテレジア・コルノートのことがよぎる。

 彼女がこの場にいたなら理解を示してくれただろうに。

 どうやらここには魔導士はいないらしい。


 しかし下手なこと言ってしまうのもマズい気がする。


 レクスはどう説明するかよりも、どう誤魔化そうかと必死に考えるのであった。

ありがとうございました。

中ボス討伐完了。

また読みにいらしてください。


明日も12時の1回更新です。

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