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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第一章 ゲーム世界のモブに転生して

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第48話 堕ちた聖者ジャンヌ ②

もうじき本編突入なのでお楽しみに。

いつもお読み頂きありがとうございます。


本日は13時の1回更新です。

「クソがぁ……この異端者がぁぁぁぁ!!」


 ジャンヌはこれまでその圧倒的な神聖力を使って目の前に立ち塞がった者は全て殺してきた。

 浄化したアンデットなど数えきれないほどだ。

 特に暗黒系の職業クラスを持つ者はいたぶって殺した。

 彼女が歪み始めたのは無実の罪を着せられて教会を追放された頃。

 

「何故だ何故だ何故だぁぁぁ!! どいつもこいつも裏切りやがって! そんな目であたしを見るなッ!」


 15年前に勃発したジオーニア王国、キルギアとの戦争――不浄戦争トゥレイ・ウォーの最中に不浄の大森林から大量の魔物が突如出現した。

 横っ腹を突かれることとなった王国はアングレス教会に大森林の浄化を依頼。

 逆に浄化した余勢を駆って両国の側面を突く計画が立てられた。

 先の50年戦争で威信が低下していた教会はその要請を承諾し、教皇自らが浄化に乗り出した。


 正義に燃えるジャンヌはその時に大森林を浄化する主力となり魔物を殲滅するも、教皇グリンジャⅦ世の不手際によりアングレス教会は浄化に失敗することとなる。それが原因で王国もまた魔物への対処に注力せざるを得なくなったために北方前線で苦戦を強いられることとなり、ジオーニア王国とキルギア連合軍に事実上の敗北を喫した。


 教皇に浄化失敗の責任を押し付けられた挙句、失脚、追放に追い込まれたことで彼女は狂った。いや、狂わされた。


「ぐがぁぁぁぁぁ!!」


 レクスの魔法がジャンヌの右肩から先を吹き飛ばした。

 とうとう両腕を失ってしまった彼女の表情に何故か喜悦の色が浮かぶ。

 その様子を見て不審に思ったレクスが攻撃を止める。

 ついに狂ったか?

 いや最初から狂っていたのか。

 レクスがそんなことを考えているとジャンヌの哄笑が響く。


「はははは! やったな……やってくれたな! あたしを縛める物はなくなった。これで勝つ。勝てる! あたしはあたしに戻れるのだ!」


 レクスは訝しげな表情のままで固まっていた。

 ジャンヌに剣を向けていたセリアも呆気に取られている。

 動けないままで戦いを見守っていたドミニクら騎士たちも同様だ。


「10thマジック【絶対神域パルフェ・フィル】」


 再び、神聖なる障壁がジャンヌを護るように展開された。

 そして高まる神聖力。

 及ばない理解。


「キャハッ……何が起こったか理解できないようだな……あたしも驚いている。ただ覚悟が足りなかっただけだったのだ……」


 ここに至ってようやくレクスが気付いた。

 ジャンヌが両手首にしていた金色のブレスレットは、確か彼女の強力な神聖力を抑制するための魔導具だ。


 両手を失いそれがなくなった。

 それが意味するものは――


 あれだけ神聖魔法を連発して消耗させていたのに、ここに来ての神聖力の回復と強化である。

 いくら現在の職業が騎士ナイトとは言え、レクスの【重弾丸マグナム】が完全に弾かれてしまっており完全に計算が狂った形となってしまった。

 ただセリアの攻撃は効果があるようでチマチマとダメージが累積しているようだ。こうなったらレクスも暗黒導士になって魔力の補正を高めるしか方法はない。


 相討ち上等!!

 レクスは暗黒導士に職業変更し【重弾丸マグナム】乱射を再開する。


「10thマジック【神聖鉄槌ホーリー】」


 狙いはもちろんセリアと判断したレクスは魔法ではなく魔力障壁をセリアを中心に展開させた。

 無属性だが魔力を研究する日々の中で使えるようになった代物である。

 解析済みだったジャンヌの魔力の逆位相バージョンの魔力障壁を張って彼女の魔法の威力そのものを減衰して弱体化しているのだ。要は対ジャンヌ特化型魔力障壁である。


 天空から神聖な光の奔流がハンマーのように降り注ぐが魔力障壁は何とか耐えきることに成功する。

 正直、成功するかは微妙なところだったが彼は賭けに勝ったのだ。


「レクス! ありがと!」


 セリアもその魔力障壁に頼もしさを覚えて攻撃がより強くなる。

 能力ファクタスの【暗黒闘気】が使えれば神聖力にもっと対抗できるのに!

 そう思うが覚えていないものはしょうがない。


 レクスとセリアは目と目で語り合い、攻撃を続ける。

 度々神聖魔法が飛んでくるがレクスは剣に魔力を付与して光の奔流を斬り裂いている。セリアはセリアで絶対神域をひたすら斬りまくり神聖魔法を薙ぎ払う。


 不意にジャンヌからの攻撃が止む。

 どうやら両手の再生を優先したようだ。

 瞑目して神聖力を制御している。


 状況が悪い方向へと転がっていると感じたレクスは魔力の同期で絶対神域を破り、ジャンヌに攻撃を叩き込もうと考える。

 言うは易く為すには難しいがやってやれないことはないと思っていた。


「セリアこっちへ!」


 ジャンヌの魔力波の解析は逃亡する時に済ませているため、後はセリアと魔力波の周波数を合わせて共振を起こすだけだ。

 2人が影が重なる。

 レクスはセリアを背後から包み込むと彼女の剣を一緒に握り魔力分析に入る。

 

 時間との勝負。


 戦いの最中にお互いが瞑目して集中体勢に入る。

 異常な戦場がここには存在した。


 レクスの魔力がセリアの魔力と絡み合う。

 息を合わせるように少しずつ位相をズラして同位相になるよう調整していく。


 短いようで長い。

 決して短くない時間が流れた。

 傍から見れば、何となく間抜けにも見える光景。

 だが敵味方共に真剣だ。


 そしてその刻が訪れる――


「よしッ! 解析完了! セリア、出力上げて!」


 暗黒の力が増す中、レクスは微調整を重ねて大出力化を成功させた。

 2人はその力を相乗させジャンヌが張った絶対神域を剣で刺し貫く。

 彼女の魔力波の逆位相での攻撃によって絶対神域は崩壊。

 まるでガラス玉が砕け散ったかのよう。

 本人の姿が露わになる。


「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 2人の剣が横薙ぎに薙ぎ払われる。

 上半身と下半身が別れを告げ押し寄せる激痛にジャンヌの絶叫が重く響き渡った。


 集中が切れたジャンヌの両腕は再生途中で止まり完全再生には至らない。


「がぁッ……クソ! クソがぁッ!」


 レクスが勝利を確信しトドメを刺そうとしたその時――未知の力がジャンヌの体から溢れ出した。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。


明日も12時の1回更新です。

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