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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第一章 ゲーム世界のモブに転生して

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第47話 堕ちた聖者ジャンヌ ①

もうじき本編突入なのでお楽しみに。

いつもお読み頂きありがとうございます。


本日は13時の1回更新です。

「キャハッ! ようやく……ようやく見つけたぞッ! 異端者共がぁッ!」


 最も聞きたくなかった声と共に白い魔物に乗ったジャンヌが門をぶち破って関所内に進入してきた。そのままの勢いでレクスとセリアをも刎ね飛ばす。


 2人は開いた門から外へ放り出されてしまった。

 地面に強かに叩きつけられるもレクスはすぐに臨戦態勢を取る。


 目の前には白い魔物から降りるジャンヌ。

 その手には先に光のオーブが付いた紫のワンドを持っている。


「(白い魔物? いや神獣か? 『神獣使役』の能力ファクタスか!?)」


 セリアがドミニクたちに抱き起されているのを窺いつつ、レクスはジャンヌと対峙した。


「どうやって逃げたのかは知らんが、手を煩わせやがって……貴様らッ! ただでは済まさんぞッ!」


 激昂して感情は高ぶっているが表情には余裕が見える。

 絶対勝てると言う確信があるのだろう。

 それ即ち強者の驕りと言う。


「ケルミナス伯爵家の陰謀……見過ごすことなどできぬ! 覚悟するのは貴様の方だ!」


 ドミニクと騎士たちがレクスとジャンヌの間に割り込んできた。

 主を護るのが騎士の役目なのだろうが、ここに至っては邪魔になりかねない。

 スターナ村で戦った時の実力は本物だ。


「ケルミナス伯爵ぅ? 何を言っているの? あたしの得物はそこの坊やだけだ」

「ふざけるのも大概にしろ。そこに倒れているのはケルミナス伯爵家の騎士。紋章を見れば一目瞭然だ」

「騎士だと? そこの騎士があたしと何か関係があるのか?」


 そりゃそうだ。

 関所にケルミナス伯爵家の騎士がいたのは不審な点であることに違いないが、それがジャンヌと関係あるかと言われればNOである。


 繋がっている証拠がない。


「とにかくお嬢様とレクス殿を攫ったことに変わりはない。貴様は私たち白嶺騎士団リジッド・オーダーがお相手致す!」

「キャハッ……異端者はゴミだが、異端者を庇う者もゴミだ。救いようがないな。やれ、フェンリル」


 ジャンヌの隣にいた神獣フェンリルが吠える。

 強烈なまでの神聖力と共に神聖なる雷撃が天空から落ちてくる。

 それはドミニクたちの間で荒れ狂い、彼らの絶叫が木霊した。


「(フェンリルって言ったらS+ランククラスだろ。多分。騎士じゃ勝てないよな)」


 力を解き放った直後を見逃すレクスではない。

 硬直していたフェンリルにすかさず魔法を放つ。


「6thマジック【重弾丸マグナム】」


 ゴバァ!と言う轟音と共にフェンリルの肉片が飛び散った。


「グルルルルゥ……」


 腹にまで響き渡るかのような低い唸り声。相当な怒りの波動が感じられる。

 どうやら外したようだ。

 いや当たったと言えば当たったのだが、狙ったのは頭。

 実際に命中したのは左前足だ。


「不意を突いたのは――」


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】」


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】」


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】」


 馬鹿ジャンヌが何か言い掛けたがいちいち聞いてやる義理などない。

 魔力練成、魔力操作、魔法陣描写、魔法陣展開、そして太古の言語(ラング・オリジン)を口語で言い放つ。


 息つく暇もない魔法の雨霰あめあられにフェンリルの体中に風穴が空く。

 それでも立っている辺り流石は神獣と言ったところだ。

 鋭い目はレクスを睨みつけ未だ生命の輝きを失ってはいない。


 もうひと押し――


「これで風通しが良くなったろ? 神獣如きで俺をれると思うなよ? お前が来いよ、堕ちた聖者ジャンヌ。地獄へ落としてやるからさ」


 本心は「神獣なんか呼び出してんじゃねぇよ! かなり焦ったわ」と思っていたが、そんなことなどおくびにも出さない。


 世の中ハッタリも必要なのだ。


「貴様ぁッ! あたしをその名前で呼ぶなと言ったはずだッ!」


 案の定、キレたジャンヌが杖をかざすと神聖魔法を発動した。

 同時にフェンリルも後ろ足を使って大きく跳躍――狙いはレクス、丸かじり。

 もちろんレクスも同時に仕掛ける。

 全ては想定の範囲。


「6thマジック【重弾丸マグナム】」

「8thマジック【超回復リカバー】」


 発動は同時。


 着弾はレクスの勝ち。


「なッ!?」


 ジャンヌが見た現実は顔が原形を留めないほどにぐちゃぐちゃになった神獣フェンリルの末路。

 そして呆気ないほどにその身を大地に横たえさせた原因を作った男。

 せっかくの神聖魔法も死体には効果などない。


「10thマジック【絶対神域パルフェ・フィル】」


 神獣を失って多少は動揺するかと思ったが立ち直りが速い。

 流石にあの絶対的な防御を破壊しなければジャンヌにダメージは通らない。


「【神聖化サクラーレ】」


 ジャンヌがニヤリと歪んだ笑みを浮かべる。

 表情にも余裕が感じれる。

 暗黒騎士と暗黒導士が相手では勝ったと確信でもしているのだろうが。


「これで勝ったと思ったか? 底が知れてるんだよ。お前は」


 神聖魔法は攻撃のバリエーションが少ない。

 理由は主な攻撃対象はレイスなどのアンデット。

 つまり亡者の浄化である。

 だからこそ暗黒系の職業クラス相手には攻撃を神聖化して物理で殴るのが定石。


「キャハッ……ほざいてろガキが。貴様の攻撃は神域に阻まれて届かない。だがあたしの攻撃は貴様らには特効だ。その意味も分からないほど馬鹿なのか?」


 お互いに見つめ合う格好で対峙するレクスとジャンヌ。

 そこへ少し苦しげなセリアが並び立つ。


「セリア、神聖化攻撃を喰らうとマズい。離れていてください」

「はぁはぁ……嫌よ。私も一緒に戦いたいの。負けたくないもの」


 負けん気の強さは流石のお嬢様である。

 まだ手合せしたのは1度だけだが剣に傾ける情熱は伝わってきた。

 彼女は剣が好きなだけなのだ。

 そして剣の道を極めたいと思っている。


「はぁ……仕方ないですね。敵は聖女。強いですよ?」

「うん。だから力を合わせるんでしょう?」

「生きて帰りましょう」

「そうね。同感だわ」


「ゴチャゴチャと……別れは済んだか? 女は殺す。安心しろ。部下たちも直に送ってやる」

「【大いなる暗黒よ! 其に仕えし深淵なる闇の眷属よ! その血を糧とし我が血に変えよ! ブラッドソード!】」


 太古の言語(ラング・オリジン)による完全詠唱バージョンの『暗黒剣』、【ブラッドソード】だ。

 その威力はただの【ブラッドソード】とは比べものにならないくらい強力である。レクスは先程から散々舐めたことを言って挑発しているが決してジャンヌが弱いなどとは考えていない。ここからは神聖攻撃は暗黒騎士にとって特効だが、逆もまた然り。


「よし。行こう」


 レクスは剣をスラリと抜き放つと騎士ナイトへと職業変更クラスチェンジした。


「7thマジック【神聖猛撃メガ・ホーリー】」


 ジャンヌの放った神聖魔法は光の奔流と化し衝撃波となって肉薄する。

 狙いは――セリア。


 彼女はそれを何とか身をよじって躱す。

 レクスはスキル【神魔装甲】を発動し一気に距離を詰めると絶対神域を剣で叩き割る。しかし澄んだ音を立てただけで傷1つ付くことはない。


「5thマジック【散弾乱舞ラム・ショット】」


 今回の魔法は魔力をいじったバージョンだ。

 顕現させる弾丸数を大幅に増やし、一発に込める魔力量も最大量と定義して発動する。もう【散弾乱舞ラム・ショット】ではなく強化版【重弾丸マグナム】とも言える。


 数えきれぬほどの弾丸が【絶対神域パルフェ・フィル】に殺到し轟音が神域の障壁に降り注ぎ不快な音を立てた。


 予想通り!

 如何に絶対神域と言えども強化した弾丸魔法の飽和攻撃には耐えきれない。

 いつかは限界を迎えて崩壊する。

 レクスは自らのオリジナル魔法の攻撃力の高さに自信を深めた。


「5thマジック【神聖強撃アーチ・ホーリー】」


「そんなチマチマしたものが当たるかよッ!」


 レクスはひたすらに【重弾丸マグナム】を連発し続ける。

 明らかにヒビが入っており崩壊は近い。

 更に魔力を込めて魔法陣を展開すると放たれた弾丸が絶対神域を崩壊させた。

 レクスはセリアに合図を送りつつジャンヌに向かって凄まじい速度で接近していた。


 これも技能(スキル)、【神魔装甲】のお陰だ。

 絶対神域が割れた瞬間に最大火力を叩き込んで、『騎士剣技』で決める!


「10thマジック【神聖大突風ホーリー・ウィン】」

「【気合いっ――」


 ジャンヌまでもう少しと言うところで大規模広範囲魔法を撃たれて2人は吹き飛ばされる。魔法の範囲内は神聖力が荒れ狂いレクスとセリアは神々しいまでの光の大奔流の中で溺れる。


「く……極大魔法か!」

「よく知っているようだな。しかしよく死ななかったものだ。まぁ貴様には死なれても困るんだがな」

「なら使うなよ……」


 レクスがジャンヌが考えるほどダメージを負っていないのは騎士ナイトになっているからだ。

 とは言えダメージがあることには変わりない。

 まともに巻き込まれたセリアの方はかなりのダメージを受けたようで大地に叩きつけられて倒れている。

 レクスはすぐに彼女の下に駆け寄って上半身を抱き上げた。


「セリア! セリア! 大丈夫ですか?」

「ん……ぅあ……何よあれ。あんなの反則じゃない」

「あいつは俺が引き付けますからセリアは死角から暗黒剣で攻撃してください」

「分かったわ……」


 セリアの顔色がかなり悪くなっている。

 これ以上、神聖攻撃を受けるのは危険だ。


 そう言うが速いかレクスは再び【重弾丸マグナム】を連射する。

 それは旧世界の実物のような速度で飛来するため、常人が反応することなど不可能に近いだろう。ジャンヌもこれまでの攻撃を見て理解しているのか発射した瞬間に身を躱そうと必死に体を動かしている。


「(攻撃の隙を与えない!)」


 攻撃し続ければ続けるほど相手が反撃に移る隙を与えないことになる。

 それだけ魔力練成や魔力操作、魔法陣描写を素早くこなすのは困難だと言うことだ。


 ジャンヌはレクスの攻撃の雨を浴び続けて避け続けていた。

 しかし限界は必ず訪れるもの。


 レクスの放った【重弾丸マグナム】がジャンヌの左肩に命中し粉砕した。

 ごっそりと左肩周辺部を失って端整な顔が苦痛に歪む。


 それでも攻撃の手を緩めることはない。

 レクスはじょじょにジャンヌを追いつめて行った。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。


明日も13時の1回更新です。

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