第4話 魔力を使って
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本日は12時、18時の2回更新です。
レクスは転生してから徹底解説ガイドやファンブックの内容を思い出すのに躍起になっていた。かなりやり込んできたお陰もあってゲームの内容やストーリーの流れ、システムなどはほとんど覚えていたし、徹底解説ガイドなどに記載されている情報も思い出し始めている。
ただ裏設定や裏データも存在するとされているため、それがゲーム本編に採用されているのかはまだ分からない。
例えばこの世界『セレンティア』の住人は多くの者が多かれ少なかれ魔力を持っていると設定にはある。
魔力の元はマギアと呼ばれ、魔法が使えなくともそれを使って様々なことができるとされていたはずだ。
つまりマギアを集めて魔力を練成し自在に操り、具現化したり放出したりする。
これは魔力を使う基本である。
世界の理の力に働きかけマギアを練成して火や水に変えることができる理術なるものが存在するとあるのだが、まだまだ一般には普及していないようだ。
設定では平民に力を使わせないため多くの知識は秘匿されていると書かれていたはずで、使える者は多くはない。
所謂、異世界転移ものでよく聞く生活魔法のような存在なのだが、極めていけば理術は攻撃にも使える。
火を起こす、水を生み出す、土を操作する、風を発生させる、静電気を起こすなど全てはマギアを変化させたもので中には魔力そのものを放出、具現化できたりもするらしい。
魔法だけしか使う機会がないゲームとは違うところだ。
ちなみに魔法を使うには基本ができるようになること、そして魔導士の職業になって職業点を稼ぎ魔法を習得することが必要だ。
ここは実際のゲーム世界ではないのでその他に魔法陣を覚えて描画、展開し太古の言語を扱えなければ魔法は発動しない。つまり何処かで学ばなければ職業が魔導士系であっても魔法が使えない平民は多いと言える。
この世界でも前世のように知識や技術は秘匿されるものなんだな。
そう思ったことをレクスは覚えている。
レクスが通っている王都の王立学園小等部魔導科で魔力練成や魔力操作などを学んでいることは覚えていたので彼はこのところ実践して色々と試している。
一応は頭と体が覚えているようだったので、すぐに扱えるようにはなった。
ただ、転生ボケと言うものなのか、しっくりこない面もあるのでそこは反復練習と再現性の確認が必要だ。
と言うか最近はそれにばかり取り組んでいる。
剣の稽古以外は。
せっかくなのでリリスやミレア、カインにも魔力を使って色々できることを教えている。ミレアだけは光魔導士なので魔法が使えるが、魔法以外に応用が利くので覚えておいて損はないはずである。
ちなみにカインと言うのはレクスと同い年の豹族である。つまり獣人だ。
ゲームのキャラクターとしての登場はないのだが、記憶の断片によるとこの村にレクスの友人として存在するらしい。村近くの森でテッドが保護したのがきっかけでレクスたちと仲良くなりこの村に住むことになった。
しかし人間族至上主義のグラエキア王国では迫害される傾向にあるため、隠れるようにひっそりと暮らしている。バレても殺されることはないだろうが、迫害されるのは想像に難くない。
「だーかーら! 魔力を感じるんだよ。ほらよく言うだろ? 考えるな! 感じろ!ってな。マギアは大気中に存在しているし体内からも生み出される。それを体中に流動させる感じで丹田に集中させるように!」
「分-かーんーなーい! たんでんってなに? お兄はもっと優しく教えるべきだと思うの」
「俺は何となく感じられるぞ?」
リリスは手足をバタバタと動かして駄々をこね、カインはコツを掴みかけている。
2人ともまだまだ困惑顔だ。
教え始めたばかりなので仕方がない。
「丹田は臍の下辺りだな。リリスはまず感じるところからだ。カインは次はそれを練り上げる、うーん……丹田で餅とかうどんをこねる感じ」
「もち? うどん?」
「ああッ……例えにならない! えっとそうだな……感じた何かがぐるぐると巡っているようになるからその感覚を掴んでみて」
「りょ」
カインは素直に取り組んでいる。
真面目で真っ直ぐな性格をしているからな。
そんな部分にレクスは好感を抱いている。
「えへへ……私はできるよ~」
「そりゃお前は習ってるし魔導士だからな?」
自慢げなミレアにレクスが容赦なく突っ込む。
彼女も一緒に王立学園に通っているだけあって魔力の練成や操作は上手くできている。魔法を使うだけならそれを迅速にできるように磨いていけば良いのだが、今回ののように魔力そのものを操りたいのなら放出や具現化のコツを掴む必要がある。
「ミレア、今回やろうとしているのは魔法を使うのではなくて魔力自体を上手く扱えるようになることだ。今度は魔力を手に集中させて具現化させてみて。強くイメージすること、無から何かを創造することを意識してみて欲しい」
「了解~!」
ミレアは警官がする敬礼のようなポーズを取ると、すぐに集中を始めた。
始めた時はやる気は見られなかったがレクスが懇々と有用性を説くと渋々だが実践し出したので興味はあるのだろう。
「もうお兄ー。これができたらどうなるのさー?」
「言っただろ? お前が就職の儀で何の職業を授かるかはまだ分からないけど、これを覚えておけば目の前に魔力障壁を作り出したり魔力を直接放出して敵にぶつけたりしてダメージを与えることができる。魔導士だったら魔法のためになるし、騎士系でも魔法なしで有利に戦えるようになるんだ……多分」
「ふぇぇ……大変だぁ……って多分てなに!?」
「騎士になりたいんだろ? 頑張れ! 熱くなれよ!」
情けない声を上げてべそをかくリリスに激励の言葉を掛ける。
せっかく家族として縁ができたのだから大切にしてやりたい。
レクスはそう考えている。
「おお……何だか腹の辺りが熱くなってきたぞ!」
カインが青色の鋭い目を輝かせて興奮気味に言った。
気のせいか短い体毛が逆立っているようにも見える。
豹型の獣人である彼の容姿は全体的に前世にいた豹に近い。
「おお、いいねぇ。そしたらそれを体の一部に集中させてみて。まずは手に集めるのがやり易いかな?」
「やってみるぜ!」
護りたいその笑顔。
就職の儀が終わればレクスはミレアと共に王都へ戻ることとなる。
春休みが終わるからだ。
レクス自身、まだまだ未熟な今、大切な人たちを護ることなど到底不可能だ。
今後がどうなるか不明なので最低限のことはやっておきたい。
レクスはそんな考えの基、彼らに知識を与えて導いていくつもりだ。
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