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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第一章 ゲーム世界のモブに転生して

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第31話 大長老衆の筆頭

いつもお読み頂きありがとうございます。


昨日は1回更新と書きましたが変更します。

本日は12時、18時の2回更新です。

 グラエキア王国には7人の超越者と呼ばれる者で構成される組織――大長老衆が存在する。


 決して歴史の表舞台には出てこない王国の暗部であった。

 とは言え、カルナック王家に仇為す存在ではない。

 時には助言を、時には諫言を行いグラエキア王国を導いてきた。

 ちなみに王国の組織でありながら彼らは縛られない。

 自由に他国へ赴く者もいるくらいで王家も決して何も強制することはしない。


 広い庭園で大長老衆の筆頭――傲慢ごうまんのスペルビアが午後のひと時を満喫している。彼の目の前には2人の貴族が座りもてなされており、側には総代執事が控えていた。


「どうだ……『深淵なる真実(アビス・トゥルー)』は見つかったか?」

「進捗は悪いですな……」

探求者ハンターを始め、海底都市ファナゴリアにも接触しているのですが、未だ確度の高い情報は得られておりませぬ」


 せっかくの期待に応えられないことに貴族たちは意気消沈としていた。

 スベルビアはそんな重い空気を払拭すべく豪快に笑い飛ばして見せる。


「グハハハ……気にすることはない。アレは遥か古代の遺物よ。あっさりと見つかる方がどうかしている」


 その様子を見て安堵の溜め息をこっそりと吐いた貴族の1人が恐縮しながら尋ねる。


「古代神と敵対すると言う漆黒神……彼の神々など本当に存在するのでしょうか?」

「信じられんか? 古代神ロギアジークの聖遺物は見つかっておるのだ。ないと考える方がどうかしている」


 実在する聖遺物など見たこともない貴族たちは衝撃の大きさに目の色を変える。

 疑ってはならぬと分かっていても聞いてしまう。


「な、なんと! それは真でございますか!?」

「オレが貴様に嘘など吐いてどうなると言うんだ? 本当のことよ。『神の想い出(ロギア・メメント)』と言う聖遺物だ」

神の想い出(ロギア・メメント)……初耳でございます……」

「グハハ……言っておらんからな。だがな……今は古代神のことなどうでも良い。そうは思わぬか?」


 愉快そうに笑っていたスペルビアであったがすぐに笑みを消すと、その紅の瞳が貴族たちを射竦める。彼らの間に一瞬の緊張が走るが、すぐに笑みを浮かべたことで再び空気は弛緩した。


 元々、傲慢のスペルビアはハイエルフとヴァンパイアのハーフで世界各地を放浪し見識を高めていった者。歴史的な文献を漁り、古代史を紐解き、遺跡を調査してこの世界のことを理解する。


 その叡智は遥かなる高みへと到達していた。

 言わば世界を知る者と言って良い。


 だからこそグラエキア王国も彼を招聘したのだ。

 彼は十分王国の発展に寄与してきた実績がある。


「オレの他にも裏でこそこそと動いている者共がいるようだ。中々尻尾を出さんが推測はできる」

「我々の他にも漆黒神の復活を目論む者がいると言うのでしょうか……?」

「ん……? グハハ……いやそうではない。オレが言っているのは別の勢力のことよ」

「では古代神の復活を?」


 スペルビアの表情が渋いものへと変わる。

 貴族の察しの悪さに辟易としただけなのだが、彼の一挙手一投足に2人の心は反応してしまう。

 それだけの覇気と威容を纏った存在が超越者たる者と言われる所以でもある。

 貴族の疑問は黙殺された。


「あのクソじじいも直接動いておるようだしな。オレも近々海底都市ファナゴリアへ向かうとするか」


 海底都市ファナゴリアとは1300年以上前に突如として国土の大半が海中に没した都市であり、国教は漆黒神信仰だ。世界各国からあんなもの(漆黒神)を崇拝しているから天罰が下ったのだと言われているが定かではない。

 小大陸並みの国土を有していたが規模が縮小した現在でもその国力は決して馬鹿にできるものではなく、周辺国から侵攻を受けてもいない。

 都市全体が海中に沈んでいる訳ではないが、魔導具を用いて海底でも生活できるようになっているため一見すると不思議な都市国家に映ることだろう。


「おお……スペルビア様自ら参られるとは……」

「スペルビア様は漆黒神を復活させた暁には何を望まれるのですか?」

「グハハ……愚問よ。特に何かある訳ではない。オレが望むのはこの世界の深淵に触れることだけよ」


 自らの知的欲求を満たすためだけに世界を破滅に導こうと言うのか。

 貴族たちが戦慄を覚えるのも無理はない話であった。

 古代の神々の歴史は古代竜の歴史よりも遥かに長く、実在したとされるのは五千年前とも一万年前とも言われている。

 それすらも定かではなく、未だ研究が続いている状況。


「とは言え、計画が実行に移されるのはまだまだ先のことよ。貴様らはそこまで心配することもなかろう。オレのようにもっと勉学に励むのだな。グハハ……!」




 ―――




 スペルビアは1人になると考え始める。

 今後について。


 もう長い刻を生きてきたし、これからもまだまだ生きていくことになる。

 如何にハーフだとは言え、ハイエルフとヴァンパイアとのハーフなのだ。

 寿命と言う概念が存在するのかすら怪しい。


 人間――実際には違うが――長く生きているとろくなことを考えないのが常である。彼の場合は知的欲求に向けられた訳だが、普通に考えたら古代神と争って相討ちとなった漆黒神を復活させるなど狂気の沙汰だ。

 伝承では古代神が闇を照らす光で正義、漆黒神が光を蝕む闇で悪。

 そう言うことになっている。

 世界で必死で生き抜こうとしている者たちからすれば、どうして態々、安寧を脅かすことをするのかとその理不尽に激怒するだろう。


「スペルビア様。ご報告を」

「どうした」


 先程、貴族を歓待していた総代執事が執務室に入ると洗練された所作で礼をする。


「良い感じで働いてくれそうな者が見つかりましたのでご報告をと思いましてまかりこしました」

「ほう……駒が見つかったか」

「はい。王国貴族のケルミナス伯爵でございます。元探求者であり様々な知識を蓄え、何やら聖遺物まで入手したらしいとの報告が上がって来ております」

「グハハ……それは良いな。素晴らしい駒として盤上で踊ってくれそうだ……」


 中々に優秀な男なのだろう。

 聖遺物を手に入れるなど普通はできるものではない。

 もしそれが幸運によるものだとしても彼はナニカを持っている者なのかも知れない。


「注視せよ。ケルミナスと言う人物を監視し分析して丸裸にするのだ」

「御意に」


 スペルビアは全く焦っていない。

 時間は腐るほどあるからだ。


 自分の力がいつかは天に届くと言う傲慢。

 それがスペルビアと言う男。

ありがとうございました!

また読みにいらしてください!


第一章終了まで後20話ほど!!

明日も12時、18時の2回更新です。

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