表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第四章 双龍戦争と世界大乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/181

第10話 ティダーン攻略戦

いつもありがとうございます。

 レクスがティダーン城に到着した時、既にユベール軍による総攻撃が開始されていた。


 北の城門は破られる寸前で、雪崩れ込むのも時間の問題のように思えた。

 レヴィンは連れてきてくれた騎士に西門に回り込んでもらうと礼を言って馬から飛び降りた。


 ユベール軍は完全に北門に集中しているようで、西門には誰一人存在しないが、ロストス王国軍のゴブリンの守備兵は幾らか見張りについていたようだ。



「8thマジック【大砲撃バズーカ】」



 ちまちま戦っている暇はない。

 ここからは時間との勝負だと考えるレクスは、大規模砲撃魔法で周囲の城壁を破壊した。轟音を立ててガラガラと崩壊し、一瞬のうちに瓦礫と化した城壁を見て、ゴブリンたちが狼狽する。


 こんな雑兵ぞうひょうには用はないので、城壁内を疾走すると一気に城塞へとたどり着く。



「な、もう侵入してきたのか!?」


「弓矢を射かけろ! 近づけさせるな!」


「王子殿下に伝えろぉ!」



 本城への門を護るゴブリンたちが、レクスへ向かって殺到する。

 だが――



「7thマジック【機関銃弾ガトリング】」



 文字通りの機関銃の如き魔力弾が、レクスの進行を妨げるゴブリンを瞬く間に一掃した。


 剣を交える間でもない実力差。


 ティダーンでレクスと戦いになる者は第2王子のキンゴストスくらいのものだろう。


 それでも圧倒的だろうが。


 本城へと侵入したレクスは、驚くほどに静寂に満ちている廊下をひたすら駆ける!

 大半の兵士が北の城門に投入されているのだろうが、先程のゴブリンの言葉からキンゴストスが未だ、場内に留まっている可能性が大きい。


 それでも散発的に遭遇するゴブリンを難なく斬り伏せながら、捕らえられているらしき地下牢を探す。レクスも殺す前に聞き出そうとしているのだが、誰からも明瞭な答えは返ってこない。


 となると――


 レクスは広範囲に渡って自分を中心に魔力波を放つ。

 瞑目して脳裏に浮かび上がる魔力反応を確認する。



「大人数が一塊……後は少数が一塊か。近くに10ほどの塊もある。少ない方に行くか」



 先にキンゴストスを殺しておくのも良いかと思ったが、恐らく少数の方――人質の近くにいるゴブリンたちに襲撃されても厄介だ。

 いち早く排除してクロアス王国王子たちを確保した方が確実だ。

 どうせ直にキンゴストスは撤退の決断をするはずで、その際に人質を連れて逃げるだろうと思われる。


 プロフィールやフレーバーテキストで彼の性格は把握していたし、実際のゲームでもすぐに逃亡を開始しようとするので可能性は高いだろう。

 完全に思い込むのは危険なので、もしものことを考えるまでだ。


 魔力波を放ち、状況を把握しながらレクスは進む。

 相変わらず時々出会うゴブリンをあっさりと葬っていくレクス。



「動き出したか……」



 恐らくキンゴストスだと思われる一団が移動を始めた。

 やがてそれとは別の魔力反応も動き始めるが、レクスとはもう目と鼻の先。



「止まれッ!」



 レクスの大声にビクリと肩を震わせて巨躯のゴブリンが振り向いた。



「何ぃ!? どうして人間がここにいるッ!」


「地下牢の場所を教えろ。そうすれば命は助けてやる!」


「北門が抜かれたのか!? お前ら掛かれッ!」



 話が通じない巨躯のゴブリンの突撃命令に従って、一般兵たちが抜き身の剣を片手にレクスへと襲い掛かる。

 問答無用とあらば交渉の余地などない。



「【虎狼一閃ころういっせん】」



 レクスの姿が霞のようにブレて消えたかと思うと、次の瞬間には5体のゴブリンの首を刎ね飛ばしていた。

 更に余勢を駆って、背後にいたゴブリンを流れるような動きで斬り伏せていく。

 剣を交えることすらできず、ゴブリンは次々と斬られて血の海に沈む。



「な、何者だッ! くそぉ! 死ねぇ!」


「死ぬのはお前だよ」



 上段から叩き付けるように大剣を振り下ろす、巨躯のゴブリンの大振りを楽々と躱したレクスがその脇腹を薙ぎ払い、右側から駆け抜ける。

 吐血したゴブリンは諦めずに通り抜けたレクスの方へ振り向くが、待っていたのは容赦ない袈裟斬り。


 両断こそされなかったが、体を左肩から右脇腹に掛けて薙ぎ斬られたゴブリンは、レクスに何らダメージを与えることもできずに葬られた。


 それを一瞥するとレヴィンは周囲を見回して、地下への階段を発見した。



「魔力反応あり。ここか」



 すぐに助け出して脱出しなければならないと考えて、レクスは一気に階段を駆け下りる。既に最前線に送られたのか、見張りもおらず邪魔する者はいない。


 広々とした石造りの地下牢が並び、黴臭さと湿気のある纏わりつくような空気感が劣悪な環境であることを物語っている。


 レクスが大声を張り上げて牢の中を覗き込みながら、目的の人物を探していると反応の声が返ってきた。

 反響して分かりにくいが、子供のような声。

 そして人間とは違うくぐもった声もレクスの耳に届いた。


 思わず舌打ちして焦るレクス。

 どうやらまだゴブリンがいたらしい。


 無駄に広い地下牢の中の1つ――そこでゴブリンに手を引っ張られている少年の姿をレクスが発見した。


 人間とゴブリンの放つ魔力の波長は異なっているが、あまりに接近しており気が付かなかったようだ。


 その中で人間の数は5人。

 1人の少年が冷たい石の床に血を流して倒れている。


 ゴブリンの手に握られている剣に付着している血がぬらりと妖しく光り、レクスの怒りの刺激した。



「6thマジック【狙撃弾スナイプ】」



 練り上げられた魔力弾が、吸い込まれるようにゴブリンの頭部に直撃して破裂した。

 飛び散ったドス黒い血が、近くで抵抗していた者たちに降りかかる。

 意外にも人間たちから悲鳴が上がることはなかった。


 何が起こったか理解できず固まる最後のゴブリンに、素早く駆け寄ったレクスはその頭蓋骨を叩き割った。



「あの……あなたは……?」



 人間の姿を見て安心したのと同時に、その素性が気になったのだろう。

 茶色の短髪をした少年が、レクスに恐る恐る尋ねた。



「私はレクス。カルディア公の手の者で、グラエキア王国軍としてティダーンに潜入しました。目的はクロアス王国の王子と王女を助けるためです」


「ああ……グラエキア王国の方でしたか……僕は第1王子のヨアキム、こちらが王女のグレータです」



 挨拶をしながらも、レクスは倒れている少年の状態を確かめていた。

 傷が浅くまだ息があることに安堵したレクスが、すぐに回復魔法を行使する。



「ご無事なようで良かった。それでこちらの方は?」



 少年を抱き起し、傷が塞がっていることと呼吸が落ち着いていることを確認する。

 残る2人に目を向けたレクスに、薔薇色の髪をした妙齢の女性が慌てて名乗る。



「息子を回復して頂きありがとうございます! 私共わたくしどもはロンメル領主の妻子です。ロストス王国に侵攻を受けた際に、囚われておりました……」


「えッ……ロンメル卿の奥方とご子息でしたか! 捕らえられているとは聞いておりませんでしたが、ご無事で何よりです」


「あの……主人は無事なのでしょうか? ロンメルが陥落してから何が起きているのか分からなくて……」


「ご無事ですよ。現在、ファドラ公子のユベール様がここを攻めているところです。詳しい話は後で。まずは脱出しましょう!」



 まさかロンメル男爵の妻子まで捕まっているとは思いも寄らなかったが、結果的に助けられて良かったと、レクスはホッと胸を撫で下ろす。

 逃げるべく案内しようとした時、ヨアキム王子がレクスの腰に縋りついた。



「あ、あの! 僕を護るためにアウグスタが、アウグスタが脅されているんです! 彼女も――」


「ご安心下さい。アウグスタ殿も既に合流しております。さぁ早く参りましょう!」



 言葉を遮りつつも、なるべく優しい声でアウグスタの無事を教えたレクスは、もう1度早く逃げるよう促した。


 だが――

 遠くから声が聞こえる。



「と、突破されたのだなッ!? 人質を連れてデリンマへ早く逃げるぞッ!」


「ははッ!」



 デリンマとはティダーンの南にあるロストス王国第2の大都市である。

 現在は第1王子のゴスゲスが詰めているはずだ。


 このまま行っても鉢合わせするだけ。

 レクスは5人に後ろに下がるように言うと、少し前へ出てキンゴストスが表れるのを待った。ロンメル男爵の妻は回復させたばかりの少年を抱き締めながら、皆と共にレクスの背後へ隠れる。



「んだぁ!? 何処から入りやがった、人間がぁ!」



 一直線の通路でレクスの姿を目にしたキンゴストスが、狼狽したように叫ぶ。

 想像だにしていなかったのか、声が上ずっている辺り、まだ北門は破られていないのか……。外の状況が分からないが、追い詰められたからこそ逃げ出そうと地下牢を訪れたのだろう。


 ゲームでは、不利になると即行そっこうで逃亡するのがキンゴストスと言うゴブリンだ。

 とは言っても普通にプレイしていれば、まず逃げられることはないが。



「キンゴストスか。殺してやるから掛かって来い」


「何だと!? 口の利き方に気を付けろクソ人間がッ! たった1人に何ができる。掛かれッ!」



 逃げないとは珍しいと考えながらも、レクスとしてはここで確実に殺しておくべきと判断する。

 強くはないが弱くもなく、一般兵からすれば十分脅威だからだ。


 レクスが駆ける!

 ゴブリンの数は三○ほどだ。

 至近距離まで迫るとレクスは魔法を発動した。



「7thマジック【機関銃弾ガトリング】」



 雨霰あめあられと降り注いだ魔力弾は、キンゴストスの近衛と思しき精鋭たちに大穴を穿つ。

 体中から血を噴出させながら、次々と倒れゆくゴブリンを見て、ギンゴストスは一瞬で戦意を喪失したようで震えた声で叫んだ。



「ににに、逃げるぞッ! 俺を護れぇ!!」



 ―――



「しかし人っ子一人おりませんな」


「もう逃げられたか?」



 ロンメル男爵は重い鎧を鳴らしながら廊下を疾走していた。

 逃げられても構わないが、せめて捕まっているかも知れない妻子は置いていって欲しいと願っていた。



「恐らくここが地下牢ですな」


「レイモン、貴様ら! 突っ込むぞ! 何としても助けるのだ!」


『おう!!』

 


 地下牢へと侵入したロンメル男爵はすぐに戦いの気配を感じ取り、耳を澄ませる。

 遠くから剣と剣が交わる音が聞こえる。

 既に何者かが戦っている?


 疑問がロンメル男爵の心に湧き上がった。

 ゴブリンは恐らくキンゴストス……となると人間で、しかもまともにり合える者。


 そしてすぐに戦いの光景を目の当たりにすることとなる。



「なッ……あれは……」


「レクス殿のようですな」



 その背後には見覚えのある顔ぶれが――3人の妻子だ。

 他の2人の素性は分からないが。

 心の底から安堵が湧き上がってきて、ロンメル男爵は思わず大きく息を吐き出してしまう。


 安心したところで気になったのがレクスの強さだ。

 ロンメル男爵はレクスの戦い振りに目を見張った。

 特段、キンゴストスが強いとは考えてはいなかったが、レクスと言う少年がこれほどまでに圧倒していることに驚愕しかない。

 剣技も魔法も使わず、純粋な剣術のみで押しまくっている。

 と言うかキンゴストスは、周囲のゴブリンを犠牲にすることで何とか生き残っているだけだ。



「まさかこれほどとは……」


「カルディア公が送ってきただけのことはありますな」



 ロンメル男爵は戦慄していた。

 もしかしたら自分が敗れた、第1王子のゴスゲスよりも強いのでは?と言う考えが脳裏を過る。キンゴストスであっても『槍術』がなければ、あれほど圧倒的な戦いができるか疑問なところだ。


 立ち回りと体捌きが凄まじい。

 周囲をゴブリンに囲まれながら、全ての体の流れが計算され尽くしている動作に感じられるほど。


 レクスは大した大振りもせず、的確にゴブリンの首を刎ねていき、キンゴストスに蹴りを喰らわせると、大上段からの一撃でその剣を圧し折った。



「ひぃぃぃ!!」


「俺はなるべく殺したくはない。だがお前はロンメル領で女子供に凌辱の限りを尽くしたらしいな。その蛮行は見逃せない。畜生らしく死ね」



 情けない声を上げて、四つん這いで逃げようとするキンゴストスに向けて、レクスが冷酷に言い放った。

 その少年とは思えない声色に、ロンメル男爵は更なる形容し難い感情を抱く。

 これは――恐れ?


 そしてあっさりと、あまりにもあっさりとキンゴストスの首が宙を舞った。




 戦闘が終わり、ロンメル男爵は妻子と抱き合っていた。

 感動の再会のはずが、何処か心が浮ついている。


 残りの2人の少年少女は、剣神アウグスタが護るべきヨアキム王子、グレータ王女と言う話だが――


 よくよく考えれば、レクスがここに居ると言うことは、あのアウグスタを倒したことを意味する。


 無邪気に笑うレクスに対して、ロンメル男爵は上手く笑えている自信がなかった。


 一体何者なのだ……このレクスと言う少年は。

 普通に考えれば強力な味方のはずなのだが――


 ロンメル男爵は1人、込み上げる胸騒ぎを自覚していた。

お読み頂きありがとうございました!


次回、ドレスデン連合王国で起こっている確執が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
女性陣「ライバルが、2名追加?」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ