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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第四章 双龍戦争と世界大乱

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第9話 剣神アウグスタ

いつもお読み頂きありがとうございます!

 ロストス王国軍を率いるキンゴストス本隊を壊滅させたまでは良かったが、クロアス王国の剣神を名乗るアウグスタによって足止めを受けることとなった。


 せっかくの機会を逃したロンメル男爵は、淡い緑色の長髪をなびかせて泰然と佇む目の前のアウグスタに憎々しげな視線を向けた。

 歯噛みして悔しがりたいところだが、彼女がそれを許してくれない。



「閣下、このレイモンも助太刀しますぞい!」


「いや、それよりも逃げる本隊を追撃して少しでも兵を削れ。その方がティダーン攻略のためになる」


「既に騎士団長に任せております。問題はございませんぬぞ」



 レイモンにはロンメル男爵の対応が手に取るように分かっていた。

 伊達に長年仕えている訳ではない。



「2人で掛かってくるが良かろう。このアウグスタに敵なし……」


「剣神だか何だか知らんが、所詮は地方国家で名を上げただけ。むざむざ祖国を滅亡させておいて、よくも偉そうに言えたものだ」



 あくまで余裕の態度を崩さないアウグスタに、虚勢を張りながらロンメル男爵も挑発で返した。聞きづてならないと感じたのか口元を歪ませて、アウグスタがキッと睨みつける。



「我が国と我への侮辱……許せん」



 表情を怒りへと変えたアウグスタは、すらりと腰の大剣を抜き放つと技能スキルの【超加速】を使って、瞬時にロンメル男爵へと接近した。

 あまりの速度に慌てて槍の柄で、迫る大剣を弾くロンメル男爵だったが、大剣を手足のように操りながら連撃を繰り出すアウグスタに防御一辺倒に回る。



 ――懐に入らせる訳にはいかん!



 何とか隙を突いて石突きを跳ね上げ、アウグスタの丹田を打とうとするが、軽く躱された挙句に足払いを受けてロンメル男爵はバランスを崩した。

 そこへ――



「【落花流水らっかりゅうすい】」



 優しく流れるような滑らかな一撃が、ロンメル男爵の脇腹を薙ぎ斬った。

 攻撃の軌道がゆらゆらと揺れて、全く捉えどころがない。

 あんなものを受けきれるはずがないとばかりに、ロンメル男爵は激痛に襲われながらも『槍術』を発動して後方へ跳ぶ。



「【衝撃突き】」



 飛び退すさりながらの右手の一突き。

 文字通り衝撃を纏った突きは、追撃を掛けようとしたアウグスタの体を押し留めた。



「【烈光突き】」



 ロンメル男爵は立て続けに能力を発動する。

 槍が流星の如き光となり、動きを止めたアウグスタに迫る。

 まさに光のような速度を誇る自慢の一撃――


 流石にこれは止められまいとロンメル男爵がほくそ笑むが、そこで表情が固まる。アウグスタは綺麗にタイミングを合わせて、大剣を一閃すると完全に槍術を弾き返して見せた。



「狙いが見え見えなんだ。それでは私はれんよ」


「図に乗るなッ! 我が槍術に勝るものなしッ!」



 アウグスタの見え見えな挑発に、ロンメル男爵は敢えて大音声で怒鳴り返す。

 彼女の覇気に飲まれないように、そして自身の心を鼓舞するために。


 能力こそ通じなかったが、間合いを取ることには成功した。

 痛む傷に集中力を奪われながらも、ロンメル男爵はひたすら彼女の心臓目がけて刺突を繰り出し続ける。



「オラオラオラオラオラァ!!」



 相手は仮にも剣神と呼ばれる者――油断はできない。

 レイモンも迂闊に手を出す訳にもいかずに、近くで勝負を見守っている。


 その単調な攻撃をアウグスタは完全に読みきって軽々と躱し受け流しながら、またしても【超加速】を使用した。

 彼女の体が光で煌めく。



 ――待っていたぞ!



「【刺突・極】」



 その瞬間を狙っていたロンメルの刺突が、烈光よりも速い一条の光となり、アウグスタの下半身に肉薄する。

 彼女が前に出た瞬間の発動である。

 躱せるはずがない。

 ロンメル男爵はそう確信して口元を吊り上げた。



 しかし――



「【山紫水明さんしすいめい】」



 アウグスタの口からボソリと漏れた『奥義』によって軽やかな動きと共に、刺突が撫でられたかのようにその軌道を変えた。



「何ッ!?」



 驚きが思わず口を吐くが、その間にもアウグスタはロンメル男爵の目の前に迫ったいた。速く重い叩き付けられるかのような斬撃が、ロンメル男爵の胸板を打ち、彼は血をほとばしらせる。

 アウグスタは残心――



「単調な攻撃で目を引き付けておいて、他の箇所を狙う。浅はかなことだな」



 冷徹に言い放つアウグスタに、言い返そうにも言い返すことができない。

 ロンメル男爵の口からは罵倒ではなく、大量の血が吐き出されるばかり。


 慌ててレイモンが駆け寄るが、回復魔法が使えないのでハイポーションを飲ませようとするが、吐血により不可能だ。

 せいぜいロンメル男爵の胸の傷口に掛けることしかできない。



「閣下! お気を確かに!」


「さて、すまんが死んでもらおうか。さっさとティダーンに戻らねばならんのでな」



 こうしている間にも、ユベール軍が潰走するロストス王国軍を追ってティダーン城の方へと向かっている。

 アウグスタが無感情に言い放って、何とか上体を起こそうともがくロンメル男爵に歩み寄る。



 最早、彼の命も風前の灯――



 まさかこれほどの強さとは思ってもみなかった。

 こんなあっさりと勝負が着くとは……ロンメル男爵は覚悟を決めるが表情は悔しさに塗れていた。

 妻子のことだけが心残りなのだ。



「おいおい、誰かと思えば剣神アウグスタか……ロストス戦役には出て来ないはずなんだけどな。どうしてこうなった?」



 その場の全員の刻が止まり、声のした方へと視線を向ける。

 そこには騎馬から降りて、ロンメル男爵の方へと歩み寄るレクスの姿があった。



 ―――



 いきなりの子供の登場にアウグスタは戸惑いを隠せずにいた。

 レクスは年齢の割りには大きな体をしているが、その顔は何処となくあどけない。



「ロンメル男爵閣下、回復します。ここは私に任せてティダーンへ向かって下さい」



 そう言うとレクスは光魔法をロンメル男爵へと行使した。

 光に包まれた彼の傷が見る見る内に癒されて、あっという間に塞がってしまった。


 レイモンはこのような少年が、高位の回復魔法を使ったことに驚きのあまりに呆けている。見違えるように軽く楽になった体にロンメル男爵は、驚愕して身を起こすと槍を振るって動きを確認し始めた。



「何者だ。何故、私の名を知っている……?」



 アウグスタの鋭い視線がレクスを射抜くが、当人は全く気にしていなかった。

 むしろ、彼女が何故ここにいるのかが疑問であったのだ。



 ――アウグスタ・ダルストレーム


 クロアス王国の守護者として、長年に渡ってヴァール帝國と戦い続けた剣神。

 7剣神の1人として世界に名を轟かせるが7人の内の序列は4位。

 ロストス王国滅亡後に、グラエキア王国を頼って亡命。

 たまたまロストスの地にいたユベール軍に加わり、以後世界中を転戦して回る。

 職業は『剣豪』。双龍戦争ドラグニク・ウォーには関与しない。



「いや、ご高名は伺ってますから。でも何でこんなところに? 今頃はヴァール帝國と戦っているはずでは? しかもロストス王国に味方してるんですか?」


「……我が国のことをよく知っているようだ。我が国は滅亡しこの地に逃れたが、王子たちが捕らえられたのでな」



 質問を五月雨のように飛ばすレクスに、アウグスタは馬鹿正直に答えている。

 レクスはレクスで、歴史が変わったのか?と様々なことに考えを巡らせていた。



「ロンメル男爵閣下、お早くティダーンへ」


「わ、分かった。すまんが任せておく。行くぞ、レイモン」



 ロンメル男爵としては妻子のことが最優先事項であった。

 回復してもらっておいて何だが、レクスには犠牲になってもらう外ないと考えていた。2人は供廻りを連れて、先行するロンメル男爵軍を追うべく走り出した。



「それでアウグスタ殿、貴女の話から考えると、王子を人質に取られてるんですね? ですがここまで戦線が崩壊したとなると、ティダーンの陥落は必至ですし王子の身も危ない。直ちに護りに行くべきでは?」


「ティダーンの南にはデリンマがある。そこから増援があれば簡単には落ちんだろう。私は仕事をしたと言う結果を残さねばならない」



 アウグスタはロンメル男爵に注意を向けることなく、レクスを注視し続けていた。レクスとしては、説得して自らの手で救い出そうと考えて口を開きかける。


 しかしアウグスタは大剣を両手に握り締め、レクスへと突貫してきた。



「【勇往邁進】」



 話が通じないどころか、聞いてももらえないようだと判断したレクスは、すぐに剣を抜き放ちアウグスタを迎え討つ。

 流石は剣神と言うべきか、重量のある大剣を物ともせずにレクスの右肩、左脇腹を斬りつけ、出来た隙にはすかさず打ち込んでくる。


 レクスも連撃程度でどうにかなる腕ではない。

 守勢に回れば苦戦は必至――レクスは前に出てアウグスタの旋律のように流れる連撃をいなしながら、逆に猛烈な連撃を見舞う。



「何ッ……」


「止めろ、アウグスタッ! ここで時間を消費しても無駄なだけだッ!」



 レクスの言葉に耳を貸すこともなく、彼女の攻撃の手は止まらない。

 師匠である剣王レイリアよりも強いが、勝てない相手ではない。

 ただ時間が掛かる。

 つまり時間の無駄であり、囚われている王子の安全を考えると、あまりにも惜しい。


 視線と攻撃の位置が一致せずに、不意を突いた攻撃がレクスを襲う。

 ノールックでの正確無比な一撃。


 アウグスタの袈裟斬りが、左肩から抜けると判断したレクスは大きく一歩踏み込むと、振り切られる前に受け止めて鍔迫り合いに持ち込んだ。



「人の話を聞けよッ! 時間がもったいないッ! 王子は俺が助けるから引けッ!」


「子供に何ができる。多少腕は立つようだが、まだまだだ」



 人の話を聞け。

 そう心の中で叫ぶレクスだが、剣技で負けるつもりはなかった。

 だが、長々と貴重な時間を潰す訳にもいかない。

 レクスは歴史改変を利用して、彼女をユベールの駒からくさびに変えようと思い付いていた。

 これもユベールの暴走を止めるためだ。


 ふっと力を抜いたレクスは、鍔迫り合いで力を掛けていたアウグスタの体がつんのめるのを見て、軽装金属プレートに包まれた彼女の胸部に左手を触れた。



「4thマジック【強振破撃バル・ダング】」



「がはッ……」



 触れた物に衝撃によって破壊をもたらす魔法である。

 あまりの強撃にアウグスタは呻き声を上げて大きく吹き飛ばされ、レクスは後を追って彼女にまたがると首筋に剣を突きつけた。



「お前は……魔導士だと……?」


「ったく、人の話を聞けよ。だからな――」


「くッ……殺せ……」


「そう言うのはいいから。捕らわれた王子たちの情報を教えてくれ。ティダーン陥落前に俺が助け出す」


「駄目だッ! うぐ……キンゴストスにどさくさに殺されるだけだ」


「ちょっとは考えろよ。どの道、このままティダーンにユベール軍が殺到すれば結果は同じだぞ! 座して殺されるのを待つか、俺が救い出すのに賭けるかだ!」



 苛立ちを語気が荒くなるレクスの真剣な表情から、ようやく本気を感じ取ったのか、アウグスタは観念して了承の返事をした。


 大人しくなったアウグスタを念のために縛り上げると、白狼牙騎士団ガラル・オーダーとモルガンに任せる。


 捕まっている者たちの特徴を聞き出した。

 生き残っているのは王子と王女の2人で、共に逃亡してきた護衛は殺されたそうだ。名前はヨアキム王子、グレータ王女らしい。



「それじゃ行ってきますんで、ゆっくり来てください。セリアも油断するなよ?」


「うん……レクスもね」



 心配そうなセリアを宥めたレクスは、休む間もなく馬に飛び乗って駆け出した。

 騎士の1人が操る騎馬に乗せてもらい、いざティダーンへ。



「そういや、アウグスタってアホキャラ設定だったような……」



 そんなことを思い出しながら……。

ありがとうございました!

次回はティダーン攻略戦になります。

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明けましておめでとうございます 女性陣「「また女を口説いてる」」
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