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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 血盟旅団の乱と波乱への序章

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第59話 情報の共有とレクスの動向

いつもお読み頂きありがとうございます!

 前回とは違う個室に案内されたレクスが入室すると、全員の視線が一斉に向けられた。


 カルナック王家の第3王子フォロス、カルディア公、戦闘執事クロノス、亜神ホーリィ、王家の影〈蜃気楼シラクラム〉の隊長ウィリアムだ。



「取り敢えず、おめでとう。レクス殿。想定以上の強さだった」



 まずレクスに祝辞を述べたのはカルディア公だ。

 彼の表情からは余裕が感じられる。

 レクスの優勝を確信していたのだろう。


 丁寧に御礼を述べたレクスは、席に着くとすぐに話を進めようと口を開きかけるが、先に共有したい情報があるらしく待ったがかかってしまった。

 黙礼して話し始めたのはウィリアム。



「カルディア公の推薦を受けたレクス殿の情報と言うことで、現在、世界各地に影を放っております。ローグ公、ダイダロス公、アングレス教会、神殿騎士団、ガルダームの漆黒教団、ロストス王国が主ですが……外国にも」


「それで何か分かったのか?」


 淡々と語るウィリアムに対して、速く聞かせろと言わんばかりにフォロスが先を急かした。前回よりも表情が真剣な辺り、カルディア公にレクスのことについて、よく聞かされたのだろう。



「はッ、ローグ公はそれほど目立った動きはしておりませんが、水面下で貴族諸侯と文を交わしているようです。ダイダロス公の方はリーゼ王女殿下の王位継承の根回しだけかと思いましたが、ローグ公同様に貴族諸侯と連絡を取り合っている模様です。アングレス教会は猛者を集めているようですが、他には特に目立った動きはございません」



 黙って聞いていたレクスにカルディア公が視線を向ける。

 ローグ公とダイダロス公の後継者争いのことだろうと推察したレクスは頷いておく。



「そうだな。教皇自ら、竜前試合を観戦に来ているくらいだ。あの供廻り衆はそれなりの使い手のようだが」



 カルディア公の言う通り、レクスも教皇と12人の姿を確認している。

 間違いなく新しく12使徒となる者たちだろう。



「神殿騎士団ですが、別に動いているようでして王国各地で何かを探しているように見受けられます」


「その何かが知りたいのだが、分からんのか?」



 フォロスは少しせっかちなところがあるようだ。

 頭が回ると言う設定だったはずだが、同時にアングレス教――古代竜信仰の熱心な信者でもある。

 何を考えているか分からない以上、警戒しておくべきだろう。

 戦闘になることはないが、王都にて後継者争いに裏から関与したとある人物だ。



「不明です。現在はイグニス領にいるようですが、訪れている場所に一貫性がなく……ただ団長自ら動いているので重要事ではないかと存じます」


「もしかしたら古代竜の遺産か何かを探しているのかもねぇ……」



 ホーリィは頬杖をつきながら、横目でレクスを流し見つつ口を挟むが、恐らく彼女は聖遺物のような感覚で捉えているのだろう。

 亜神や神人は、古代神や漆黒神の聖遺物を探す目的を持つ者だからだ。

 当たらずとも遠からずと言ったところである。

 アングレス教会の意志とは関係なく神殿騎士団は動いている。

 彼らが『深淵なる真実(アビス・トゥルー)』を探していることをレクスは知っている。



「ガルダームの行方は知れません。代わりに漆黒司祭たちが各地で動いているようです。王国内だけでなく他国家にも接触しております」


「外国か……それは何処なのだ?」


「確認できたのは神聖ルナリア帝國、海底都市ファナゴリア、聖ガルディア市国(西方教会)、ジオーニア王国、ヴァリス王国、キルギア、ドレスデン連合王国、アルビオン王国です」


「まぁ周辺国家が多いな。そんなものか。……それで国内はどうだ?」


 相変わらず淡々と話し続けるウィリアムと、話を急かすフォロス。

 他の面々はそれほど緊張することなく、耳を傾けている。



「主に古代竜信仰ではない貴族……ただ気になるのはガルサダス枢機卿でしょうか」


「何ッ? アングレス教会とたもとを分かつつもりか!?」



 意外な名前にフォロスが驚いた声を上げているが、ガルサダス枢機卿はストーリー上で戦闘するボスの1人。現在行方不明になっているアウラナーガの宝珠サフィラスを入手するのは彼なのだ。

 その野心は凄まじく、金儲けにも積極的。

 利権に絡みついては絶対に離さない大蛇のような男である。



「そこまでは判明しておりません。彼奴らは直接出向いて交渉しており、捕らえて調べようとしても自害するため情報が引き出せません」


「ふむ。枢機卿の手で始末されている可能性もあるが、王家に何も言って来ない辺り敵対する線も捨て切れないな。アングレス教会との関係性はどうなっているのかな?」



 カルディア公は細い目を一層、細めて考える何やら考える素振りを見せる。



「1月の竜大礼拝りゅうだいれいはいを最後に聖地リベラには行っていないようです」



 それにしても竜大礼拝とは何か?

 レクスの知らない行事だが、記憶にないのでゲームが現実化した時に出来たのか、あるいは知らないところでできた設定なのか。

 どっちにしろこれは特に関係はなさそうだとレクスは判断する。



「要警戒だな。やはり何とかすべきは国内でしょう。レクス殿の言う通りアングレス教会は野心を持っているだろうな」


「外国勢力に関しては近隣諸国とは婚姻を結んでいる。よほど王国内が乱れない限り介入はせぬだろう。カルディア卿よ、アングレス教会は動くのか?」



 フォロス自身、ヴァリス王国の王女と結婚しているし、不浄戦争トゥレイ・ウォーの結果、周辺国と婚姻関係にあるのは事実。流石に妻の実家を疑いたくないのか、自信があるのか、彼の声には揺らぎがない。

 ただ、ここまで聞く限りアングレス教会の介入には懸念を抱かざるを得ないのだろう。実際、外国が介入してくるケースは少ないのだが、それでも双龍戦争ドラグニク・ウォーの戦況にそれほど影響はない。

 戦闘が増えるだけだ。ボス戦が増えると言っても良い。



「動くでしょう。恐らく新しく古代竜の力を持つ者を誕生させるのではないかと。そのために神殿騎士団を動かしているのでは?」



 流石のカルディア公だとレクスは感心する。

 正確ではないが、核心に近いところまで考えが及んでいる。



「となれば権威だけでなく権力まで手に入れようと画策している訳か……これは早急に教会に圧力をかけるべきだろうな。すぐに6公爵家に頼めるか?」


「承知致しました。迅速に動かねば手遅れになりましょう。恐らく太古の昔に聖イドラがやったことの真似事でもしようとしているのかも知れません」



 カルディア公の推測に頷く者は多く、ホーリィも納得顔をしている。

 フォロスの言葉から、少なくともアングレス教会よりもグラエキア王国を優先する考えのようだ。このゲームの世界観の中で、宗教に流されない辺り、有能だと考えても良いのかも知れない。


 レクスは情報を聞きながら自分がどう動くべきか考えていた。

 そして誰かに真実を告げるべきかも。

 ただ下手をすれば、異端者の烙印を押される可能性があるだけに慎重に考えなければならない。


 普通に考えるとカルディア公辺りが妥当なのだろうが……。

 ヒナノとテレジアに知れても助かったのは、彼女たちがたまたま古代竜信仰者ではなかったことだ。そう考えるとレクスは運が良かったと言える。



「(はてさてどうするか……? 東部へ行くのは確定だが……)」



 今は東部戦線に赴いて戦渦の拡大を止めるのが最優先だろう。

 ユベールが他国へ攻め込まなければ、レクス自身も双龍戦争ドラグニク・ウォーに専念できるようになる。



「これで現状把握はできたかな? どうだね。レクス殿から何かあるかな?」



 今のところ王家の影が把握している情報は出尽くしたようで、カルディア公がレクスの方へ顔を向けてくる。いつも通りの微かな笑みをその顔に張り付けているが、レクスは質問とは違うことを考えていた。


 カルディア公の権力、発言力は絶大で、公女シルヴィが助かって以降は心を入れ替えたのか、以前のような威圧感は減り圧倒的な余裕さえ漂わせている

 だが、レクスがゲーム知識で彼の裏の顔を知っていることも事実。

 そちらではシルヴィの命は助かってはいないとは言え、信頼するに値するのか?



「レクス殿? どうかしたのかな?」



 沈黙を貫くレクスに、不思議そうな表情で再度、問い掛けてくるカルディア公。

 ホーリィも相変わらず頬杖をついたまま、横目でレクスを見つめている。

 いつもの雰囲気からはかけ離れた神妙な表情だ。



「いえ、特にありません。これで私が東部戦線に赴くのは決まりと言う認識でよろしいですか?」


「私はそれで構わない。と言うか是非、行ってもらいたいと考えているよ。殿下もよろしいでしょうか?」



 少しばかり緩んだ表情に変わったカルディア公が、レクスに軽く頭を下げると隣に座るフォロスの方を見て尋ねた。尋ねたと言えば、語弊になるかも知れないが、()()()()()と言った感じに近い。


 それよりレクスはカルディア公が軽くとは言え、頭を下げて見せたことに驚いていた。

 周囲の者も同じ感想を持ったようだが……。

 貴族ともなればパフォーマンス1つ取っても意味があるのだろうが、一応は誠意の現れだと思うことにする。



「ま、まぁいいだろう。レクス君、しかと頼んだぞ? 兵は如何ほど必要だね?」


「ありがとうございます。兵士の方々は特に大丈夫です。私1人で参りますので」



 問われたフォロスも同じ感情を抱いたのか、上ずった声で賛同の声を上げた。

 有能設定の王子とは言え、まだ23歳ほどの青年である。

 権力闘争渦巻く貴族社会で逞しく生き抜いてきた歴戦のカルディア公には敵わないのだろう。



「では話はついたようなので、私はこれにて失礼致します。ホーリィ、ちょいと」


「んんん!? ええッ……何ぃ? 何なのぉ……!?」



 個室内にいる全員が押し黙る中、深々と礼をしたレクスはがっしりとホーリィの腕を掴んで退出した。

 伝えるべきことは伝えておこう。

 そんな決意を心に秘めて。

ありがとうございました!

次回、レクスが東部戦線へ出発。

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