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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 双龍戦争勃発

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第46話 竜前試合とグリンジャⅦ世

いつもお読み頂きありがとうございます!

 竜前試合は2回戦に入り、最初の組み合わせはレクスとロクサーヌとなった。


 レクスは1回戦のディアドアに続いて、魔法をメインに戦うロクサーヌと当たることになるが彼女は古代竜の血に連なる者だ。

 普通の魔法戦になるとは思えないが、レクスとしては現在の自分の実力を量る良い機会だと思っている。


 1回戦と同様に闘技場内への通路をゆっくりと往く。

 その先には輝かしくも眩い光が見えている。

 やがて闘技場内へ足を踏み入れると――観客の声援、指笛、拍手。

 観衆の熱気には圧倒されてしまうほどだ。


 闘技場の中央へと進み出たレクスの目の前には、黒髪のサイドテールが似合うイグニス公爵家令嬢の姿。愛想のない無表情に見えるが、戦闘になったらどのように変化するのか楽しみである。


『注目の戦い!! 魔法と剣を自在に操るレクスーーーガルヴィーッシュ!! 対するはイグニス公爵家のご令嬢、ロクサーヌ・ド・イグニスだーーー!! それではーファイッ!!』


「ドーモ、レクスくん。お願いします」


 開始早々、丁寧にもぺこりと頭を下げるロクサーヌに少しばかり拍子抜けするものの、レクスも気を取り直してそれに応える。

 これも日本人のさがと言うヤツだろうか?


「これはご丁寧に……よろしく、ロクサーヌ」


 そう言い終えたレクスは早速、腰の剣を抜き放つと足を一歩前に踏み出した。

 ロクサーヌもそれに倣うが、魔法を主体に戦うつもりなのか後方へと大きく跳んでレクスと距離を取る。


 もし実力が伯仲しているならば、勝負が一瞬で決まる場合も往々にして見られる。

 

 取り敢えずは牽制から行くか。

 そんな風に考えていたレクスが魔法を発動する前に、ロクサーヌが先手で魔法陣を展開した。


「4thマジック【轟渦爆炎ブレイズ】」


 ディアドラと同じかよ!

 もう殺しに来てるとしか思えない。

 「これ俺じゃなかったら死んでね?」と思わざるを得ない。

 極炎が大渦となって出現し、レクスの周囲で荒れ狂う。


 多重に纏っている魔力障壁だが、ディアドラ戦と同様に魔法の力はレクスには届かない。

 


 微かな気付き――外面が融解しかかっている。



「流石の古代竜の血脈だけはあるってことか……」


 ただの魔力練成の精度が高いだけの可能性もあるが、威力がディアドラよりも高いのは間違いない。


 レクスは風を切って駆けると、あっという間に炎の渦から抜けて一直線にロクサーヌへと突進する。


「4thマジック【爆撃烈風ウインドボム】」


 もう少しで届く!

 そう思われた瞬間、ロクサーヌの声が響き渡り爆裂弾が暴風に乗ってレクスへと迫りくる。次々とレクスが展開している地面や魔力障壁に命中したそれは、大爆発を起こして辺りに土煙を巻き起こした。

 威力こそレクスに届かなかったが障壁が幾つか崩壊してしまう。


 視界が利かない上、暴風で身動きが取れない中でレクスも魔法を使うべく魔法陣を展開した。防御にばかり回っているのは得意ではないし、やられっぱなしは性に合わない。



 その時――煌めく光。



 それが何か直ぐに理解したレクスは剣で飛び来るニードルを斬り払う。

 レクスが攻撃に転じようとしたタイミングに合わせるかのような攻撃。


「(風に乗せて流しやがった……)」


 正直、暴走したイシュタルよりも冷静に見ているのかも知れない。

 それとも1回戦を見て考えたのか?


 とにかく攻撃しないことには始まらないと、レクスは土煙の中から飛び出してロクサーヌを視認。

 技能スキルを使って爆発的な瞬発力で、間合いを一気に詰める。

 ロクサーヌも剣を持っているが――


「1stマジック【大地障璧アースウォール】」


 レクスの目の前に地面からそそり立つ大きな土の壁が出現した。


 だが――甘い。


 すかさず魔力を込めた剣で土壁を破壊したレクスだったが目の前には誰もいない。

 瓦礫と化した土塊つちくれがその硬さを失っていく。

 後には土煙が漂うのみ。


 すぐにロクサーヌの意図を直感的に理解したレクスが魔力波を飛ばす。


「(壁を造り続けて、隙を見て攻撃魔法を叩き込むつもりか……?)」


 魔力を僅かでも持つ者であれば必ず感知して発見できる精度の魔力波だ。

 レクスのように完全に魔力の力を抑えこめるほどの魔力操作が出来ない限り、必ず見つけられる。


 体をロクサーヌがいると思われる方向に向けた瞬間、再び魔法の力が解放される。

 

「1stマジック【大地障璧アースウォール】」


「やっぱりかよ……」


 思わず舌打ちをしそうになるほど面倒な作業が始まりそうだとうんざりしつつも考えるレクス。


 やはりここは第4位階魔法で決める!

 それと念のためにもう1つやっておこう!

 魔力波の分析だ。


 出現した土壁をまたもや叩き壊したレクスが魔法を使うべくタイミングを計る。

 習った魔法は反復練習で慣れるべき!

 そこへ三度みたび、同じ魔法。


「1stマジック【大地障璧アースウォール】」


 盛り上がる大地。

 そしてレクスによりすぐに叩き壊される壁。

 ロクサーヌも一発逆転の目を狙っているのだろうが……。


 決着の刻は近い――




 ◆ ◆ ◆




「(なんで? なんでこっちの居場所が分かる?)」


 ひたすら【大地障璧アースウォール】を連発するロクサーヌの頭は既に混乱状態だ。

 何度も何度も破られる。

 いとも簡単に。


 第1位階魔法とは言え、強力な分厚い防御壁なのだ。

 しかもロクサーヌの魔力で練成した以上、その強度は一般の生徒を軽く凌駕する。

 それを魔法ではなく剣の一振りで破壊してくる――化物。

 背中に悪寒が走るほどの。



 異常! 異常! 異常!



 全てにおいておかしい!


 何処に居場所を移そうと、レクスはすぐに感知している様子だ。

 速いところ大規模魔法で葬りたいが、その隙さえ与えてはくれない。


「(さっきの【轟渦爆炎ブレイズ】も【爆撃烈風ウインドボム】も簡単に防がれちゃった……正直、勝てる気がしない)」


 そしてもう何度目になるか分からない破壊音が聞こえてくる。


「1stマジック【大地障璧アースウォール】」


 ――古代竜の力を使うべき?


 そんな考えが脳裏を過るが、イシュタルのようなことになっても困る。

 もし極大魔法を使用すれば、闘技場内は確実に炎の地獄と化すし、防がれでもしようものなら自身のなけなしのプライドにも傷がつく。

 ほんのちょっぴりだが。



「(それにしてもガイネル先輩との試合……イシュがあんなに取り乱すなんて……)」



 しまった!

 気が逸れて好機を逃してしまうところであった。

 破壊音が途絶えた今が―― 


「4thマジック【地精波紋グラ・リプレ】」


 闘技場に響いたのはレクスの言葉、太古の言語(ラング・オリジン)

 ロクサーヌに生まれた僅かな隙――それが勝負の分かれ目になる。

 そんなことは彼女の父親であるイグニス公から耳が痛くなるほど聞かされていたはずなのに。


 水面に落ちた水滴が起こしたかのような波紋が大地に生まれて同心円状に広がっていく。波紋に触れた瞬間、地面から強力な衝撃を受けてしまう魔法で、空中に跳ね上げられて大地に叩きつけられて再度ダメージを受けるまでがセットだ。


 そんな魔法が【大地障璧アースウォール】すら貫通して波紋がロクサーヌに迫る。


「くッ! 2ndマジック【飛行フライ】」


 焦りを声に滲ませて慌てて空に浮かび上がるロクサーヌ。

 間一髪だったので安堵し掛けたその時――大きな破壊音。


 迫りくるのは――レクス。


 ロクサーヌの左側から鋭い風切り音と共に中段の薙ぎ払い攻撃がくる。

 速くて上昇は無理――なら――


 右手に持つ剣を盾にして左腕で支える!


 走る衝撃とブレる目線。


「かはッ……く……」


 気が付けば大地に倒れ伏していたロクサーヌ。

 強烈な一撃を喰らって吹っ飛ばされ、地面に何度も叩きつけられたのだ。


 息が苦しい。


 慌てて上体を起こすと、そこには剣を突きつけるレクスの姿があった。


 ロクサーヌの脳裏に極大魔法が過る。

 流石のレクスでも防げまい――




 降りる沈黙。




 圧し掛かるプレッシャー。

 レクスの何処か無機質な瞳から目が離れない。

 そして徐々に精神的に追い詰められ、疲弊していくロクサーヌ。

 再び過ったのは――極大魔法でも防がれる。


 ロクサーヌの口から出たのは別の言葉であった。


「参りました……」




 ◆ ◆ ◆




 闘技場の貴賓席には、アングレス教会の教皇パパス・グリンジャ――グリンジャⅦ世も参列していた。

 当然だが、古代竜信仰のトップたるあの教皇である。

 周囲には12人の若い男女が同席していた。

 警備なら立っていて然るべきなのだろうが、彼らはグリンジャⅦ世を囲むように座っている。


「今の小僧はどうじゃ……? お主たちならばどう対応する?」


 広い貴賓席の一角。

 他の観覧者からは離れた位置にいるものの、まるで聞かれたくないかのように用心しながらグリンジャⅦ世が小声で問うた。

 表情は真剣で声からは警戒感が感じ取れる。

 その問いに12人が口々に思ったままのことを口にするが、それは権威ある教皇に対する言葉遣いではなかった。


猊下げいかーなかなかの強さだと思いますよー? あの坊やは」


「そうだな……まぁ所詮は古き使徒の子(ロクサーヌ)と言うことかも知れんが」


「過大評価では? 私は調子に乗っている子供に過ぎないと思いますがね。それよりも警戒すべきはイヴェールの4男ではありませんか?」


「確かにファドラの娘を完封した訳だし、そうかも知れないわね……古代竜の力も吸収できるようですし」


 彼らの会話をジッと聞いていたグリンジャⅦ世が、彼らに噛んで含めるように言い聞かせる。

 力を与えたは良いが命令に従わないようならその力を再び剥奪せねばならない。

 グリンジャⅦ世はその駒を持ってはいるが、自身に力がある訳ではない。



「お主らには『竜核の種(ドラグ・エイス)』が埋め込まれ、既にフレデリクにより融合は成った。役割は理解しておろうな?」



 悲願達成のためには、王国の混乱に乗じて勝負を決める必要があるのだ。

 グリンジャⅦ世の声色に強い意志の力を感じ取ったのか、1人の男が日々言い聞かされていることを口にする。


「分かっております。猊下。全ては聖イドラの復活のために」


『全ては聖イドラの復活のために』


 残りの11人も男に続き、静かに声を重ねた。


 12人の使徒ゾディアック・サフィラスによる聖イドラの復活、そして神聖アングレス帝國の建国。


 全てはこの大いなる野望のため。

次回、竜前試合と大長老衆筆頭・傲慢のスペルビアと。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新です。

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