表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 双龍戦争勃発

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/165

第41話 竜前試合 ③

お読み頂きありがとうございます。

 無事にディアドラとの戦いに勝利したレクスがセリアとハイタッチして喜びを分かち合う。


 視線が交錯してお互いの感情を伝え合う。


 セリアの1回戦の相手は中等部3年のガランドと言う生徒で子爵家の第2子、職業クラス騎士ナイトらしい。特にこれと言った特徴がないように見えるが、トーナメント戦まで残っている時点で十分な強さを持つと考えた方が良いだろう。

 竜前試合の出場者でも観戦は自由なのでレクスもそうすることに決めて移動する。


 円形の闘技場内でセリアとガランドが対峙し真っ向から視線をぶつけ合っているのが分かる。同様に熱気渦巻く中でも両者の間にはぴりぴりした張りつめた雰囲気が漂っているようだ。


『ではーーー!! セリア選手対ガランド選手!! ファイッ!!』


 アナウンスと同時に2人は剣を抜き放つとすぐに能力『暗黒剣』と『騎士剣技』を発動した。


「【漆黒剣】」

「【斬空閃】」


 セリアが横っ飛びで大地の転がって飛びくる刃の斬撃を躱して、体勢を立て直すと剣を横薙ぎに払う。突如としてガランドの周囲に闇より深き漆黒のもやが出現し、彼は闇へ包まれた。


 これはガランドの失着だろう。

 恐らく暗黒騎士ダークナイトのことを理解していないが故だろうが、迂闊過ぎる。

 これが『聖剣技』であれば警戒もしたのかも知れないが。


 その間にセリアはあッと言う間に間合いを詰めて、ガランドへ肉薄する。

 既に闇の靄は晴れているが、彼の様子は明らかにおかしく弱体化しているのが傍目にも良く分かる。

 それでもセリアの袈裟斬りを何とか受け流し、カウンターの刺突を放つ。


「くそッ……」


 ガランドの口から後悔の言葉が漏れるが、動きが明らかに鈍くなっている。

 【漆黒剣】に限らず『暗黒剣』の能力は弱体化デバフ吸収ドレイン系の種類が多い。

 中でも【漆黒剣】は弱体化に加え強烈な肉体的、精神的ダメージを与えるかなり強力な技だ。


 セリアの努力の成果が窺える。


「はぁッ!!」


 セリアの畳み掛けるような連撃が、上下左右からガランドに肉薄する。

 何とか捌いているが剣のキレはセリアが1枚も2枚も上手だ。

 開始直後の【漆黒剣】のダメージもあるだろうが。


 トーナメントの初戦がレクスとディアドラとの大規模な魔法戦だったからか、剣での熱い戦いにも若干、観客席のボルテージが下がっているようだが……。

 それでも大きな歓声が戦う両者に送られている。


 そんな中でセリアとガランドの間では澄んだ剣撃の音だけが響き渡り、細かい呼気と消耗して疲労を感じさせる吐息が聞こえていた。

 ガランドがバテてスタミナ切れのようで、セリアの攻撃が当たり始める。


「畜生が!」


 気合を入れて破れかぶれに剣を振るうも、キレのない大振りの攻撃などセリアに当たるはずもなく、素早い動きで翻弄し続けられるガランド。

 レクスが考えていたよりも彼女が強くなっているのは単純に嬉しいものだ。




 ――当のセリアは。


「(よし! このまま攻撃を続ければ勝てる!)」


 初撃の【漆黒剣】が決まったこともあって、自分の理想の戦い方ができていることに彼女は満足していた。


 ガランドの息は上がって乱れ、視線も揺れ始めている。

 

 後は勝ちまでの道筋。

 剣と剣での戦いは一歩間違えれば相手を殺してしまいかねない。

 魔法戦になれば、絶対魔力障壁の力により、威力が軽減されるのだが、事、剣技のみでの戦いになると実力が伯仲するほど危険になる。


 よって小型の損傷回避型障壁の魔導具を身に付けている訳だが、攻撃を受けると斬撃は通さないがダメージのみが伝わるようになっており、これは現在でも解析不能な古代人こだいびとの遺産である。


「くそぉ! 女ぁ! 調子に乗るなッ!」

「女って言わないで! 私はセリア! 貴方を倒す者の名よ!」


 魔力を剣に乗せた一撃でセリアが左から剣で斬り払う。

 ガランドにはもうそれを受けきるだけの体力はない。

 思いきり体に斬撃によるダメージが伝わり大きく吹き飛ばされる。 


 体を土で汚し、惨めにも醜態を晒しながらガランドが吠えた。


「俺は負けてない! お前が押しているのは暗黒騎士ダークナイトだったらだ! 能力ファクラスがなければ俺の勝ちは揺るがないッ!!」

「そう。なら貴方も努力して他の職業クラスになれば良かったんじゃないの? 例えば聖騎士とか」


 あまりの正論にガランドが絶句する。

 何も言い返せない悔しさのあまり目を見開いて歯を食いしばっている。


「くそッ! 喰らえ! 【粉砕撃ふんさいげき】」


 目を血走らせながらセリアに正面から突っ込むと、ガランドが『騎士剣技』を発動した。


 ――騎士剣技は強力だけど。


 ガランド渾身の一撃だったが、セリアに軽く回避されて顔面から地面に突っ込んだ。

 『騎士剣技』は威力はあれど隙ができやすい。

 よってコンビネーションが重要になってくるのだが、ガランドは理解していないようだ。


「俺は今までトップだったんだぞ……今年の1年は何なんだ……くそッ!」

「そうやって驕ってきた結果じゃないですか? 能力ファクタスが駄目なら斬り合いをしますか? 先輩」


 セリアの言葉に煽りを感じ取ったガランドが雄叫びを上げながら立ち上がりまたもや正面から斬りかかる。そんな気持ちなど彼女は全く持っていないのだが、受け取り手によってはそう感じられたのだろう。


「【超推進】」


 瞬間――爆発的なまでの推進力を得てガランドはセリアの目の前に迫っていた。


 ――技能スキル

 右手から突き出された刺突の剣先が、セリアに肉薄する。


 それを半身になって躱したセリアは、ガランドの剣を上から叩きつけると地面に突き刺さってしまう。ガランドが何とかして抜こうとする剣を右足で押さえたセリアは、前のめりになってがら空きになった背中にトドメの上段斬りをお見舞いした。


「うぐぅ……」


 強烈な衝撃を受けたガランドが沈む。

 セリアは敵がもう動かないことを確認して剣を空へと掲げた。


 勝利宣言だ。


 直ちに救護班が気絶したガランドへ近寄って治療を開始する。


『勝者はロードス子爵家の暗黒騎士! セリア嬢!! その高い技術で強敵のガランドを退けたぞーーー!!』


 勝利のアナウンスがされると、セリアは剣をしまって観戦していたレクスに満面の笑みを浮かべながら手を振った。

 その場でぴょんぴょんと飛び跳ねながら。


 その後、合流したレクスとセリアは再びハイタッチを交わし喜びを分かち合う。


「えへへ……どうだった? ちょっとは強くなれたかなぁ?」

「正直言うと相手との差があり過ぎて測れない気もするけど、強くなってるのは確かだな」


 素直にレクスに褒められたことが嬉しかったセリアの顔がとろけている。


「えへへぇ……」

「まぁ初戦はこんなもんだろ。次が強敵だぞ!」

「そうだね……順当に行くとマルグリットかブラドリィルさんかぁ……」


 レクスによって一気に現実に引き戻されたセリアが、憂鬱そうにため息を吐いた。

 そう。マルグリットは聖女なのに殴り合いも強いのだ。

 神聖魔法に加えて彼女の主武器である巨大十字架による物理攻撃。

 ブラドリィルに至っては全てが未知数である。

 どちらが来ようが激戦になるのは間違いないだろう。


「ま、まぁもうしばらくは喜んでてもいいと思うけどね……」


 セリアの不安げな表情を横目で見て、レクスもしまった!と思ったようでフォローの言葉を掛ける。

 そんな彼の気持ちが何処か心地良く感じられてセリアは再び微笑んだのであった。




 ◆ ◆ ◆




「いやー中等部はいきなり激しかったねー。あーしは興奮しちゃったよー」

「僕はちょっとレクス君が強過ぎだと思うんだよね……」


 貴賓席で戦いを見守っているヒナノとテレジアが、能天気に勝負の感想を漏らしている。この場には王国の貴族、貴族諸侯の騎士団長、使徒、王家、アングレス教会はもちろん他国の重鎮なども観覧に訪れている。


 ジャグラート懲罰軍が未帰還のため、この場にいるのはカルディア公だけだが、彼もレクスの戦闘力の高さに舌を巻いていた。


 使徒でも敗れる可能性。


 それがカルディア公の頭を過る。

 危険な存在だが、恩もあり弁えてもいる。

 そして何かのために動いている。

 そう考えると決して無碍にはできないし、カルディア公自身、レクスのことは気に入っていた。


「いやぁ小等部はともかく中等部はいきなり凄いもんが見れましたなぁ……足を運んだ甲斐があったと言うもんですな。はっはっは!」


 呑気な口調でそう言ったのは隣国、神聖ルナリア帝國から訪れた火の賢者――ファラドス・レガトスである。世界7賢者の1人であり火魔法を操らせれば右に出る者なしと言われている魔導士だ。


 ぼさぼさの黒髪に無精髭。

 フードのついた真っ赤なローブを着た何処にでもいそうなおっさんなのだが、雰囲気だけは纏っている。


 その赤い隻眼が捉えたレクスの姿は一体どのように映ったのだろうか。


「彼は単なる騎士家の子だよ。レガトス殿。しかし神聖ルナリア帝國が貴公を送り込んでくるとは些か予想外であったな」


「ほう……騎士の子があのような魔法の使い手とは……攫って行きたいくらいですなぁ。はっはっは! しかしカルディア公、我が国が派遣したんではなくて俺が見たかっただけなんですよ。勝手に来たもんでご勘弁を!」


「私もレガトス殿がいらっしゃるとは思いませんでした。古代竜にはこの出会いを感謝せねばなりますまい。ですがレクス殿は我が国の前途有望な若者ですからね。攫うのはご勘弁願いたいものです」


 カルディア公とレガトスの話に、カルナック王家第3王子のフォロスまで加わってただならぬ雰囲気になってしまっている。


 背後で腹の探り合いが始まったようだが、ヒナノには関係ない。

 思ったのは「レクスっちもまたまた大変なことになりそうだねー」だ。


「おー今度はロクサーヌ嬢が出るねー。こりゃ勝ち確やねー」

「相手の生徒には同情するするねぇ」


 レクスの将来を心配しつつも、このキナ臭いご時世に生徒や国民には是非、娯楽として楽しんでほしいものだとヒナノは考えるのであった。

次回、竜前試合・中等部トーナメント戦は続いていく。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ