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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 双龍戦争勃発

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第38話 竜前試合 ①

新連載を開始しております。

是非、読んでみて頂けると嬉しいです。


◆2度目の人生はゲーム世界で~NPCと共に国家ごと転移したので覇王ムーブから逃げられません~

VRMMORPG『ティルナノグ』のゲーム世界に転移した主人公。

元NPC達の手前、覇王ムーブで威厳を保ちねば……

勘違いと無自覚で無双しながら異世界を生き抜く!

https://ncode.syosetu.com/n2852lf/


いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

 いよいよ竜前試合が開催される運びとなり、ロイナス王太子の喪に服していた国民たちは久しぶりの娯楽に明るさを取り戻していた。


 竜前試合は一般の部、貴族士官学院、王立学園統合科の中等部及び、小等部ごとに行われる。


 レクスが出場するのは中等部である。

 試合はトーナメント方式で行われるが、参加希望者がとても多いため事前の予選で弱い者はふるい落とされることとなる。

 レクスは余裕で突破しており、特に緊張することもなく当日を迎えていた。


 王都には多くの人々が各地から集まるため大変賑やかしい。

 スターナ村からもテッド、リリアナ、リリスなど、村人たちがやって来ていた。

 ミレアの家族も一緒だ。


「レクス、久しぶりだな。少しは帰って来いよ」

「本当に貴方って子は……」


 手紙で近況報告をしていたにもかかわらず、テッドとリリアナは不満そうな表情だ。とは言え、目は笑っているので元気なレクスを見ることができて安心したのだろう。


「ああ、ごめんごめん。討伐隊で叛乱軍と戦ってたからね。帰る暇がなかったんだ」

「えーおにいってばそんなことしてたの? 悪い人やつけてたの? 正義の味方なの?」


 一方のリリスは知らなかったらしく、マシンガンのように質問をぶつけてくる。


「ああ、そんなもんだ……」


 そう肯定はしたもののレクスの表情が曇る。



 正義の味方――断じてそんな者ではない。



 レクスが殺してきた者は全て重い物を背負って自らの正義を懸けて戦っていた。

 仲間が増えた。

 護りたい物が増えた。

 だからレクスは戦い、結果的に国に貢献することとなった。

 そこには大義はあったかも知れないが、正義があったのか胸を張って言うことはできない。そもそも正義など時の流れと共に移ろいゆくものだ。


 俯き加減になったレクスの前には、いつの間にかテッドが立っていた。

 レクスの両肩に優しく手を置いてポンポンと叩く。


「レクス。お前は色んな人たちと戦ってきたんだな。そこで彼らの感情と向き合ってきたんだろう。お前が王国のため、ひいては大事な者を護るため、矜持を護るために戦ってきたことは俺が良く分かってる。そんな顔をする必要なんかない。お前は俺がいうまでもなく理解しているはずだ。誰かがやらなければならないことだったんだ。叛乱が拡大していれば俺たちだって巻き込まていたかも知れん。お前が護ってくれたんだ。少なくとも俺はお前に感謝してる。それを忘れないでくれ」


 レクスは命を懸けて戦った者たちの想いを忘れてはならない。

 それだけではなく命を懸けて護った者たちの気持ちも忘れてはならないのだ。


「ああ、分かった。大丈夫だよ」


 本当は俺の方が年上なんだがな……。

 テッドには、家族には、更に言えば仲間たちには救われっぱなしだ。

 レクスにはそう思えてならない。


「あッレクス! もうすぐ小等部の試合が始まるって! 私たちは出店ブースのケアしなきゃ。運営本部に行きましょ!」


 セリアがレクスの姿を見つけて走ってきた。

 息を弾ませながら隣まで来るとテッドたちを見て慌てて頭を下げる。


「こ、こんにちは! テッドさん、リリアナさん、リリスちゃん! お久しぶりです!」

「セリアお姉ちゃーん!! ゴロゴロ」


 テッドたちからしてみれば貴族に頭を下げられると返って恐縮してしまう。

 抱きついて甘え出したのはリリスくらいだ。

 お子ちゃまだからな。


「レクスも出るんだろ? お前がどれだけ強くなったか期待してるぞ?」

「ああ、負ける気はないよ。問題ない」

「やっぱりお前は自信満々な顔で笑ってた方がいいよ」


 テッドの期待には応えたい気持ちがある。

 リリアナも見慣れた笑顔で励ましの言葉を述べる。


「頑張りなさい? 貴方は自慢の子よ?」

「そーそー取り立てられて貴族になっちゃったりして!」

「おいやめろ!!」


 テッドとリリアナの激励はともかく、リリスの言葉はフラグになりそうで怖いんだよ。

 先日のカルディア公の言葉が頭を過る。

 カインとミレアもテッドや村人たちとの再会を喜んでいる様子だ。

 その後、引っ付いて離れないリリスを引っぺがしてレクスとセリアは大広場の運営本部へと向かった。


「あ、やっと来たわね。もう設営は終わってるけど、定期的に巡回して、ゴミを片付けて、トラブル対処して――」

「分かってるわ。ローラも心配症ねぇ」


 2人の姿を見つけるなり、ローラヴィズが近づいて小言を言ってきた。

 どうやらお冠のようだが、セリアが手で口をふさいで黙らせた。


「ローラすまんな。ちゃんとやるから大丈夫」


 レクスの言葉に頬を赤くしたローラヴィズがため息を1つ。


「もう……しょうがないわね」


 今日もローラヴィズが可愛い。

 レクスが真剣にそう考えていると聞き慣れた声がして、駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。


「ああ! レクス様! ご家族とはお会いになられましたか?」

「はい。シルヴィさ、シルヴィが呼び捨てにしろって言ったんですよ? ちゃんと守らなきゃシルヴィ様って言っちゃいますよ?」


「あ、そうですね! レクス……くん。うーやっぱりダメ! 恥ずかしいわ。レクスくんって呼ぶ!」

「まぁどっちでもいいですけどね……」


 レクスは年上相手に呼び捨て出来ないタイプである。

 結構頑張って呼び捨てにしてるんだけどね。


 全員揃って運営本部のパイプテント内に座って待機の時間だ。

 交代で2人ペアになって巡回を繰り返す。

 迷子やら、ゴミの片付けやら、喧嘩の仲裁やら、店舗トラブルやらに対処しなければならないのだ。一応は大人の警備員もいるのだが、これも生徒の教育のためだそうだからしょうがない。実際、色んな場面への対応力が求められるから教育の一環であると言われれば確かにそうなのだろう。


「ああぁ……私、試合勝てるかなぁ……」


 そんな中、セリアが情けない声を上げるが気持ちは分からんでもない。

 使徒の子女が出る時点で厳しい戦いになるのは間違いないからだ。


「セリアも稽古してるんだし大丈夫だよ。んで中等部は誰が出るんだっけ?」

「えっとね……Sクラスからはシュナイドとディアドラとマルグリットとブラドリィルさんかしら」


 レクスも覚えていなかったのでローラヴィズが代わりに答えた。


「あれ? シュナイドは予選落ちじゃなかった?」

「あ、使える闇魔法が少なすぎるーって叫びながら殴り合いで戦ってたわね」

「確かにあれは笑えたな。殴り合いならマルグリットが強過ぎる」


 思い出したのかセリアがシュナイドの名前を挙げる。

 確かにそうだ。

 ローラヴィズも思い出したようで少し笑いそうになるのを堪えている。

 マルグリットに巨大十字架で殴り倒されていたシュナイド――哀れ。


「でもブラドリィルさんも余裕綽々だったみたいだけれど……」

「ありゃ別格だよ。ま、俺なら勝てるけどな」


 暗黒闘士のブラドリィルは格闘戦において右に出る者は中々いなさそうではある。


「レクスったら久々に強気じゃないかしら?」

「そうね。らしさが戻った気がする」


 ローラヴィズとセリアが何やら言っているが、レクスとしては自分のことがいまいち分からない。

 傍から見た方が分かることもあるので、2人がそう言うのならそうなのだろう。


「後はテステム先輩とイシュタル先輩……あ、同級生ならロクサーヌさんがいたわね」

「使徒のお歴々か……」


 ローラヴィズが名前を挙げた3人、テステムはダイダロス公子、イシュタルはファドラ公女、ロクサーヌはイグニス公女だ。

 古代竜の血に連なる者なので別格である。

 と言うかイシュタルは試合に出ても大丈夫なのかと疑問に思うレクス。


「まぁ言うて宝珠サフィラスを受け継いでないんだしな。血統より努力した方が勝つに決まってんだろ」


 レクスは日々剣技を磨き、魔法の鍛錬をしてオリジナル魔法まで創ってきた。

 負ける気はさらさらない。


 試合は王都内の闘技場で行われる。

 多くの観戦者が詰めかけて、かなりの盛況さを見せているようだ。

 もちろん飲食店ブースや武器などの出店ブース、地方の特産物、工芸品、美術品などを取り扱う店もある。日本のお祭りのような子供のための娯楽ブースは少ないが、時代的な背景からくるものだろう。


 何にせよ。

 今日から3日に渡って行われる竜前試合がここに開幕した。

次回、竜前試合の合間のお話。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。

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