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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 双龍戦争勃発

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第37話 王家の影

本日12時より新作2作品の投稿を開始します。

タイトルは以下の通り。そちらも是非、読んでみてくださいませ!

◆2度目の人生はゲーム世界で~NPCと共に国家ごと転移したので覇王ムーブからは逃げられない~

https://ncode.syosetu.com/n2852lf/


いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

 カルディア公との密談を終えて、レクスに日常が戻ってきた。


 ストーリーだからと言ってここのところ、戦い通し――非日常の連続だったのでレクスにとって日常は貴重であった。


 朝は希望と共に目覚め、日中は勉学に励み、夜は趣味と言う名の剣の稽古や魔法の研究、そして心地良い疲れと共に眠りにつく。

 これが案外、難しいことなんだなとレクスはしみじみ実感していた。


 のだが……眠い。


 眠いのだ。

 勉学に励みたいのは山々なのだが、授業が退屈で仕方ないのが原因であった。

 やはり教育水準は高くない。

 一応、この世界の理解に繋がると思って頑張って聞いてはいるが、早々ストーリーに絡んできそうな知識など出てくるはずもなく。


「レクス、レクスったら……!」


 小声ながら少し強めな言い方で、声を掛けてきたのはセリアであった。


「んー? あ、セリアか。何かあった?」


 寝ぼけ眼をこすりつつレクスは欠伸をしながら答えた。

 

「竜前試合の件なんだけどさぁ……出店の管理しなきゃいけないじゃない? 遅れてるし今日学園終わったらお店回らない?」

「んーいいよ。これ以上遅くなったらマズそうだし。でも出店申請来てる店舗一覧とかまとめなきゃいかんのじゃない?」


 竜前試合には多くの屋台が軒を連ねる。

 どの店がどの場所にどんな飲食物を提供する屋台を出すのかをしっかり管理する必要があるのだ。

 立地の良い場所は料金が高くなるし、競合も出やすいため抽選となる。

 出店が無料のフリースペースも設けられるのだが、流石に雑多にならないように飲食、アイテム類、雑貨類、物産などで分ける必要もあるので事前審査は必要不可欠であった。


「大丈夫! 私がまとめておいたから」


 そう言ってにっこりと天使の微笑みを見せるセリア。

 流石は有能。

 しごできが過ぎる。


「凄いな。って言うかごめんな。俺ほとんど仕事できてないわ……」

「仕方ないよ。事件に巻き込まれてたんだし、カルディア公とも会ったんでしょ?」


 セリアやローラヴィズには誘拐事件の件を伝えている。

 流石にカルディア公と密会したことは、セリアしか知らないが。

 応接室にはいなかったが、あの時、彼女は居室にいたのだ。

 今思えば、ホーリィが同席を望んだのは、セリアに諦めさせるためだったのかも知れない。


 セリアが密会に立ち会いたがったからだ。


「まぁ、色々と巻き込まれるんだよな。本当はもっとやるべきことがあるんだろうけど」


 やるべきこととはイベント達成と、ルート攻略のための準備である。

 レクスが直接、話に出向いたことでガイネルの心の整理がついたのではないかと考えている。

 当然、オーガスティン廃砦の戦いが忘れられない出来事なのは理解しているが。

 なのでガイネルならゲーム通りに、アングレス教会や神殿騎士団との戦いを乗り切ってくれるだろうとレクスは思っていた。


 ならば自身がやるべきなのは漆黒竜側のガルダームの動きを阻止することや、ガイネルのバックアップになるだろう。

 そのためにもレクスにも一緒に戦ってくれる仲間が必要だ。


「レクスは色々と考え過ぎなのよ。頑張ってるのは皆知ってるんだし、もっと気楽に楽しんでもいいとおもうわ」

「そうかな?」


 レクスの疑問にセリアは咲き乱れる華の如き可憐な笑みを浮かべた。


 すぐに授業が終了しホームルームの時間になると、担任のアスターゼからも竜前試合の話が出た。試合は生徒であれば誰でも出場が可能なので、腕に覚えがある者は速めに申請しろと言うことである。


 そして最後にアスターゼは超巨大な爆弾を投下した。


「あ、そうそう。Sクラスを代表してレクス君に出てもらうことに決めましたから、レクス君はその実力を十分に見せ付けてくださいね」

「はぁぁぁ!? いや先生? 本気ですか? そんなの聞いてないんですけど!」


 初耳の事態にレクスが驚きの声を上げたが、あまりにも予期せぬことだったので思わず声が大きくなってしまった。ついでに椅子から落ちそうになる。

 その抗議の声も虚しく、アスターゼは全く動じることもなく言い返す。


「それはそうですね。言ってませんから。レクス君、ここは王国には使徒以外にも猛者がいるぞ!と示すべき刻だと思うのです。それが我々にとっても良いことなのですから」


 分からない。

 アスターゼの真意が読めない。


 ()()()()()()


 そう考えるレクスの中では、もしかして、いやまさかと2つの考えが争っていた。

 それに以前、探求者ギルドで聞いたアキレスと絡んでいた男の会話を思い出す。

 レクスが竜前試合とは全く違うことを考えているのを迷っていると捉えたのか、クラスメイトから応援の声が飛び始める。


「ボクはレクスの戦いを見たいかな。いっつも本気じゃないからね。ああ、早くレクスの本気を見たいなぁ。出て欲しいな。出るよね? 出なよ。いや出てよ」


 常に前のめりのリスティルは、毎度の圧が強めの言葉でレクスに迫る。

 席は離れているのに本当に詰め寄られているように錯覚させられるから不思議だ。


「自分も見たいッスね。討伐戦でレクス殿が強いの知ってるッスからねぇ」


 マルグリットとは共に戦ったことがあるので、レクスがどのように戦ってきたか知っている。となると単純に試合を見たいだけなのか、使徒とも戦り合えると確認したいのか、強さを広めたいのか。

 何かの意味があるのだろうが、彼女の真意も掴めない。


「ここは俺様が出るところじゃねぇのか?」

「コラッ! まだ使える闇魔法も少ないし、剣術だって出来ないでしょ!」


 ブータレるのはシュナイドで、いつも通りフィーネが怒っている。

 と言うより叱っている感じだ。


「先生よぉ……クラスからは1人しか出られないのかい? オレも出たいんだがね」


 低い声で質問したのは、ブラドリィル。

 女子にあるまじき巨躯を持つ暗黒闘士であり、まさかのオレっだ。

 彼女とは不釣り合いなまでの机と椅子に、レクスはいつかぶっ壊れそうだなと場違いなことを考えていた。


「もちろん誰が出場しても構いませんわよ? とにかく意思がある生徒は速めに申請するように。以上」


 アスターゼの一言でホームルームは終了し、生徒たちが動き始める。

 さっさと寮へ戻る者、残って友達とおしゃべりする者、学園の部活に行く者など様々だろう。


「じゃ、行こっかレクス」

「了解」


 レクスがセリアと共に歩き出すと、いつもの優しい笑みを浮かべながらローラヴィズが話し掛けてきた。


「あら。2人でどこへ行くつもりなのかしら?」

「店舗回りよ。今日手配してあるの」

「あらそう。ちゃんと仕事になればいいのだけれどね」

「何よぉ、じゃんけんでちゃんと決めたでしょ! 委員長には言っといてよね!」


 笑いながら会話しているが、どこか圧を感じたレクスはそっと2人から離れる。

 そのうち話は終わったらしく、レクスとローラヴィズがすれ違う。

 彼女はレクスの目を見つめてにこりと微笑んだ。


「じゃね! いってらっしゃい」


 手を振り足早に去っていくローラヴィズにレクスも手を振り返す。


「時間になっちゃうから急ご!」

「うぃっしゅ!」


 ―――


 やってきたのは街の大広場。


 既に設営が始まっていて、今日は本部となる場所で抽選を行うのだとセリアが教えてくれた。

 結構な数の代表者が集まって喧騒の極みだ。

 ついでに言うとおっさんばかりで非常にむさ苦しいことこの上ない。


「皆さん、お待たせしました! 出店ブースの位置確認と競合場所の抽選を行っていきますのでよろしくお願いします」


 セリアの良く響く声が、その喧噪を掻き消して行く。

 良く通る高い声色は、何度聞いてもレクスを心地良い気分にさせてくれるものだ。


「じゃ、俺はブースの位置確認をして印璽いんじを押してもらうよ」

「私は抽選の方を進めるね」


 レクスが紙にまとめられた出店場所の書類に目を通すが、よく出来ているなと感心させられる。写された王都内の地図に出店場所と該当店舗が細かく記載されており、番号を振って分かりやすくなっている。

 後は確認して印璽いんじをもらい、該当箇所への出店許可証を発行するだけだ。

 改めてセリアの優秀さと細かな気配りが伝わってくる。


 本部にはかなりの行列ができており、割り込みして喧嘩になっている者や、列を無視して押し掛ける者もいたカオスな状況になっている。

 こう言う時はどうしても日本を思い出す。

 ほとんどの人は行列を護るし秩序だった行動をとるからなのだが、国民性はよく表れるものだとつくづく思い知らされるものだ。


「今年は竜前試合を行うのだな。国内が不安定な状況だからこそ、何か支柱となるものが必要なのだろうな」


 そんな呟きが聞こえてきたので、レクスはチラリと声がした方へ視線を向ける。

 初めは運営の関係者かとも思ったが、見た目は既に大人。

 纏っている衣服が一般国民に馴染のある麻のシャツとカーディガン、ズボンであり頑丈そうなブーツを履いている。


 学園の関係者か誰かか?と思ったが、レクスには見覚えがあることに気が付いた。

 グラエキア王国の第3王子、フォロス・アウラ・カルナックだ。

 ヘイヴォル王の子で容姿端麗で頭も良く回るがアウラナーガの血は薄い。

 それに敬虔なアングレス教の信者でもある。


「レクス君だな? 忙しいところすまないな。仕事を続けてくれ。これは私の独り言なのだから」


 そう言うことなら問題はない。

 レクスは作業を続けながらも耳を傾けることにした。


「カルディア公から話は聞いている。アングレス教会が動く可能性があるとな。いかな教会とは言え王家の問題に口を挟むことは許せん」


 フォロスの声は喧騒に紛れて周囲には届かずに、レクスの耳にのみに入る程度の大きさだ。


「君は教会を始め、世界情勢の動きに詳しいと聞く。私は王家の影を動かして秘密裡に動向を探るつもりだ。そこで情報を共有したいと考える」


「はいはい。この8番スペースですね。ではロゼーツ商会さんの印璽をこちらにお願いします」


「〈蜃気楼シラクラム〉だ。それだけ覚えておいて欲しい。ではな」


「はい。どうもありがとうございます! 承知しました。こちらをお持ち下さい。控えと申請者カードです。出店時はこちらを見える位置に張り出して下さい。こちらは出店者さんの個人用カード5名様分になりますので首に掛けてお使い下さい」


 レクスの背後から気配が消えた。

 王家の影を動かしたか……と考えるがそれがどう出るかが問題だ。

 それに第3王子がアングレス教会の敬虔な信者なのが気になるところである。

 有能設定は存在するのだが、カルディア公との繋がりもあるとは思わなかった。


「後は歴史が動くのを待つだけだ……」


 間もなく、極東部のロンメル男爵領がロストス王国に攻め込まれるはず。

 とうとうレクスも本格的に動く刻が来たのだ。

次回、束の間の日常。竜前試合が始まる。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。

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