第18話 パスカル・レジスの独白
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私、パスカル・レジスには女神の如く美しく優しい大好きな母親がいた。
大抵の人間には大好きな親がいるのだろうが、そんな他の有象無象とは一線を画すほど優しさに満ち溢れた慈愛を持つ聖母であった。
場所は王都から離れたアルベール伯爵領のテレギア村。
彼女はそこで行幸中の国王ヘイヴォルに見初められたらしい。
当然、村は大騒ぎになり誉れ高きことだと祝福ムードが高まりお祭り騒ぎになったと言う。それが村1番の器量の良い才媛であったことも原因の1つであった。
貴族、しかも王族が求めるのだから断ることなどできるはずもない。
それが世界の危機を救った使徒の末裔であるカルナック王家の国王なのだから尚更である。
想い人がいた母親であったが、当然の如く2人は引き裂かれることとなった。
カルナック王家に嫁いだ彼女であったが、ヘイヴォルは王家の籍に入れることを拒んだ。末席に加えることすら拒否し、彼女は単なる妾として王城の離れに隔離されてしまう。
理由は想い人と既に関係を持っていたからと言うくだらない、本当に些末なこと。
使徒の盟主たる王家の血筋に穢れが入ることに嫌悪感と拒否感を抱いたヘイヴォルであったが、その感情とは裏腹に彼女をいたぶりながらも愛し続けた。
彼女の想い人は拷問を受け、死ぬより酷い苦痛を受ける中、ヘイヴォルはそれを見せ付けながら彼女を犯し続けた。
村の人々も次々と連行され、同じように殺されたそうだ。
そして村は焼かれてしまったらしい。
もちろん、彼女に見せつけるように長く苦しめられながらだ。
その結果、出来た子供が私――パスカル・レジスである。
つまり、私は王家の血を継ぐ者。
使徒の盟主、アウラナーガの血脈に連なる者。
血は薄かったが、その力は当然、他者を圧倒する。
それだけ使徒の血と言うのは強い。
そしてその強く気高く、何人たりにも冒されざる神聖な血脈に多大なる誇りを持っていたヘイヴォルの嫌悪感と忌避感は、穢れを持ち込んだ母親だけでなく私にまで向けられることとなる。
何しろ妾とは言え、カルナック王家の血に連なる者に穢れを持つ者が生まれてしまったのだ。ヘイヴォルの潔癖はそれほどまでに筋金入りのものだったが、母の美貌には抗えなかったのだろう。
その残虐なる寵愛は永遠に感じられるほどに続いたのである。
そして私が15歳を迎えた時、それまで母親から隔離されて心身共に健やかに育てられていた状況が一変する。
初めて会った母親は優しく美しかった。
一緒に暮らすことはできなかったが、会うことが許されて母親の愛情を受けて育ったが、会う時には必ずヘイヴォルが共にいた。
私はそんな2人を見て仲睦まじい夫婦なのだと喜びに満ち溢れていた。
今考えると何とおぞましいことかと自分を殴って殺してやりたくなるほどだ。
その日は突然やってきた。
夜の帳が下りて母親と2人一緒に寝所に連れて行かれた私は、ヘイヴォルによって凌辱されたのだ。あまりにも唐突な出来事で、私の頭の中は真っ白になった。
母親はひたすら泣き叫んで助けを、そして赦しを請うていたが、散々に殴られて私と共に親子揃って犯された。
ヘイヴォルはたっぷりと満喫したようだったが、地獄は続き1年ほど経った時、親子共々離れに隔離されることとなる。
母親は激しい憎悪と激情を私に言い聞かせた。
娘である私には一切手出しはしないと言う約束を破られたと激昂していたほどだ。私は彼女がずっと我慢し続けてきたこと、目の前で味わってきたこと、屈辱と絶望の日々を余すことなく聞かされることとなる。
必ずや、私の手で復讐を。
そう誓って生きることを決めた。
しかし更なる悲劇が私たちを襲った。
私たち2人は王城の兵士たちに払い下げられて度重なる凌辱を受けることとなった。
ヘイヴォルはそれを愉悦のこもった目で見つめていた。
次はもっと醜悪な囚人たちの檻に放り込まれた。
もう筆舌に尽くしがたい状況。
これ以上は言葉にするのも忌まわしい。
そして私は身籠った。
悪魔の子を。
それがダビド。
それを知って母親は狂乱し、あの美しく優しかった面影は完全に失われた。
彼女は狂って全てを呪って死んだ。
その最期はとても人間には見えない壮絶なものであったが、私の心は既に壊れていたようでその時は何も感じなかった。
ただ涙は流れた気はする。
私は母親から聞かされてきたヘイヴォルの鬼畜の所業をひたすら心に刻みつけ、自分に降りかかった不幸を必ずやヘイヴォルに返してやると誓った。
穢れた血を持つ者は処分しなければならぬ。
そう宣告された私は、覚醒した血の力によって王都から逃げ出すことに成功する。
皮肉にも穢れたその血の力で。
それから私はヘイヴォルを殺すこととカルナック王家の血脈を途絶えさせることのみを考えて生きてきたと言う訳だ。
忌々しい力を見せ付けることで仲間を集め、〈血盟旅団〉を組織して王家打倒の計画を立ててきた。私のことを何処からか嗅ぎつけた連中が接触してきてグラエキア王国を滅ぼさんとする者たちと結託して闇で蠢いてきた。
そして訪れた好機。
これで全てが報われる。
母親の無念を晴らすことができると歓喜した。
こんな気持ちになれたのはいつ以来だっただろうか?
それがどうしてこうなった。
古代神だと?
聖遺物、神の想い出だと?
古代竜の血よりも強いと言うのか?
それとも私の血がもっと濃いものだったなら撃ち破ることができたと言うのか?
結局は穢れた血頼みではないか。
穢れた血と蔑んだ者に鉄槌を下すためには、穢れた血の力が必要なのだ。
これが喜劇と言わずして何とする。
ダビドよ、お前は全てを忘れて生きろ。
私は死してカルナック王家を呪いし神となる。
私はパスカル・レジス。
全ての記憶、全ての存在。
全ての世界を消し、そして私も消えよう。
永遠に!!
終わったかに見えた血盟旅団の乱。しかしまだ終わってはいなかった……
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