第6話 王立学園中等部へ
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本日は12時の1回更新です。
刻は聖グローリア暦1329年4月2日。
この日は王立学園中等部への入学式が行われることとなっていた。
レクスの周囲ではセリア、ローラヴィズ、ミレア、マールが中等部へ進学する。
友達になったリスティル・ド・バルリエやディアドラ・ド・アルネイズ、カサンドラなども同様だ。
中等部には既に6公爵家の公女なども在籍しており、有名な生徒も多い。
カルディア公爵家が第2公女シルヴィ・ド・カルディアやイシュタル・ド・ファドラ、ロクサーヌ・ド・イグニス。
更にはカルナック王家の第3王女、リーゼ・ド・カルナックまでもが通学しているのだ。ちなみにプラダマンテも2年生として、ガイネルとシグムントも3年生として通っている。
入学式の前にクラス分けの紙が張り出されていたのだが、今年から魔導科と騎士科の区別を無くすらしい。
新たに統合科となり、クラス数も増えた。
レクスはSクラス、セリア、ローラヴィズも同様で、ミレアとマールはBクラスであった。Sクラスは特待者クラスであり成績優秀な者が集まる国家の根幹に関わる可能性のある生徒として、更に高度な授業が行われると言うことだ。
期待していいのか悪いのかは分からないが、レクスとしても楽しみではある。
一旦配属されたクラスに赴いて荷物を置いた後、大式典場へと向かう。
結構な数が集まっているようだが、中等部に入ると平民の数はぐっと減る。
引き続き通うのは商家、製薬、機械、魔導具に関わっている者たちが多く、より専門的かつ深い教養が必要な職業の子女ばかりだ。また、将来的に魔導や魔導科学、歴史など研究職に就きたい者たちもより上を目指して通っている。
そこへ中等部からは貴族が加わるので、大人数になるのは必然であった。
かなりの大きさを誇る大式典場も、多くの生徒とその関係者などで溢れ返っている。ステージを前にして、クラス別に並べられている椅子に座ると、偉い方々の堅苦しい挨拶が始まる。何人もの貫禄のある男たちが長々と祝辞を読み続けるので、レクスは普通に船を漕いでいた。他にも寝ている者や態度の悪い者も普通に存在している。
セリアやローラヴィズ、カサンドラは当然の如く真面目に話に耳を傾けているし、貴族は特に家の名誉にも関わってくるため、比較的に真面目な者が多いようだ。レクスが寝ている隣の席に陣取っていたセリアが、とんとんと肩を叩くが彼が起きる気配はない。仕方ないので脇腹をつんつんと突いてみると、ビクッと体を震わせてレクスが飛び起きる。
幸い周囲には気取られていないようだが、セリアからの合図が来たと言うことは出番が来たことを意味する。
レクスは主席合格で新入生代表の挨拶を行うことになっていたのだ。
司会進行役の教師から名前を呼ばれたレクスはステージに上ると置かれている壇上へと歩き始めた。見守っている教師陣の中には見た顔も大勢おり、ヒナノとテレジアも当然、レクスに視線を送っている。
多くの視線が今、レクス1人に集中している。
場は荘厳で緊張感で張りつめた空気の中でも彼は物怖じすることはない。
何も持たずに壇の前まで来ると、レクスは一礼して挨拶を始めた。
「春の息吹が感じられ、生けとし生ける者たちがその心身を活力で満たす今日、私たちは王立学園中等部に入学致します。本日このような厳粛で格式高い入学式を行って頂き感謝の言葉もございません。新入生を代表して御礼申し上げます。厳しい入学試験を乗り越えて、我々は今、仲間となる者たちと共にこの場にいます。しかし不安は微塵も感じておりません。未熟な私たちを導いてくれる教師の方々や先輩の方々がいらっしゃいます。我々は偉大なる先人の背中を追い有意義な学園生活を過ごし、勉学や実技に励んで行くこと竜神の名においてを誓います。そして国難に当たっては其を打ち砕き、悪なる者を撃ち滅ぼすことを至上命題としてストーリーシナリオをクリアしていきたいと思います。以上、ありがとうございました。新入生代表、レクス・ガルヴィッシュ」
皆が思った。
途中までは良かったし、分かる。
国難と悪を滅ぼす、まぁ分かる。
ストーリーシナリオをクリアしたいと思う、全然分からない。
頭に入っていた文章を言い終えると、レクスはそそくさと席へと戻った。
周囲の視線が刺さっているが、気にすることはないだろう。
お茶目なユーモアと言う訳だ。
理解されるとは思っていないが。
ヒナノとテレジアの方に視線を向けると、2人は共に苦笑いをしており、レクスとしても大いに満足な結果となった。
最後に学園長であるヒナノが祝辞を述べて入学の式典は終了した。
レクスとしては彼女の真面目な口調が聞けると思い、期待していたのだがいつも通り過ぎてつまらなかった。
あのワクワクを返して欲しいレベルである。
再び、Sクラスへ戻ると1人の教師が教室へ入ってきた。
黒髪ロングの清楚な雰囲気を纏わせ、微笑みを絶やすことがない優しさと柔和さを兼ね備えたお姉さんのような人物だ
彼女は教壇に立つと目を細めたまま、祝いの言葉を述べる。
「ワタシはこのクラスの担任になりましたアスターゼと言います。皆さん、これからよろしくね? 中等部ともなると専門的な授業もあるでしょうし実技も大変でしょうが、アナタたちはSクラス。その意味を理解して生徒の模範となるように頑張りなさい」
レクスから見たアスターゼの印象としては、底が見えないと言ったところか。
職業が何かは分からないが、得体の知れないナニカを感じる。
力の根源が不明なため詳しいことまでは分からないが、十分に気を付けないとなとレクスは自分に言い聞かせた。
そして定番の自己紹介がやってくる。
ここで生徒の実力を見極める必要がある。
誰がどんな神を信じ――古代神か漆黒神か古代竜か漆黒竜か、どんな思想を持ち――貴族至上主義者か平和主義者か実力至上主義者か盟主派か使徒派か、どんな性格であるか、その職業と能力が知れればそれに越したことはない。
じっくりと実験動物を観察するような目でレクスは自分についてアピールする者たちを視る。
自分の紹介など適当で良い。
あははーよろしくねーと軽く言いつつ、授業で実力を示せば自ずとレクスの中等部デビューは為るだろう。
1人1人を集中して視終わると興味深い人物が何人も存在することが分かった。
Sクラスなのだから当然と言えば当然なのかも知れないが。
ただストーリーに絡んでくるようなキャラは見つからなかった。
考えられるとしても彼らの関係者自体が重要キャラ、もしくはキャラに連なる者であることくらいだ。
興味深いと思ったのは彼らである。
シュナイド、フィーネ、カサンドラ、リスティル、ディアドラ、テレサ、ブラドリィル、マルグリット・ファビウス、アレクシア、ランドルフォ、ローニャ・ヘルマンと言ったところだ。
その中にはもちろん、セリアとローラヴィズも含まれている。
貴族、平民なんでもござれなのだが、少女が多い印象を受けた。
中でも魔人のシュナイド、古代法士のテレサ、暗黒闘士のブラドリィル、聖女のマルグリット、眼鏡を掛けた怪しげな召喚士、ランドルフォ。
彼らの実力は潜在的なものを含めてもかなり高そうだ
是非、仲良くなっておくべきであろう。
入学式と自己紹介が終われば、もうすることはない。
授業が始まるのは翌日からなのでさっさと帰るべきなのだろうが、レクスは早速気になった者たちをカフェに誘った。
我の強そうなシュナイドとそんな彼を従える姉御肌のフィーネならば、ついて来る確率も高まるだろうと踏んだ上でだ。
結局、ブラドリィル以外は嬉しそうに承諾の返事をしてくれた。
貴族は街で買い食いや寄り道の経験などないので、興味があったらしくホイホイついて来た。
セリアとローラヴィズは積極的に動くレクスを見て目を白黒させていたが、皇帝がレクスとなった瞬間から受動的なだけのレクスではないのだ。
取り敢えずはファーストコンタクトは成功した。
彼らとは仲良くなって持ちつ持たれつの気の置けない関係を構築したいものだとレクスは思う。
今回はほのぼの回でした。
ありがとうございました。
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