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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 双龍戦争勃発

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第4話 イフェド侯爵からの誘い

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

 3月ももう終わりでいよいよレクスたちは13歳の年度が始まる。

 間もなく王立学園中等部で新たな学友たちと勉学に励む刻が来るのだ。


 果たしてレクスに友達ができるのかは定かではないが、小等部から中等部へ進学しない国民もおり、逆に中等部になって新たに入ってくる貴族も増える。

 新たな環境で新たな人々と心機一転、学園生活を始めることができるのだ。

 レクスの中等部デビューへの意気込みは凄まじく、やると言ったらやると言う強い意志が感じられるほどである。


 ところで今日は以前よりイフェド侯爵から招待を受けていた茶会にレクスたちは参加していた。

 共に侯爵邸を訪れているのはセリアとローラヴィズ、ホーリィである。

 特に古代神信者として、亜神であるホーリィに会いたいと熱烈な希望があったのだ。むしろレクスたち3人の方がついでなのかも知れない。


 イフェド侯爵のホストとしての挨拶が終わり、後は好きなだけ歓談していれば良いことになった。本来なら立食パーティーにする予定だったのだが、レクスたちに気を使って同世代の貴族子女も招いて茶会にすることにしたのだと言う。


 本来ならすぐに挨拶に伺うところなのだが、そう考えているのはレクスたちだけではない。庭園にはイフェド侯爵へ伸びる長蛇の列ができていた。


「彼ぇ、中々人気があるようねぇ……」

「かっこいいですし、カリスマ性があるんでしょう」


 恐らく彼自身は一刻も早くホーリィに挨拶したいだろうと思うが、周囲の者に囲まれて動けないようだ。

 となれば、しばらくは自由時間と言うことになる。

 レクスはセリアとローラヴィズを伴って貴族の子女たちと交流すべく動き出した。


 貴族に連なる者だけあって皆、清潔感があり、容姿も整っている。


「(流石はゲーム世界なだけはあるな。不細工がおらん……)」


 誰がどんな素性なのかはローラヴィズが詳しいようだが、レクスとしてはどうしても魔力の練度と量で見てしまう。何人か彼女の知り合いを紹介してもらい歓談していたところへ、別の客がやってきた。


 図らずもレクスが目をつけていた相手だっただけに歓喜で表情が緩んでしまう。

 もし彼女がその魔力を見抜いて来たと言うのならば、それは取りも直さずレクスの実力を評価したのが理由だろう。


「やぁあなたがレクス君だね。初めまして……ボクはリスティル。実技試験を見せてもらったよ。凄い魔導士だよキミは」

「それは光栄だな。よろしくリスティルさん。貴女も魔導士系の職業クラスなのかな? すまないが全員の実技試験は見れなくてね」


 何処か影を感じる、ほの暗い表情で、言葉にも圧があるように感じるが悪意はまったくないようなので気にする必要はないだろう。

 リスティルは肩口で切り揃えたその明るい茶髪を耳に掛けながら、レクスにそっと近づくと耳元で囁くように言った。


「ボクのことは呼び捨てで構わないよ。レクスくん。職業クラスは『次元魔導士じげんまどうし』さ」


 一瞬、ドキリとしたレクスだったが、聞き捨てならないことを耳にしたせいで、そちらに興味が移る。

 熟練度デグリーを上げればなれるとは言え、この世界の現地人としてはレア職業に当たる『次元魔導士』に思わず前のめりになるレクス。

 第5位階までの時空魔法と暗黒魔法を習得することができる職業だ。


「おお! 次元魔導士なのか! 良い職業だな。後、俺のことも呼び捨てで構わない。よろしくなリスティル」

「ふふっよろしくね。キミとは仲良くやれそう……中等部でもよろしくね」


 しっかりと2人が固い握手を交わしていると、それに気付いたローラヴィズが口を固く結び近づいてくる。


「あら、リスティルじゃない。お久しぶりね。元気だったかしら?」

「誰かと思えばローラじゃないか。ボクは見ての通りさ。中等部でもよろしく頼むよ。キミももちろん行くんだろう?」


 人当たりの良い態度で、いつも通りの笑みを見せながら親しげに言葉を交わす様子から2人は以前からの顔見知りのようだ。


「あら? 実技試験は見ていたんじゃなかったの? 私も行くわ。レクスと一緒にね」

「ふふふっレクスと一緒かぁ……キミも随分と惚れ込んだようだね。ちゃっかり会話も聞いていたようだし」


「なななッ……何を言っているのかしら? 私は彼を尊敬しているのよ。人間的にも魔導士としても、ね」

「ふふっ言葉に棘があるように感じてね。ただならぬ仲なのかと邪推してしまったよ」


 珍しく慌てた様子のローラヴィズは頬を赤く染めながら、リスティルと言葉の応酬を繰り広げる。彼女たちの話では、2人は昔馴染みでリスティルはバルリエ伯爵家のご令嬢のようだ。


「ふーん……レクスさんはもてもてでよろしゅうございますなぁ」


 次に声を掛けてきたのはセリアであった。

 何故か彼女も少し不機嫌な様子で、ぷくッと頬を膨らませている。


「何だよセリアも……訳が分からん……」

「ふーんだ!」


 仕方ないのでレクスは彼女の膨らんだ頬を指でつついてやる。

 ぷしゅる~と空気が漏れる音がして元の表情に戻るセリア。


「何だよ今の音。ハハッ……」

「もう……レクスったら!」


 プンスカと怒るセリアも可愛いなぁとレクスが考えながら彼女をからかって戯れていると隣から声が掛けられた。

 突然だったのでレクスは思わずビクリと体を震わせる。


「あら、貴方が噂のレクス様?」

「……!! あ、はい。こんにちは。噂が何なのか気になりますがレクスです。でも『様』なんてつけなくていいですよ?」


 目の前にいたのは、風に靡いたサラサラの銀髪を手で押さえている見目麗しい少女であった。反射的に自己紹介をしてしまったレクスであったが、見た目も言葉も育ちの良さそうな少女であったため、自分の言葉が失礼に当たらないか心配になる。


「わたくしはディアドラと申します。以後お見知りおきを……」


 煌めいて見える銀髪に漆黒の瞳がマッチした儚げな印象だが、言葉と所作は丁寧で力強い。


「ディアドラさんはご貴族なのですか?」

「ええ……アルネイズ伯爵家に連なる者です。どうかディアドラとお呼びください」


 貴族には平然と平民を馬鹿にしてくる者が多い。

 それが当然であると教育されて育ってきたので、そこに何の疑問も感じないし、ましてや仲良くしようと言う発想がない。

 レクスがこんなにも丁寧で気品を感じさせる挨拶を受けたのは初めてである。

 ローラヴィズの時よりも美しい言動のようにも感じたほどだ。


「あ、アルネイズ卿のご令嬢したか! 私のことは覚えてらっしゃいませんか?」

「もちろん。覚えておりますよ? セリア様、お久しぶりですね」


 セリアとディアドラは知り合いであった。

 2人は幼馴染で両家には昔から交流があると言う。

 数少ない幼い頃からの友達なのである。


「セリアとは仲がいいんだな」

「ええ、私の自慢の幼馴染よ!」

「わたくしもそう思っていますよ? 活発で明るいセリア様にはとても惹かれてしまいます」


 確かにセリアは大人しそうなディアドラとは対極的な感じを受ける。

 余程、再会が嬉しいのだろうセリアは彼女の手を握り締めて力強く言い放った。


「もー! だからセリアって呼んでってば! 水臭いわね!」

「つい昔からの癖でそう呼んでしまうの。これからはセリアって呼ぶわね?」


 それを聞いてセリアはとても嬉しそうにしている。

 貴族は幼少期は家庭教師を付けるそうなので、社交界デビューするまでは友達が少ないらしい。特にセリアは職業が暗黒騎士だった関係もあって、他貴族との交流が特に少ないのだ。


「うん! 同じクラスになれるといいなぁ……。あ、レクス。ディアドラのアルネイズ伯爵家は代々、大魔導士の系譜なのよ? 凄くない?」


「へぇ……凄いな。ご両親も大魔導士なんですか?」


「そうですね。何故かは分からないのですが、これが血脈と言うものなのでしょうか……」


 一族全員が同じ職業とかあるんだなとレクスは、そこにイベントの匂いを感じるが、流石に情報がなさすぎる。


 そこへイフェド侯爵が音もなく忍び寄ってきた。


「わ!!」


 突然の大声にセリアとローラヴィズが飛び上がらんばかりに驚いた。

 レクスは気付いていたのでそんなことにはならなかったが、イフェド侯爵が指を口に当ててしゃべるなと言う態度を取ったので黙っていたのだ。

 ちなみにホーリィも黙ってニヤニヤしている。


「ははは……これは失礼」


 柔らかい笑みで全く悪びれる様子もなく謝るイフェド侯爵である。

 ホストに態々足を運ばせたことに恐縮しつつレクスは感謝の挨拶をする。

 それに合わせてセリアやローラヴィズたちも礼をした。


「どうだい? 楽しんでもらえているかな?」

「お陰様で多くの人たちと友誼を結べました。ありがとうございます」


 改めてレクスが御礼を言うと、イフェド侯爵が近づいて小さな声で話し掛けられる。


「レクス殿、あれから私の元に漆黒司祭を名乗る者から接触があったよ。漆黒の宝珠(ジェット・サフィラス)についても聞かれたが、知らぬ存ぜぬで通しておいた」


「直接、接触してくるとは……それで良いかと存じます。関わりは持たない方がいい。会うことも避けてください。そうしないと怪しげな術で漆黒の宝珠(ジェット・サフィラス)を取り込ませられる可能性があります」


「分かったよ。しかし奴らは何者なんだい? 漆黒の司祭など聞いたこともないのだが……」


「あいつらは漆黒竜を崇拝する者です。その憑代よりしろとなる人物を探しているので、どこにでも現れますよ。どんな手段も厭わないので関わらないのが1番なのです」


「例の漆黒竜が復活すると言う話か……君の言う通り十分に気を付けよう。忠告に感謝するよ」


「とんでもございません」


 2人でのひそひそ話が終わると、レクスはイフェド侯爵に関する情報を得ようと色々と質問を始めた。

 彼については設定は多くあるものの、同時に細かい部分が不明な箇所も多い。


 レクスは四苦八苦しながらも、イフェド侯爵領が王都の南に存在している小領であり、ダイダロス公爵家やヴァリス王国との繋がりを持っていることや、セントリア湖の水運で大きな力を持つ貿易商ゴルドー商会とも関係が深いことを聞き出した。


「(うーん。ダイダロス公か……双龍戦争ドラグニク・ウォーで侯爵って絡んでたか? いや記憶にないな。となると関係なく漆黒竜の血に連なる者だとバレるのか? ガルダームの力で察知される可能性はあるな。化物だからな、あのじじいは)」


 何にしろ、レクスが目論んでいたイフェド侯爵に関する情報収集はできた。

 考えていたよりも少ないし、役に立つのかは不明だが、知らないよりは良いと考えるべきだろう。

 後は今日のホーリィとの邂逅が彼にとってどうでるかが不透明なところだ。


 今のところは、史実とされているガイネル(シグムント)ルートを辿っているが将来的にどう進むか分からない。できれば1番血の流れない、身近な者が傷付かないルートが望ましいのだがどうなるだろうかとレクスは思わずにはいられない。


 今日は中等部入学に向けて顔繋ぎをすることができたし、レクスにとっては満足の行く結果となった。ガイネル隊に入る予定の者も見つけられたので、成果があったと考えようと前向きに考えるレクスであった。


 場合によってはガイネルとの繋がりを断たせる必要がある者も出てくるかも知れないので、よくよく考えておくべきだろう。


 この日はレクスたちにとって有意義な1日となった。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。

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