第1話 アクシデントは突然に
いつもお読み頂きありがとうございます。
現在、第二章――物語本編(最序盤)開始しています!
第一章はプロローグみたいなものなので、是非、一気読みしてみてくださいませ!
面白かった!続きが読みたい!今後に期待する!と思われた方は是非、
評価★★★★★、リアクション、ブックマークをして頂ければ嬉しいし有り難いので是非よろしくお願い致します。
また、感想やレビューなどもお待ちしております。
モチベーションのアップにも繋がりますので何卒よろしくお願い致します。
これからも本作をよろしくお願い致します。
波 七海
付喪神と言うものをご存知だろうか?
長い間、使った古い道具やモノに宿ると言われている神や精霊のことである。
日本人であれば多くの人が耳にしたことがあるであろう。
とは言え、今のZ世代は元より年配の方々でもそんなオカルトチックなものを信じている者など多くはないだろうことは想像に難くない。
今年で35歳になる社会人、皇帝もそんな存在など信じていない者の1人であった。ただ、モノを敬うと言う気持ちは持っている。
今日の出来事だが、彼は会社で嫌な目に遭っていた。
お陰で帰宅する道すがら幼少期からのトラウマ染みた想い出が脳裏に浮かんでいた。
片親だったため母親は帝を育てるために仕事が忙しく、叔母夫婦に預けられていた彼は愛されることを知らなかった。いや、少なくとも母は愛してくれていたのだろうと信じていたが、幼少期に最も共に過ごすことが多かった叔母からは陰湿な虐待を受けて育ったため心には癒えない陰を宿していた。
救いと言えば祖父母には甘えられたことだろう。
決して庇ってもらえた訳ではないが、お祖母ちゃん子となった彼はモノを大切にすると言う教えを律儀にも守る優しい大人に育っていた。
そのせいでと言うか、そのお陰でと言うか帝は祖父の影響を受けて大のゲーム好きになった。
特に好きなゲームはスーパーファミコンのソフト『セレンティア・サ・ガ』である。
「そう言えば婆ちゃん元気かなぁ……爺ちゃんが死んでもう5年になるけど」
自宅への道すがら不意に祖父母のことを思い出す。
もう長いこと会いに行っていないので祖母は寂しがってくれているかも知れない。
祖父は帝と同じくゲームが好きで『セレンティア・サ・ガ』もプレイしていた。
と言うより帝の方が祖父の影響を受けたと言った方が正しい。
たまには帰郷するかと帝は漠然と考えていた。
帝は物持ちがよく子供の頃の持ち物でも大切に保管しており、物にぶつかろうものなら思わず「ごめんな」と謝ってしまうそんな性格であった。
内弁慶外地蔵とはよく言ったものだが、帝はその逆で外弁慶内地蔵。
外弁慶と言っても粗暴な訳ではなく活発と言った方が正しい。
人当りは良く性格はかなり温厚で我慢強く怒ることはあまりないが、キレたら止められない止まらない仄暗い一面も持っている。
まぁ本人はそんなことはないと思っているのだが……。
座右の銘が『目には目を歯には歯を』、『やられたら必ずやり返す』、『やるなら徹底的にやる』な辺り本当にそう思っているのか疑いたくもなると言うものだ。
とにかくキレさせたら大したものである。
「はぁ……今日も1日ご苦労さんっと」
軽く溜め息をつきながら自分に労いの言葉をかけつつ自宅の重いドアを開く。
ドアが開く時の軋みがまるで自分の体にガタがきているかのように感じられて帝はなんとも憂鬱な気分になる。
毎日遅くまで仕事に励み、ここ最近は帰宅しても趣味であるゲームの1つもできない。会社の中堅社員ともなると上からのお願いと言う名の命令かあったり下からのつきあげがあったりで大変なのだ。そんな日々が続いていたため、帝は気分を心機一転させることに決めた。
「明日っから奇跡の三連休だな! いっちょゲーム三昧の日々を送ってみるかな」
せっかくの休日だ。
しかも3日連続ともなると滅多にお目に掛かれるものではない。
帝は夜食を摂るのもほどほどにゲームを物色し始めた。
「うーん。久しぶりに昔のゲームでもやってみるかな」
最近のゲームは疲れるものが多い気がする。
プレイするのは専ら歴史ゲーやRPG、戦略ゲーと言ったところだ。
ぶっちゃけると某野望、某クエスト、某ファンタジー。某ダンジョンなど。
たまには懐かしのゲームをやるのもいいだろうとゲーム棚を漁っていると大事にしまい込んでいたスーパーファミコンが目についた。
「スーファミか。いいな。アダプタはっと……よし。となると何やろうかな」
スーファミ本体をテレビにつなぐと次はカセットを探し始める。
どのカセットを手に取っても懐かしさが込み上げてくる。
思い出に浸りながら漁っていると、何故か吸い寄せられるようにとあるゲームに目が留まった。
『セレンティア・サ・ガ』
RPGにタクティクス要素を入れた名作ゲーだ。
内容は大陸中、そして世界中を巻き込んだ陰謀渦巻く大戦を、主人公のとある貴族の少年が歴史の裏で暗躍し解決に導くと言うストーリーだったはずである。
かなり人間関係が複雑で各勢力の思惑が錯綜する構造になっており、対立する古代神と漆黒神、そして古代竜と漆黒竜などが世界に波乱をもたらし人々は世の不条理を突きつけられる。
マルチエンディング方式でやり込めるサブ要素も用意されているため裏設定もかなり多い。
徹底解説ガイドにはデータ上は存在するがゲームに出てこないキャラも多数存在すると明記されており、イベントキャラやゲストキャラなどを含めると登場キャラの多さは折り紙つきだ。
ちょうど思い出していたこともあり、帝はこのゲームをプレイすることに決めた。
箱から丁寧にカセットを取り出すと本体に差し込む。
もちろん箱も説明書も綺麗なままである。
今、オークションに出したらいい値がつくような気がしないでもない。
このゲームは昔、何度もクリアしてやり込んだ記憶があったし徹底解説ガイドやファンブックなども読み込んでいたため今でも内容をよく覚えている。
「よし。じゃあやるか!」
帝はニヤっと笑うと差し込み口にフーッと息を吹きかけカセットを本体にセットするとスイッチを入れた。
「ポチっとな」
その瞬間、頭の中に強烈な思念の様な何かが流れ込んできた。
何かが――聞こえる――
「(これは声……?)」
『私は付喪神……大事にしてくれてありがとう……この世界には貴方の力が必要なのです……どうか……力を……』
ここで帝の意識は暗転した。
※※※
「おのれぇぇぇ!! レクス・ガルヴィッシュゥゥゥゥゥ!!!!」
男が血走った目をレクスと呼ばれた少年へと向けて最早悲鳴に近い声で吠えている。
それはまさに魂の叫びであった。
腕の中には血を流して倒れ伏す少女が1人。
レクスに憤怒の視線を向けてる彼は彼女を強く強く抱きしめている。
そして周囲にも大地に横たわっている多くの人間がいた。
その中心で抜き身の剣をぶら下げて立ち尽くしている少年がいる。
それがレクスだ。
目はどこか虚ろで覇気と言うものが感じられず表情からは怒りも悲しみも何の感情も読み取れない。
立ち尽くすレクスの下に漆黒のローブをまとった1人の司教が近づいてくる。
表情にどす黒い会心の笑みを浮かべて。
司教は袖から漆黒の宝珠を取り出すと、レクスに手渡した。
すると体から強烈な波動と共に漆黒のオーラが流れ出る。
「全てはガーレ帝國復活のために……」
漆黒の司教は大いなる目的を果たすための第一歩を踏み出せたことに喜びを感じ更なる悲願達成のために奔走することを誓うのであった。
ありがとうございました!
また読みにいらしてください!
本日7/21(月)から新連載を開始します。
タイトルは以下の通り。
『異世界に転移させられたんだが、俺のダンジョン攻略が異世界と地球で同時ライブ配信されているようです』
https://ncode.syosetu.com/n3681ku/
異世界&現代ファンタジーのダンジョン配信ものです。
異世界と地球(世界)の両世界でダンジョン攻略の様子を同時実況配信されてしまうお話。
主人公が天国と地獄の勢力争いに巻き込まれていきます。
6話目からですが、水晶球のサフィさんの実況解説動画を是非ご覧ください。
投稿開始は18時からで本日は3回更新予定です。
是非読んでみてもらえると嬉しいです。
何卒、何卒、よろしくお願い致します。
ホントにお頼み申し上げます!!!!