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ローション無双! ~どこに行ってもキモイと言われる俺が世界を汁躙する……かもしれない?~  作者: 九傷


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第15話 施術が完了しました

 


「き、貴様! ナニをやっている!?」



 声に反応し振り返ると、そこには若干引き気味な表情を浮かべているピローが立っていた。

 どうやら気絶から復活したようだが、ひとまず元気そうで何よりである。



「見ての通りだ。ネイル氏に整体(マッサージ)を施している」


「マ、マッサージ? そういえば元整体師と言っていたが……、だからといって何故ネイルに……? いや、そもそも、これは本当に整体なのか?」


「正真正銘、ガチの整体だぞ。それと、元は余計だ! 俺は今でも現役だぞ!」



 どうやらピローは状況に理解が追い付いていないようだ。

 まあ、プロの整体のテクニックなど普通は見たことがないだろうし、無理もないだろう。



「……? 冒険者に、転向したのだろう?」


「転向じゃない。兼業だ」



 一応、先程身の上話をした際に俺が整体師だったことは説明したのだが、引退したと勘違いされていたようだ。

 サラッとしか話してないので仕方ないとは思うのだが、そこは勘違いしてもらっては困る。

 俺の本業はあくまでも整体師であり、冒険者は副業に過ぎないのだから。



「……だったとして、何故それを今やっているのだ」


「それはもちろん、『呪い』の影響を解消するためだ」


「っ!? 呪いを、解消だと? 馬鹿な……、整体で解消など、できるハズがない!」


「まあ、最初から信じてもらえるとは思っていないよ。だからこそ、こうして実演してるんだ、よっと!」



 そう言って視線をネイル氏に戻し、仕上げに入る。



「んはぁ!? ふぎゅ! ふぉーーぉーーーーーーーーーぅ!?」


「ひぃ!?」



 ネイル氏の上げた奇声を聞いてか、ピローが引き気味の悲鳴を上げて後ずさる。

 あまり人様にお聞かせするような声ではないので仕方がないが、これが原因でネイル氏を見る目が変わらないか少し心配だ。



「よし、施術完了!」



 やはり『呪い』の影響があるのか、中々にやりがいのある患者であった。



「……私には、『呪い』が悪化したようにしか見えないのだが、本当にこれで解呪されたのか?」


「厳密には解呪されたワケじゃない。ただ、これでしばらくは影響を受けなくなるハズだ」


「っ!? お、おいネイル! 呆けてないで何か反応しろ!」



 ピローが少し強めに声をかけるが、ネイル氏は全く反応しない。

 意識はあるハズだが、茫然自失(ぼうぜんじしつ)といった感じで(うつ)ろな目を浮かべていた。



「おい……、これは、大丈夫なのか……?」



 反応がないため近付いてきたピローが、ネイル氏の顔を見て嫌そうな表情を浮かべている。

 確かに親族にも見せないようなだらしない顔ではあるのだが、ネイル氏だって見られたくなかったハズなので中々に可哀そうだ。



「初めて整体を受けた人は大体こんな感じになるよ」



 自分と親父以外の整体を見たことがないので正直自信はないが、特技(スキル)の追加効果を習得する前でも患者はみんな同じような反応をしてたので、多分個人差はないと思っている。

 ……それはそれとして、整体の効果自体は誰にも負けない自信があるがな!



「……嘘は、言っていないようだな」


「この状況で嘘をつく意味なんてないだろ……。ほら、ネイル氏もそろそろ協力してくれ」



 しばらく余韻に浸らせておいてやりたいのは山々だが、あまり時間もないので気付けのツボを突いて強制的に意識を覚醒させる。



「グハァッ!?」



 余程痛かったのか、ネイル氏は三日月のように体をのけ反らせた。


 このツボと呼ばれる位置は地域や職業によって考え方が異なるが、基本的には神経や血管の集中した箇所を指す言葉だ。

 よく勘違いされがちだが、健康であれば痛くないというのは実際のところ半分以上嘘である。

 確かに血行が滞っているなどが理由で痛むことも多いが、そもそも神経が集中しているのだから押さえれば痛いのは当たり前だし、健康だろうと痛いものは普通に痛い。

 残念ながら戦闘中に狙うのは至難の業だが、動いていなければ押さえることは簡単なので、こうして目覚まし代わりに使えたりもする。



「き、貴様、何をす――っっ!? 体が……、軽い!?」


「どうやら、しっかり効果はあったようだな」



 ネイル氏は身動きがとりやすくなっていることに大層驚いた様子だが、触診した俺から言わせれば当然の結果だとしか思えない。

 あれだけ筋肉が強張(こわば)っていれば、たとえ勇者だろうと動きが鈍くなるものだ。



「まさか本当に解呪――いや、『呪い』の影響を抑え込んだのか……?」


「そこは自分の感覚を信じてくれ。口で言っても信じてもらえないからこそ、手早く体験してもらったんだからさ」



 一応、ネイル氏には施術前に整体の内容を簡単に説明している。

 それでも信じられないといった様子だったので、詳しい説明はせずまずは体験してもらうことにしたのだ。



「……体験した今でも正直信じれれないが、確かに『呪い』による体の重さや倦怠感がなくなっている。一体、何故だ?」


「それはファティーグの『呪い』が、疲労の増幅だからだよ」


「疲労の、増幅……?」


「ああ、ピローもネイル氏も、悪魔の『呪い』についてはどの程度知ってる?」


「……正直に言うが、私はファティーグを見るまで悪魔という存在を知らなかったのだ。だから『呪い』についての知識は皆無と言っていい。それは私と同い年であるネイルも同じハズだ」



 そう言ってピローが視線を送ると、ネイル氏も気まずそうな顔で頷いて見せる。

 二人が同い年というのも驚きだが、悪魔の存在を知らなかったというのにも驚かされる。

 閉鎖的な村や里などは情報が遅れていると聞くが、悪魔は天災のようなものなので流石にそれだけが理由とは思えない。



「ちなみに、お二人はおいくつ?」


「「23だ」」



 マジかよ!

 俺とほとんど変わらないじゃんか……


 エルフなどの長命種は、大抵の場合見た目以上に歳を食っているというのが常識だ。

 理由は長命種があまり生殖行為をしないなど色々な説があるようだが、ともかく若者が少ないのは間違いない。

 俺も冒険者として何人かエルフを知っているが、20代の若者を見たのは初めてである。



「ってことは、もしかして二人とも、ダークエルフとしては子ども扱いだったり……?」


「そ、そんなことはない! 私はこれでも、子を成すことができる体になっているぞ!」



 顔を赤くしてそんなことを言われても、正直何も信用できない。

 さっきの初心(うぶ)な反応も、そういうことであれば納得できるというものだ。

 それに、この状況下で二人がまともに動けていることの説明もつく。


 ……しかし、そうなってくるとまた話が変わってくるぞ?

 果たしてこれが、吉と出るか凶と出るか……




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― 新着の感想 ―
 あ~、疲労の増幅を疲労回復で抑える、と。  しかし、絵面がすごいことになってそうだなぁ(^^;)
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