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ローション無双! ~どこに行ってもキモイと言われる俺が世界を汁躙する……かもしれない?~  作者: 九傷


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第12話 セットプランを提案されました



「……俺から条件提示した方が話が早いと思うんで、いいですか?」


「もちろんだ。遠慮なく言ってくれ。どんな条件でも、可能な限り受け入れよう」


「……っ」



 ネイル氏はやはり何か言いたそうな雰囲気だが、流石にもう割り込んでくることはなかった。

 でも、今から言う俺の出す条件を聞いたら、また文句言ってくるんだろうなぁ……


 恐らくアシュアさんは差し出せるものなら何でも差し出すくらいのつもりだろうが、これは決して自分の価値を低く見積もっているからではない。

 むしろ、その価値が高すぎるため、実質的に報酬になり得ないことを理解しているのである。


 命より大切なものなどないというのは種族を問わず一般的な考え方だが、今の世の中それよりも金の方が大切と考える者はいくらでもいる。

 そして、それを生み出すことのできる特技(スキル)は、この世で最も価値のある資産になり得るのだ。


 アシュアさんを所有するということはつまり、【予知夢】――未来視系の特技を独占するということを意味する。

 それは報酬として見れば間違いなく破格であり、これ以上の追加報酬を望むのは足元見過ぎと思われても仕方がないレベルだ。

 そんな国宝クラスの報酬など俺の手には余るので正直遠慮したいところなのだが、【予知夢】の存在を知ってしまった以上そうも言っていられない。

 まず間違いなく、ファティーグを倒したあとに今度は俺がダークエルフ達に狙われることになるからだ。


 そもそも俺は、この里の場所を知ってしまった以上なんらかの口封じをされる可能性は高いと思っていた。

 それでも、ダークエルフがお人好しな種族であることは知っていたし、比較的穏便な方法が選ばれると楽観視していたのである。

 しかし、そこに未来視系特技の情報が加わると、話は大きく変わってくる。

 里の情報については最悪引っ越せばいいだろうが、未来視系特技の情報が広まれば、エルフどころか世界中から狙われることになるからだ。

 いや、それ以前に俺が第二のファティーグになると思われてもおかしくない。

 そこまで考えると、俺を殺してしまうのが一番手っ取り早いし、口封じとしても確実だ。


 もちろん全員がそこまで非情な選択をするとは思わないが、ネイル氏を見る限り確実に何人かはそう考える者が出てくるだろう。

 そしてそうなってくると、最悪ファティーグを討ち取った瞬間の背中を狙われかねない。

 ……いや、それどころか背中を警戒するあまり戦闘に集中できず、敗北する可能性も高くなってくるだろう。


 だからこそアシュアさんは、それを少しでも抑止するため――という意味で、自分を差し出すと言っているのだ。

 最初から自分を差し出してしまえば、少なくとも口封じをする必要性は減るし、守るべき対象もなくなるからである。

 恐らくだが、アシュアさんは自分のことを報酬と言うより、必要経費くらいにしか考えていないのではないだろうか。


 ……もしかしたら俺の邪推かもしれないが、先程の態度を見る限り(あた)らずといえども遠からず――といったところだろう。

 そのうえで値切ろうとしていたのだから、実は中々に図太い性格をしているのかもしれない。



「先程も言いましたが、まずは大前提として俺の命の保証をして欲しい。最低限、俺が納得できるレベルで」


「……それは要するに、我々の掟を信用できないということかな?」


「まあ、その通りですね」


「貴様――」


「ネイル、黙っていろ」


「っ……、すみま、せん……」



 ネイル氏が早速出しゃばってこようとしたが、何か言う前に制されてしまう。

 ションボリして少し可哀そうではあるが、マジで話が進まないのでもう(しばら)く大人しくしていて欲しい。



「亜人種にとって、掟がとても重要なものだということは承知していますよ。でも、破られた前提がないワケではないですよね?」


「……その通りだ。博識だな」


「いえ、ただの想像ですよ。でも、ほぼほぼ確信はしてました。だって、そんなに簡単に感情が殺せるなら誰も苦労はしませんからね」



 厳しい精神修行を行えば、ある程度感情を殺すことはできるようになる。

 しかし、完全に殺すことは自意識がある限り不可能だ。

 ましてや、年齢も性別も問わず同じレベルの精神制御などできるハズがない。



「成程。確かに、私が知っている掟破りの事例も感情絡みのものばかりだ。しかし事例と言っても、我が子を守るために命を差し出すような内容ばかりだぞ? そこまで求められるとなると、流石に保証のしようがないな」


「……まあ、俺もこの状況でそこまで求めるつもりはないです。ただですね? 実は先程お孫さんに、アシュアさんに何かすればどんな手を使ってでも殺すと言われたばかりなんですよ」


「っ!? ……はぁ~、そういうことか。全く、あの娘は本当に困ったものだ」



 アシュアさんは一瞬目を見開いてから、やれやれといった感じで首を横に振る。



「一応理解してくれているとは思うんですけど、ここに来た時点で俺は皆さんのことを助ける気満々だったんですよ。ダークエルフは誠実だって聞いてたし、境遇的にも凄く共感できたんでね。でも、思った以上に状況はヤバいし、そこのネイル氏にしてもお孫さんにしても敵意剥き出しじゃないですか……。これじゃ信用したくてもできませんて」



 まあ、ピローについては元々俺を殺す気で襲ってきたし今更と言えば今更なんだが、目覚めて状況を知ったら絶対また俺のことを殺そうとするハズだ。

 返り討ちにする自信はあるが、せっかく生かしたのに今度こそ殺さなくてはいけなくなるのは、正直気が重い。



「……信頼を裏切ってしまったようで大変申し訳ない。アレはおばあちゃん子でな。確かに、そのくらい愛されてる自信もある。……ふむ、ではあの娘もセットでどうだろうか?」


「セ、セット!? ――っていやいや、それじゃ保障にならないでしょ……」


「この里には【契約】の特技を持つ者もいる。それも加味すれば多少はマシな条件になると思うぞ?」


「っ!? ……あの、そういうことは早く言ってください」



 【契約】の特技は、その名の通り契約を結ばせることのできる特技だ。

 絶対に順守させるほどの強制力はないが、個人レベルであればそれなりに信用できる効果がある。

 それを先に言ってくれれば、ここまで悩むこともなかったというに……



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