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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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何の問題もない

今話と次話は過激な表現を使っています。ご注意ください。

 些細なできごとが男たちにはムカついた。

 気に入らないやつを泣かす、それが嗜虐的であると男たちを興奮させた。誰も止めなければ、エスカレートするばかり。

 先日大柄な気に入らない女に蝉を食わせた。

 同級生でやたら水泳が早いことが取り柄の、気の強い女だった。

 女は泣いた。

 だから所詮押さえつけて暴力さえちらつかせれば、そのことが俺たちは中学でなら無敵だと、錯覚をおこさせた。


 その日兄貴分のチンピラにさんざんどやしつけられて、不相応な金額を要求された3人は町をうろついていた。ずいぶん荒れた心で。

 こんな気分で夜を明かすのはごめんだった。

 だから犯す女を探そう。

 俺たちがやっちまった後で先輩にもやらせるか、やばくなりそうなら殺せばいい。先輩たちもさんざん遊びつくした女をコンクリートに詰めて沈めたと、又聞きで聞いたことがある。

 一人くらいやっちまっても少年法が守ってくれると高をくくった。


 幸い獲物はすぐに見つかった。

 あの蝉の女。俺たちビッグになる男にふさわしい最初の獲物だ。


 だから…攫った。

 どんなに運動神経が良くても、男3人に敵うはずもなく、北玲は夜の町の廃墟に連れ込まれた。


 泣く暇も、助けを求める声を出す時間すらないまま、玲は観念した。

(もう少し生きたかった)

 浮かぶのは、同級生の顔。悪い噂が絶えないが、浮きがちな玲を仲間に引っ張りこんでは、自分を悪者にしてみんなと同じ笑顔にさせてくれる彼。


(依田くん…!)


「けっ!あんな優男より俺たちのが優しくしてやるぜ」

「明日の朝には俺たちのがほしくて堪らなくしてやるよ」

 押さえつけていた6本の腕が、玲の体を這おうとした時…。


「呼んだか?北」

 いつものごとく夜に徘徊していた依田日向が、最近学校で見かけない同類(つるむことを嫌っていた日向はいつも一人だった)たちの話を偶然聞き合わせたのは、必然だったのかもしれない。

 当初は無視するつもりでいた。既に野球名門校へ推薦が決まっており、下手をうつつもりはない。ただ荒れ狂う心のまま自宅にいるのは、今の家族に申し訳なかった。最低限ながら、それが彼の自負だった。


 彼女に求められた。

 誰でも良かったわけではない。

 真摯にスポーツに向き合う北玲に憧れたからだ。

 ならばそれ以上の()()などいらない。

「おー。ヒーロー気取りか?依田」

「会っても俺たちに挨拶もできないようなビビりのくせに」

 いやらしい笑い声。

「そんなんだから親に捨てられるんだろ」

 笑い声がまた重なった。


(殺してもいい、何の問題もない)

 どこか狂っていた日向は、妹の美也子に謝りながら駆け出していた。


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