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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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冷たく震えて

「ところでどうしてここに?」

 姉が黒幕だろうと思いつつも美也子に尋ねる。

「あのババアに言われて」

 やっぱり。

「口が悪いわよ、美也子ちゃん」

「姉さんもババアの味方?」

「あたしの師匠なの」

「姉さんはわたしを受け入れてくれそうだけど、あのババア…」

「美也子ちゃん、二度言わせない!」

 静かな口調だが美也子には届いたようだ。

「ごめんなさい…」

 あの美也子を黙らせるとか、どんな魔術師だよ。叱られすぎて耐性のできた俺には理解できない情景だった。


「あなたが人生に真摯に向き合いたいなら指定する場所に来なさい。こんな機会(チャンス)をあげるのはほんとに一度きり。どれだけ私があなたを嫌いか知ってるでしょ」

 10以上も年下の中学生に宛てて使う文面か、これ?

 苦り切った顔で文章を推敲する姉の顔が浮かぶ。

 それにしてはたまに罵倒のメールをやり取りしてるとか、仲が良いんだか、悪いんだか。


「そろそろ戻らないと。美也子ちゃん、どこにいるの?」

「着いたばかりで特に」

「なら、あそこで待ってて」

 千種が指す方向には「早名家控え室」。

「もう少しかかるから、調べておいてね。高良の地方と高良高校。結構量があるから時間潰しにいいわよ」

 俺勢いで言ったけど、近くで六条とかから守るってことは美也子がこの地域で高校に進学するってことだよなあ。六条のお膝元のここに。

「受かる前提ですか?姉さん。学力とか…」

「幸平がトップ合格よ」

 にっこりと笑む千種。

「それなら大丈夫ですね」

 何かの意思疎通が終わったようだった。

 ………あれ?千種は同点だったはずじゃね?


 美也子はしっかりとした足取りで部屋に入っていった。

「幸平、いこ」

 差し出された千種の手は冷たく震えていた。その手を握り、俺は千種の覚悟を包みこんだ。


 すごいな、千種。肩を並べて歩ける日を願わずにはいられない。せめて少しだけでも分かち合えるように。


 言葉を交わさずとも、千種と交わした約束…。

 仮初めで偽装の結納だとしても、自分自身で己に交わす約束。

 結納と言う姉の用意したふざけた茶番は、なぜか重要な日となった。

主軸のストーリーは次回から

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